ホンダ「ヴェゼル」“納期問題”解消で売れ行きが急上昇!? 新たに投入する「格安SUV」は本当に必要なのか?
前年よりもヴェゼルが売れてる!?
2023年に国内でホンダの新車として最も多く販売された車種は軽自動車の「N-BOX」でした。
23万1385台を届け出して、国内の最多販売車種となったN-BOXは、2023年に国内で新車として売られたホンダ車の39%を占めています。
ホンダ車の国内販売ランキングでは、N-BOXに次ぐ2位がコンパクトミニバンの「フリード」(7万7562台)、3位がコンパクトSUVの「ヴェゼル」(5万9187台)となっており、4位のコンパクトカーの「フィット」(5万7033台)を含めると、2023年に国内で新車として売られたホンダ車の72%に達します。
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これらの車種のなかで、注目される車種がヴェゼルです。
現行ヴェゼルは2021年に発売され、2023年には前年の1.2倍が登録されました。特に2023年10月〜12月は、前年の1.2〜1.7倍を登録、2024年1月は前年の2.6倍に達するなど、ここへきてヴェゼルの売れ行きが急増しています。
ヴェゼルに一体何があったのでしょうか。ホンダの販売店スタッフに聞いてみました。
「ヴェゼルの最上級グレード『e:HEV・PLaY』の受注は、以前は新型コロナウイルスの影響で停止していました。
ほかのグレードの納期も6か月から1年と長かったですが、2023年の後半以降は2〜3か月に短縮され、今ではe:HEV・PLaYの在庫車もあるほどです。
直近では、ヴェゼルに改良を実施する予定があって再び受注停止が始まっていますが、以前と違って長期化することはないでしょう。ヴェゼルは購入しやすくなりました」
この経緯は、ヴェゼルの年間登録台数の推移を振り返ると良く分かります。
ヴェゼルの登録台数は、2017年に6万4332台、2018年に5万9629台、2019年に5万5886台と、2019年までは先代ヴェゼルが堅調に売られていました。
それが新型コロナウイルスの影響で、2020年は3万2931台と売れ行きが急落。しかし2021年に現行型へフルモデルチェンジされると回復傾向を強めました(先代型・現行型合計で5万2669台)。
通常は、フルモデルチェンジ直後が最も多く販売され、その後は次第に売れ行きを下げますが、ヴェゼルはフルモデルチェンジ直後の2022年(5万736台)よりも2023年(5万9187台)のほうが多く売れているのです。
ヴェゼルの売れ行きが前年を上まわった理由は、前年の販売が新型コロナウイルスのために滞っていた反動でもありますが、本来ヴェゼルはもっと多く販売できる可能性が備わっていることを示しているといえます。
ほぼ同サイズの新型「WR-V」とのすみ分けは?
ホンダはヴェゼルとほぼ同じサイズのコンパクトSUVとして新型「WR-V」を2024年3月22日に発売します。
しかし、ヴェゼルに底力があることを考えると、新型WR-V投入前にヴェゼルのバリエーションを充実させる方法もあったでしょう。
現行ヴェゼルは、先代型では豊富に用意されたガソリン車をベーシックな「G」のみに整理して、ハイブリッドのe:HEVを中心としたグレード構成に変更。
これがヴェゼルの価格帯の上昇につながり、先代型のガソリン車のユーザーがトヨタ「ヤリスクロス」や「ライズ」に乗り替えるようになりました。
そこでいわば、先代ヴェゼルのガソリン車に代わる車種として、新型WR-Vを投入。新型WR-Vの価格は、一番安い「X」が209万8800円、中級の「Z」が234万9600円、上級の「Z+」が248万9300円に設定され、これは先代ヴェゼルに準じた価格帯です。
そもそも、現行ヴェゼルのガソリン車にも、e:HEVと同じく中級のZや上級のPLaYを設定していれば、ヴェゼルのユーザー離れは発生しなかったかも知れません。
ホンダの販売店では「ヴェゼルは今後、ガソリン車のGを廃止する可能性が高いです。残すとしても新型WR-Vに用意されない4WDのみでしょう」と言います。
ヴェゼルはe:HEV、WR-Vはガソリン車というようにパワートレインを車種で区分する戦略ですが、それは惜しいことだと思います。
都会的な雰囲気のヴェゼルと野性味が感じられるWR-Vの両方にガソリン車が設定され、好みに応じて選べるとユーザーにとって良心的でしょう。
トヨタも都会的な「ハリアー」と野性的な「RAV4」をそろえて成功させており、これはホンダのヴェゼルとWR-Vにも当てはまるのではないでしょうか。