「心がキュンとなるふたりだけの世界をお届けします」~ミュージカル『GIRLFRIEND』島 太星&吉高志音インタビュー
アメリカのミュージシャン、マシュー・スウィートが90年代に発表したアルバム『GIRLFRIEND』の楽曲から生まれた、ポップでロックなミュージカル『GIRLFRIEND』。オルタナティブでどこかノスタルジックでもあるサウンドに彩られた、二人の青年の甘酸っぱい恋愛ストーリーだ。本作でウィルを演じるのは島 太星、そしてマイクを演じるのは吉高志音(共にトリプルキャスト)。フレッシュなふたりだからこそ紡ぐことができる作品世界に思いを馳せつつ、新たな挑戦に向けた思いを語ってもらった。
ミュージカル『GIRLFRIEND』プロモーション映像
ーー今回初共演のお二人。まずはお互いの印象をお聞かせください。
吉高:最初に会ったのはビジュアル撮影の時。初対面でしたけどいきなり結構近い距離で寝転がったりとかもしたので……ね。
島:そうですよ! 出会ってすぐ交じり合うっていう感じで、ド緊張でしたよ~。
吉高:交じり合う!?(笑)。僕、事前にYouTubeとかで島くんが歌っている動画を見ていて、すごい歌上手な方だし優しそうな……実際優しいんですけど、そういう方だなって印象だったんです。
島:嬉しいですっ。
吉高:でも会ってみたらイメージと違って、すごい明るいキャラだった。
島:あ、暗い風に見えてましたか?
吉高:うーん、なんか、フラットな感じかな。
島:明るそうに見えて根は暗いんですけどね。実は(笑)。僕は吉高くんはもうこのままそのままというか、ホントにイケメンだなっていうのが第一印象。そして、話した瞬間にとても真面目な方なんだろうなと感じました。自分が変にふざけたりしちゃ嫌われちゃうかもって。
吉高:そんなことないですよー。
島:(笑)。
ーーでは本作に出演が決まった際のお気持ちは?
吉高:マネージャーから電話で知らせてもらったんですけど、決まったときは本当に嬉しくて! 個人的にもずっとシアタークリエで観劇していたのでいつか立ちたいと思っていましたし、「二人芝居」は初ですが、これは絶対自分にとっても大きな挑戦になるとも思いました。しかも大好きなミュージカル。歌とお芝居でいい波を作り、ちゃんと作品を届けられるだろうか。でもこれは本当に濃い時間になるぞって、「不安」よりも「期待」の気持ちでいっぱいです。本当に純粋に楽しみでしょうがないです。
島:決まった時はめっちゃ怖かったです。二人芝居、しかもみなさん東京の役者さんで……僕、今もお仕事の時は北海道から通ってるんですけど、そんな自分がこのステージに立っていいんだろうか、大丈夫かな、足を引っ張らないかなって不安がいっぱいで。「でもやるからにはとにかく頑張るしかない」という気持ち。ファンの方はすごい喜んでくれて、「シアタークリエに島が立つ!?」「どうした? やばいじゃん!」みたいな(笑)。それで「え、すごいの? 僕、やばいの?」てなって調べたら「ほんとだ、シアタークリエって、やべえ!」と。現実を知って「怖い」がさらに「怖い」で上書きされて、今でも少し怖いです。頑張らないと。
ーー物語はネブラスカ州の田舎町が舞台。島さんが演じるのは学校に馴染めず将来の希望もまだ見つかっていないウィル、吉高さんが演じるのは野球部でスポーツ万能の人気者、大学進学を控えているマイクです。そんなふたりがハイスクールを卒業し人生の次のステップへと踏み出すまでの束の間の季節……日本で言う“最後の春休み”に共に過ごす“特別な時間”が描かれていきます。
吉高:台本を読んでいると、僕、まだ島くんが演じるウィルが想像できなくて……。
島:そうですよね、僕もです(笑)。
吉高:(笑)。なので、トリプルキャストで3チームあるんですけど、多分僕らの組が一番稽古を経て化学反応が起きそうだなって思いますね。
島:うん。LGBTQ+っていう部分での難しさもありますけど、やっぱり今自分ができることは、真摯に役に向き合い、とにかく本当に「このふたりの世界が素晴らしいな」と思えるような舞台をお見せできたらっていうことのみですね。ウィルは多分真面目な子、なのかな……うーん、ごめんなさい。まだちょっと浅いところでしか理解できていないのかも。やっぱり稽古しないと役のことが上手く掴めなくて。本当にすべて未知すぎて……大丈夫かな、僕。いや、そんな自分に「大丈夫だよ」って言ってあげたいですね。
ミュージカル『GIRLFRIEND』ウィル役:島 太星
ーーふたりを最初に結びつけるのは、マイクがウィルに手渡した1本のカセットテープ。
吉高:ビジュアル撮影でも実際にマイクのほうがウィルを引っ張っていくっていうオーダーもあったんですけど、台本を読んでいくうち、アプローチするのは確かにマイクなんですけど、でもなんか……最後の一歩まではいけてないマイクがいるなと思っていて。その最後の一歩を踏み出すのは実はウィルだったりしてるから。そこもなんか関係性としてすごいバランスがいいふたりだなぁと感じました。
島:どうなの? 吉高くんはマイクっぽいの? その……アプローチとかは自分からする? あ、ごめん、聞き方おかしかった(笑)。なんか僕の中ではすごい穏やかな方だなっていうイメージがあるから。
吉高:んー。でも自分から積極的にアプローチするっていう感じじゃないと思います。わかんないけどたぶん……奥手かも(笑)。
島:僕はね、結構アプローチする側なんですよ。こう見えて頑張っちゃう派。
吉高:そうなんだ!
島:だからマイクの気持ちもわかるし……あ、このふたりって、もしかしたらね、いろんな意味でなんか真逆なものを持ってますよね。だから強いかもしれない。僕も吉高くんも役と役じゃないところの両面を知ってる分、ペアとしてもより強いものができそうなイメージ、ありますね。
吉高:それはなんかちょっと感じます。僕も。
ーー全編通してとても繊細なストーリー運びで。
吉高:繊細ですし、結構台本の中でも「間」が多いんですよね。その間をどう表現するかっていうのもすごく考えていて。気まずい間もそうですし、ちょっとお互い照れるというか恥ずかしかったりする間もあるし……。僕は前半のウブな感じがとっても好きなんです。そのふたりの様子を曲に乗せながら雰囲気ある中で伝えていくのが今からすごい楽しみ。物語の後半は現実感というか、「そう上手くいかないよね」みたいなことになってくるので……その対比みたいなものが大きければ大きいほど、観ているほうもぐっとくるものがあるでしょうね。セリフとかも全部さりげない感じだったので、それをいかに意味を持たせて響かせるか、逆にいかにさらっと伝えられるか。場面場面でちゃんと見極めて、読んで、伝えていかないと。
島:え、もう稽古してる?? 「間」って……台本も全部覚えてるの?
吉高:いやいやいや。覚えてないですよ!
島:やっぱり吉高くん、すごい。強いな。頼りにしてます。台本読んでいるとやっぱりさりげないセリフが多くて、だからこそ伝え方は難しいだろうな、と僕も思いました。
吉高:うんうん。
島:あと僕はあんまり学生時代に青春っぽいことしてこなかったなって改めて思って……でも、このお話しってめちゃめちゃ青春じゃないですか! 同性で恋をするなんて経験もそもそも初めてだし、自分自身が今もうすごい新鮮な気持ちでずっと過ごしているので……このそわそわワクワクした気持ちをちゃんと本番まで失くさずに、そのまま全部伝えたいなぁ。甘酸っぱい青春、自分の想像していたような理想の青春、経験したことはないけれど経験したかった“めちゃめちゃ青春”を、舞台を通してお客様にも届けたいです。こんなのもう、キュンキュンですよ!
吉高:ホントにね。ふたりがドライブインシアターで毎日同じ映画を観るのも「うわ、いいな」と思った。そういう日本にはない文化とかも台本を読みながら研究してみたり。
島:いいよね、車で映画。
ーーマシュー・スウィートの楽曲はおふたりにどう響いていますか?
吉高:少しずつ歌稽古も進めてるんですけど、まだ歌詞に触れたり音に触れたりっていう段階で。原曲を日本語にしたときの日本語ならではの優しさがスローテンポでもアップテンポでもちょっとロックなこのメロディに合わさったとき、より言葉を大事にしなきゃいけないなって感じました。自分的には先に英語を聴いちゃったので、日本語をどう馴染ませようかっていうのが今の課題です。曲の中でも本当にお互いの気持ちが深まるところだったり、すれ違いだったりってのが見えてくるので、そこは言葉をちゃんと大切に……綺麗なメロディに流されず、ドラマをしっかり紡ぎたいなって思っています。
ミュージカル『GIRLFRIEND』マイク役:吉高志音
島:率直に、難しい楽曲たちですね。自分はやっぱりバラード系の歌が好きでずっと聴いてきたので、こういうロックっぽい曲調をどうやったら自分のものにできるかなっていうところからのスタートで……歌稽古、僕はこれからなんです。ああ~、もう少し稽古進んでからお話ししたかったかも。あの、このままだとすごいネガティブ男のインタビューになってません?? 大丈夫かなぁ……。
吉高:大丈夫、大丈夫!
島:はいっ(笑)。曲数も結構あったりして、難しいことはいろいろあるんですが、今は楽譜を見ながら僕らだからこそのお客さんを楽しませる工夫ができたらなって。場面によって歌い方もちゃんと考えたいし、歌詞も自分なりに内容を受けながら、でもやっぱりふたりで一緒にどう伝えていけるかを考えていけたらいいですよね。
吉高:ハモリもあるしね。
島:ありますね。見せたいですね、そこも。
吉高:マイクはギターを弾くのでそれも今練習中。見つめ合いながら弾き語りして……って、言葉にしただけでも震えてきちゃう。ふたりの恋物語、見つめ合うふたりのこの近距離間だけで終わらずに、ちゃんと客席全部にまでその空気を拡大して伝えられるかなっていうことにも結構ドキドキします。たぶん、お互いの目線が大事になるのかな。合わせたり、逆に外したり……視線の間、会話の間、そこに生まれるロマンチックで素敵な2人だけの世界をちゃんと作り上げられたらいいんだけど。
島:そうだよね。ふたりだけの世界でしかもう物語が成り立たないじゃない? ふたりしかいないんだから。
吉高:そうですね。だって、ふたりしか……いないから。ハハハッ(笑)。
島:ハハハハッ(笑)。
吉高:稽古も本番も本当に濃い時間でお互いの力を全力でぶつけて。距離感が縮まったり離れてったりするこの空間とか雰囲気とかを、お客様にも濃く楽しんでほしいなって思いますね。キュンってなったりするところも、同じ、キュンとしてほしいですし。ちゃんと歌も、そこでそういう意味があったんだとか、そこですれ違うんだとかっていうのもそうですけど、そこを一緒にどっちかの気持ちになって楽しんでくれたら嬉しいですね。
ーー若い俳優ふたりだけの等身大のミュージカル。素敵な企画ですよね。
島:本当に若い年代の力をちょっと見せつけたいなっていう、前向きな気持ちがあります。自分は今までミュージカルをやらせていただいたときは役者経験豊富な年代の先輩方がいて、そこで学びながらみんなで作っていく作業だったんですけど、この若さで、しかもキャストはふたりだけ。やっぱこれって挑戦的じゃないですか。僕たちはぜひその挑戦のチャンスに乗っかっていって、トリプルキャストの全員でミュージカル界に爪痕を残したいなって思ってますよ。楽しみたいし、革命を起こしたいな。
吉高:おっ。
島:期待して見に来てほしいです。お客様にも「すごかったね」「ドキドキもした」「ここ(胸)にくるものがあった!」って、頭の中にしっかりと思い出が残るお芝居を届けたいと思いますし、それぞれのコンビの素晴らしい歌唱力もぶつけて、若いけれどとてつもなくレベルの高かったミュージカルだったなっていうふうに--
吉高:ちょっと、ちょっと! めちゃめちゃハードル上げてませんか?
島:ああっ。うん、やめとこうか。これ……やっぱやめときましょう! なんか止まらなくて(笑)。
吉高:(笑)。いや、でも、強気なくらいでいいと思います。僕ら、そのぐらいの勢いで頑張っていきましょうよ。一緒に。
島:うん、一緒にね。
取材・文=横澤由香