現在はブータンの子どもたちへの支援にも注力する亀井良真氏

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 何の前触れもなく瞬間的に発作を起こし、昏睡状態に陥る「てんかん」。厚生労働省の発表では、てんかんを持つ人は日本全国に約60万〜100万人いると推定されている。発症した場合、「運転免許の取得に制限がある」「ハードな運動ができない」など日常生活にさまざまなハードルが生まれてしまう。
 現在、飲食店コンサルタントとして活動する亀井良真氏も、かつてはてんかんの症状が原因で、仕事を解雇された過去を持つ一人だ。それがきっかけで、ニートひきこもりの時期を経つつも、現在は月商1500万円の売り上げを手にしたという。

◆高校1年生のときに発覚した大病

 栃木県喫茶店を営む両親の元に生まれた亀井氏が、自身の「てんかん」に気がついたのは、高校1年生の春だった。

「高校1年生のテスト中、発作を起こして倒れてしまったんです。救急車で運ばれ、目が覚めたとき、自分にはてんかんがあると知りました。もともと他人の顔色ばかり窺う引っ込み思案な性格だったのですが、障害者手帳を渡された瞬間、『あぁ、自分はもう普通の人じゃないんだ』と痛感して。引け目を感じるようになり、人と会話するのがより一層苦手になりましたね」

 新生活が始まるタイミングでの病気の発覚。それゆえ、高校1年生の時点ではまったく周囲と交流できなかったという。

「勉強もできないし、スポーツも苦手。クラスにはほとんど友達もいなかったので、休憩中はいつも寝たふりをしていてやり過ごしていました。毎日『早く休憩時間が過ぎればいい』と思ってましたね」

てんかんの発作が発端で会社をクビに

 高校卒業後は、ゲーム好きが高じて、プログラミングの専門学校へ進学。しかし、問題は就職活動だった。

「時代は就職氷河期だった上、僕にはてんかん持ちというハンデもありました。40社近く面接を受けましたが、『持病がある』『障害者手帳を持っている』と伝えると、すぐに落とされる。最後に有名通信会社の子会社の面接を受けた際も、落とされるのが目に見えていたので、いけないことだとわかっていながら、持病については伝えずに面接を受けたんです。そしたら、派遣社員ではあるものの、なんとか採用されて……。ゲームとはまったく関係ない仕事でしたが、仕事を得られて安心しましたね」

 だが、慣れない仕事でストレスがたまったのか、社会人として働き出した1年後、亀井氏は職場でてんかんの発作を起こして倒れてしまう。

「この一件で職場には『てんかん持ちだ』とバレてしまい、即解雇になりました。この出来事をきっかけに、『自分は何をやってもダメなんだ』と自己肯定感がどんどん下がって、実家にひきこもるようになってしまったんです」

◆オンラインゲームの仲間に救われたひきこもり期間

 退職後は、実家でひたすらオンラインゲームばかり。しかし、このゲームと過ごした時間が、亀井さんにとって大きな転機になった。

「リアルの世界では自分の殻に閉じこもっていましたが、アバターを介してだったら人とコミュニケーションをとることに苦痛を感じなかったんですね。しかも、幸運なことに、オンラインゲーム内で出会った仲間たちが、優しい人ばかりで。ゲーム上での仲間たちとのやりとりを通じて、体力的にも精神的にも癒されていきました」

 そして、ひきこもり生活から2年後、一念発起し、アルバイトで社会復帰を果たす。

「バイト先は、近所のスーパーの惣菜売り場です。職場はおばちゃんばかりで、20代前半の男は僕一人。すごくかわいがられて、毎日とても快適でしたね」

◆新たに見つけた「コーヒー屋をやりたい」という夢

 アルバイト自体は楽しかったが、まだ当時は20代中盤。いつまでも惣菜屋のバイトでいいのかと悶々とするように。そんななか、亀井氏の中で「コーヒー店をやりたい」という思いが新たに生まれていったとのこと。