XFN-ASIAによると、中国人民銀行(中央銀行)の呉暁霊・副総裁は22日に北京で開かれた講演で、国有商業銀行について「健全な資産形成はまだ確立されていない。不良債権が再び増加に転じることを回避するのは、依然として難しい大きな課題だ」とし、不良債権問題が再燃する可能性は否定できないとの見解を示した。

  中国では先週、4大商業銀行の1つであるICBC(中国工商銀行)が香港と上海の両株式市場で新規公開する株式の価格を決定、両市場で合わせて190億米ドル(約2兆2600億円)強の資金調達のメドがついたばかりだが、呉副総裁は中国の銀行経営が利ザヤ収入に大きく依存しているため、財務基盤が景気動向に左右されやすく安定性に欠けていると警告している。

  また、呉副総裁は、中国の銀行の資産内容がここ数年、国際基準に照らして比較的良好な状態にあるものの、政府の救援策の結果であり、将来の健全性はまだ確保されてないと指摘。その上で、同副総裁は「マクロ経済の変動が銀行の収益性や安定性に直接影響する」とし、「金利や為替相場が改革により、より一層、柔軟化する中で、国有銀行は、国の規制による保護から離れて、より柔軟な経営環境に対応できるようする必要がある。また、金利と為替相場の変化に応じた金融リスクの認識と管理の手法を学ぶ必要もある」と語った。銀行業界の問題としては、全体的に過剰雇用となっている一方で、必要な金融知識を習得した人材が不足している点も挙げた。

  CRBC(中国銀行業監督管理委員会)のまとめによると、今年6月末時点の不良債権比率は7.5%となり、昨年末からは1.1%ポイント改善している。アナリストは、銀行貸し出しの状況は改善しているとしながらも、不良債権が減少しているのは、政府の救済策と銀行融資の積極的な拡大の結果だとして、警戒している。【了】

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