「争点の一つは結婚の約束の有無」新宿タワマン刺殺事件・和久井容疑者の身勝手すぎる動機と捜査の行方

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凄惨な事件の裏にあったのは、あまりに身勝手な動機だった。

5月8日、東京都新宿区のタワーマンション前で平澤俊乃さん(25)の首や腹などを刺し、殺害したとして神奈川県川崎市在住の和久井学容疑者(51)が殺人容疑で逮捕された。和久井容疑者は容疑を認めているという。

「事件は8日未明に起きました。和久井容疑者は平澤さんを待ち伏せし、犯行現場となったマンションの1階にあるコンビニから出てきたところを追いかけて襲いかかった。数十ヵ所を刺された平澤さんは約1時間後、搬送先の病院で死亡が確認されました。通報を受けた警察により、和久井容疑者はその場で現行犯逮捕されました」(捜査関係者)

川崎市内の自宅で、両親とともに暮らしていたという和久井容疑者。職業はフードデリバリーを行っていた。かつてはバイク便の仕事をしていたとされ、当時を知る人は「真面目で時間を守る。取りまとめ役を務めるなど人望もあった」と語る。そんな和久井容疑者に一体何があったのか。

「和久井容疑者と平澤さんの出会いは4年ほど前と見られています。和久井容疑者は’21年秋頃に『結婚する』と周囲に嬉しそうに話していたそうで、この相手が平澤さんといわれています。実際にこの頃には愛車やバイクを売却して得た1000万円以上を、平澤さんに渡していたそう。その金を元手にしたのか、平澤さんは’21年冬頃に上野周辺に、自身が経営するガールズバーキャバクラをオープンさせています。当時は開店祝いの花を贈るなど、良好な関係だったようです」(全国紙社会部記者)

しかし、そこから両者の間には溝が広がっていく。’22年3月には店側とトラブルになったとして和久井容疑者は店舗を出禁となる。さらに同年5月には平澤さんへのストーカー行為で逮捕された。

「この頃には和久井容疑者は周囲に対し『平澤さんとケンカした』『お金を渡したら冷たくされた』とこぼしていたそうです。平澤さんの自宅前で待ち伏せして、返金を迫ったこともあったようで、ストーカー行為として逮捕されました。一方の平澤さんの店も、経営悪化でわずか1年足らずで2店舗ともに閉店してしまった。この頃には和久井容疑者のストーカー行為もなくなったようで、平澤さんは’23年7月に警察の接近禁止対応の継続打ち切りを申し出ています」(同前)

禁止命令の打ち切りから1年弱が経過しての犯行。しかも刺し傷が数十ヵ所に及ぶことからも、和久井容疑者の執念は相当深く、また強い殺意が認められる。和久井容疑者は取り調べに対し、1000万円以上のカネに加えて、消費者金融に700万円ほどの借金があり、合わせた1700万円以上を平澤さんに渡していたと見られている。

「和久井容疑者は5年ほど前に離婚しており、その後に出会ったのが平澤さんだった。奥さんと別れた寂しさを埋めてくれたのが彼女だったのでしょう。そこで平澤さんから甘い申し出があったのかもしれません。真面目な人でしたから、今回の犯行にはとにかく驚いています」(和久井容疑者の知人)

今後の捜査の行方はどうなるのか。

「警察はすでに殺人容疑に切り替えて捜査をしています。本人も犯行を大筋で認めていることから殺人罪に問われる可能性は高いでしょう。そうなれば基本的には5年以上の懲役が確定するのですが、情状酌量の余地が認められるケースもないわけではない。和久井容疑者が主張する『結婚の約束があった』という主張はその一つになるかもしれませんが、両親も平澤さんに会ったことがないと話しているように、客観的事実として婚姻関係にあったわけではないようです。あとは平澤さんの手口が結婚詐欺に該当する可能性もありますが、その辺りの悪質性をどこまで証明できるのか。ただ、現時点では5年以下に減刑される可能性はかなり低いでしょうね」(殺人事件を専門にする弁護士)

今回の事件について、SNS上には「和久井容疑者は騙されていた」として、擁護するようなコメントも散見される。しかし、前出の捜査関係者は「和久井容疑者のやったことは決して許されるものではない」と断ずる。

「ネット上には、和久井容疑者に同情的な声が多く聞かれますが、どんな理由があっても殺人は許されないことです。また、あくまでも和久井容疑者は加害者であり、その証言を鵜呑みにすることはできない。事件の背後関係については、今後も捜査が続いていきます」

自分自身の“妄念”に基づいて一人の命を奪ったとすれば、言うまでもなくその罪は重い。