ホンダの「和製スーパーカー」! 300馬力超えV6搭載の「HSC」! 斬新デザインが超カッコイイ“次期NSX!?”の正体とは
300psオーバーのV6を搭載するミッドシップスポーツカー「HSC」
ホンダのスポーツ性を象徴するモデルとして、多くのファンに愛された「NSX」。オールアルミボディが奢られ、そのミッドに3リッターV6エンジンを搭載した初代は1990年に日本市場で発売を開始し、バリエーションの拡充や各部の小変更を行いつつ、2005年まで販売されました。
初代NSXは、世界最高峰のスポーツカーを目指しつつも、それまでの高性能スポーツカーではあまり重視されてこなかった快適性を両立。
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オートマチックトランスミッションによる高級乗用車なイージードライブで高性能を楽しめるという新しい発想により、スポーツカーはスパルタンで操縦が難しい、という印象を覆しました。
2016年には、2代目がデビュー。ハイブリッド+4輪駆動システム「SPORT HYBRID SH-AWD」が搭載され、ボディサイズも拡大。世界に名だたるスーパースポーツカーの仲間入りを果たしました。
生産はアメリカ・オハイオ州の専用工場で行われていましたが、残念ながら2022年に生産を終了しています。
ところで、その2代目NSXが発売される前に、ホンダが高性能ミッドシップスポーツカーを開発していたことをご存知でしょうか。
それが、初代NSXがまだ生産中の2003年に開催された、東京モーターショー2003に展示された「HSC」です。
当時の発表では、HSCは1964年に登場したホンダ初の4輪スポーツカー「S500」から連綿と続く、ホンダのスポーツDNAを継承したスポーツカーで、コンセプトは「極限の高性能と、誰もが操れる自在性の融合。ドライバーに高度なテクニックを強いることなく思うままに楽しく操れ、走りの醍醐味を体感できるピュアスポーツをめざした」と記されていました。
全高1140mm・全幅1900mmというワイド&ローのプロポーションを持つボディは、2800mmという長いホイールベースと短いオーバーハングを特徴としました。
盛り上がった前後フェンダーと滑らかなカーブを描くキャビンの組み合わせは、ソリッドな処理で造形。ドアは、斜め上に跳ね上がる構造を採用しています。
スパッと切り落としたようなテールには、丸型のテールランプが埋め込まれていました。
リアウィンドウは、初代NSXと同様にボディサイドまで回り込むデザインですが、HSCではさらに斜め前方に切り込まれ、よりシャープな印象に。
また、リアウィンドウとは別に、最高出力300psオーバーと謳われた横置き搭載の3リッターV6エンジンがチラッと見える小窓が設けられ、クルマ好きの心をくすぐる演出も施されていました。
「Honda Sports Concept」の頭文字から命名されたHSCは、当時すでに発売開始から13年が経過していた初代NSXとボディサイズや車格が近いこともあり、その後継車になるのではと目され、メディアやファンも大いに期待をしました。
しかし、直接の後継モデルはフロントにV10エンジンを積み、SH-AWDにより4輪を駆動するFRスポーツカー「HSV−010」となることが2005年に明らかになり、HSCは幻の存在となりました。
ホンダの北米向けブランド「アキュラ」の旗艦モデルとなる予定だったHSV−010は、2010年に発売が予定されていましたが、世界金融危機を理由として2008年に開発がキャンセルされてしまいました。
しかし2009年、日本のレースカテゴリー「SUPER GT」に「NSX GT」で参戦していたホンダは、その後継マシンにHSV−010を選択。2010年から参戦を開始しました。
その結果、市販されていないモデルがSUPER GTで走る、というGT500クラスでは珍しい事例を生むことになりました。
HSCがNSXの後継とならなかった理由は、HSCの後に発表されたHSV-010が「アキュラブランドのFR」だったことから類推すると、主戦場となる北米に向けたクルマとしては役不足だった、もしくはSH-AWDなどの新技術を投入するために、まったく新しいモデルを開発したのでは、といった見方ができるかもしれません。
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初代NSXの後継といわれたHSC、そして正式に初代NSXの後を継ぐべく開発されたHSV-010。
ともに日の目を見ることはありませんでしたが、ロングホイールベース&ショートオーバーハングのプロポーション、SH-AWDなどのテクノロジーは、2代目NSXに引き継がれたのではないかと思います。
クルマの世界で開発中止は珍しいことではないですが、「もしあの時HSCが発売されていたら、今はどうなっていたのだろうか」と考えるのもまた一興です。