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3月半ばを過ぎ、4月はもう目前だ。

新たな年度が始まろうとする一方、受験シーズンが今年も幕を閉じた。

志望校の合格発表では親子抱き合って歓喜する姿もあれば、望まぬ結果に涙する場面もあっただろう。

なかには、そのどちらでもない結果に翻弄された家庭もある。

これは慶應義塾高等学校に「補欠合格」となった、ある一家の体験記だ。

取材・文/風間文子



中受全落ちの果てに、家族を待ち受けていた現実



矢部亮平さん(45歳、仮名)が初めて受験対策向けの学習塾の戸を叩いたのは、息子が小学1年生のときだ。

中学受験時の志望校は、慶應義塾中等部、普通部、湘南藤沢の3校だった。

「息子が小学3〜4年生の頃には、塾の成績優秀者が集う特別クラスに在籍したこともあるんですよ。だけど基礎が不十分だった」

にもかかわらず、同塾では学年が進むにつれ、御三家といった超難関校に求められる難問対策に注力。息子は次第にカリキュラムについていけなくなり、成績は低迷していった。

「最終的には信頼できる学習塾に出会うことができましたが、一時は誇大広告の詐欺まがいな学習塾に引っかかったこともあります」

約6年間にかけた対策費用はゆうに1,000万円を超える。しかし、かけた金額や努力は虚しく、慶應3校全滅という結果に終わった。

息子は、全落ち後に慌てて探した私立中高一貫校に入学した。

それから3年の月日が過ぎた2月14日、亮平さんと妻、息子の姿は、渋谷区にある青山学院高等部の校門前にあった。

息子は高校受験に挑み、青山学院高等部に合格。

この日は13時から同校の入学手続きがあり、亮平さんは仕事を途中で抜け出し、妻と息子と合流したのだ。

手続きの期限は14時まで。この機を逃せば入学辞退という扱いになる。それなのに3人は校舎にも入らず、亮平さんが手にするスマホの液晶を覗き込んでいた。

「実は同じ13時から、慶應義塾高等学校の合格発表があったんです」

高校受験はどこでも良いというわけではなかった。一家にとって、言わばリベンジ受験だ。苦節9年、その結果が判明しようとしていた。

合格発表を確認するアプリを開き、おそるおそるボタンを押す。すると、映し出された画面には赤字でこう表記されていた。

「補欠Dとなりました」

一家は言葉を失い、やがて互いに顔を見合わせた。その表情は喜びとは程遠い、何とも言えないものだった。

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