築地は、場外から少し離れると魚介はもちろん、酒にもこだわった飲食店が点在。そして店内は満足げな客の笑顔で満ちている。笑顔になりに出かけませんか? 『イタリア食堂 築地のら』 シェフのユニークな発想力に驚きの連続 パイ包み…

築地は、場外から少し離れると魚介はもちろん、酒にもこだわった飲食店が点在。そして店内は満足げな客の笑顔で満ちている。笑顔になりに出かけませんか?

『イタリア食堂 築地のら』

シェフのユニークな発想力に驚きの連続

パイ包みやホッキ貝のグラタンには手の込んだソースが組み合わされ、まるでフレンチのよう。「ジャンルは気にせず、食材をどう生かすか考えながら自由に作ってます。イタリア料理店と名乗っているのをご存知ないお客様も多いかもしれません」と笑うシェフの有田さん。

マグロほほ肉のタルタルは噛むほどに広がる旨みやねっとりとした食感にうっとりする繊細な火入れで、白ワインで煮たエシャロットやハーブを添えた独創的な一品だ。

マグロほほ肉のタルタル 1980円、グラスワイン 1100円〜

『イタリア食堂 築地のら』マグロほほ肉のタルタル 1980円、(ドリンク)グラスワイン 1100円〜 マグロ問屋の名店「樋長」から仕入れている。ほかの部位で作ることも

全国の料理教室で教えている縁から、地方の食材でメニュー開発を頼まれることも多いそう。その卓越したアイデアが料理に現れている。ナチュールからクラシックまで幅広い品揃えのワインと共に有田ワールドを存分に楽しみたい。

『イタリア食堂 築地のら』

[住所]東京都中央区築地7-11-13
[電話]03-5148-2390
[営業時間]11時半〜14時、17時半〜22時半
[休日]日・祝
[交通]地下鉄日比谷線築地駅1番出口から徒歩3分

『Bistro Masa(ビストロマサ) 築地』

足を使って見つけた掘り出しものをここだけの味に

肉はフレンチでさんざんやってきたので、「次の主役は魚!」と2020年に築地で独立オープン。週4日は豊洲に足を運び、納得いくまで食材を探すという。

「時間をかけて場内をけっこう歩きまわるので、ランチができないんです」と笑う高橋さん。実は、魚の知識を増やしたいあまり豊洲の仲卸でも働いていたこともあるのだ。フレンチであまり登場しない食材を試すのが好きで、クジラやマンボウの腸も好評だったとか。

銚子金目鯛のウロコ焼 セップ茸ソース 3080円

『Bistro Masa(ビストロマサ) 築地』銚子金目鯛のウロコ焼 セップ茸ソース 3080円 セップ茸のソースは魚の骨やアラでとったダシで味わいを調節

ウロコ焼きも定番の甘鯛ではなく、今回は贅沢に金目鯛に。パリパリの皮の食感が重なることでしっとりとした身の芳醇な味わいが引き立つ。合わせたポルチーニのセップ茸ソースのように、バターを控えめにした軽やかな仕上げにもファンが多い。

『Bistro Masa(ビストロマサ) 築地』

[住所]東京都中央区築地6-5-3 クレストヨシエイ1階
[電話]03-6228-4839
[営業時間]17時〜23時(フード22時LO)
[休日]日(不定休あり)
[交通]地下鉄日比谷線築地駅1番出口から徒歩5分

『築地しんば』

丁寧に仕上げられた旬食材の和食を居酒屋感覚で

旬の魚介や野菜を使った料理で埋め尽くされたメニュー。その筆頭を飾るのが初カツオだ。

カツでいただくと、衣はサクッと軽く内側は赤身がしっかり残る絶妙な火入れ。さらにミカンの実や皮、青唐辛子、ネギ、ダシを合わせた自家製薬味が秀逸で、爽やかさと苦みが味わいを広げてくれる。

初カツオレアカツ 1000円

『築地しんば』初カツオレアカツ 1000円 初カツオは天ぷらも選べる。ほかの旬の魚介も天ぷら、フライなどにしてくれる揚げ物が好評だとか

ホタルイカは醤油と酒で仕上げる自家製の沖漬けで後味が清々しい。店主の榛葉さんが目指すのは、「旬の食材を生かして手を加えるのは少しだけ。でも家でできそうでできないもの」だとか。

さらに、割烹のような佇まいだが屈託のない接客で「値上げしたほうがいいよ」とお客に言われるほどお手頃。魚で飲むほか、食事だけでもよし、宴会もよし。ここを知っておいて損はない。

『築地しんば』

[住所]東京都中央区築地6-5-4 OWLビル1階
[電話]03-6281-5987
[営業時間]15時〜23時(22時半LO)
[休日]日・祝
[交通]地下鉄日比谷線築地駅1番出口から徒歩5分

『築地長屋6-7-7』

高級料理のフグでサクッと飲めるなんて最高!

路地裏に立つ古民家の一角が立ち飲みになっていて、看板料理がフグ!まずはてっさを一切れいただくと、噛むほどに旨みがじんわり染み出し、やわらかな歯触りに驚かされる。

ここを立ち上げたのは東銀座のフグ料理専門店「ふぐ倶楽部miyawaki」。「もっと気軽にふぐを食べてほしい」という思いを貫く新たな挑戦のひとつだ。

てっさ 1200円、とおとうみ炒め 1000円

『築地長屋6-7-7』(手前)てっさ 1200円、(奥)とおとうみ炒め 1000円 てっさはやわらかな酸味の自家製ポン酢でいただく。フグの皮を炒めたとおとうみ炒めはピリッと効かせた辛味がポイント。九州で養殖された大ぶりのふぐを熟成させてから使用している。季節の日本酒も揃う

手頃な価格だが、コース料理を提供している別邸が隣接し、調理人や厨房、食材を共有している。ただし、てっさは別邸と切り方を変えたり、とおとうみ炒めはさまざまな部位を使ったりと、工夫を凝らしてフグを身近な存在にしてくれるのは実にありがたい。

ほかにも酒の進むアテが揃い、ふらっと立ち寄れる場所としても重宝しそうだ。

『築地長屋6-7-7』

[住所]東京都中央区築地6-7-7
[電話]080-3723-7872
[営業時間]17時〜23時(22時半フードLO)、土:16時〜
[休日]日・祝
[交通]地下鉄日比谷線築地駅1番出口から徒歩5分

銀座の台所 築地の実力は健在!

築地といえば豊洲移転前は卸売市場があって、場外市場とともに早朝から活気を呈していた。銀座との関係でいうならまさしく台所。銀座の美味は間違いなく築地が支えていたわけで、もとよりその実力は言うまでもないのだ。

外国人観光客で賑わう場外

豊洲移転、さらにはコロナが追い討ちをかけて、どうなる築地?どうなる築地場外市場?と一時は心配されたものの、どっこい長年培われた土地の記憶というか実力は、そんな簡単に揺らぐものではない。

場外市場はインバウンドが復活して、連日驚くほどの人で賑わっている。その一方で市場関係者や舌の肥えた客に育てられた実力店も変わらず健在だ。その底力を今回は築地らしく魚介で味わおう。

魚好きで昼から賑わう

ただし、確かに旨いが寿司や海鮮丼では安易に過ぎる。魚介の旨さを味わい尽くす懐の深さもまた築地。ひと手間加えた調理や酒と一緒に、ならではの魅力を堪能できる店。ぜひ楽しんでいただきたい。

撮影/鵜澤昭彦(築地のら、Bistro Masa、築地しんば)、浅沼ノア(築地長屋6-7-7)、取材/井島加恵、取材、文/池田一郎(築地)

おとなの週末2024年5月号

※2024年5月号発売時点の情報です。

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