「草加せんべい」で有名な草加市が進化中 マンモス団地建て替えで生まれ変わった街の今と注目駅
草加市は足立区に隣接し、草加駅から北千住駅までは東武スカイツリーラインで約10分。東京メトロ日比谷線や半蔵門線が乗り入れ、都心部への直通アクセスに優れた街です。かつて、東洋一とも言われた松原団地の建て替えが進み、明るく整備された街へと大きく生まれ変わりました。今回は、草加市の魅力と住宅事情について紹介します。
都心へ直通アクセス&自然豊か、宿場町として栄えた歴史ある街
草加市は埼玉県の東南部に位置し、南部が東京都足立区、西部が川口市、北部が越谷市、東部が八潮市などに接しています。中川や綾瀬川の下流域が通る、水と緑に恵まれた自然豊かな場所です。松尾芭蕉の「おくのほそ道」にも草加宿という名前が登場するように、草加は日光街道の宿場町として昔から栄えた場所でもあります。
1899年の東武伊勢崎線開業と同じくして草加駅が開業。1958年11月1日に草加市の市制が始まった時点の人口は、3万4,878人でした。1962年に東京メトロ日比谷線との相互運行が始まり、東洋一のマンモス団地と言われた草加松原団地がつくられ、1968年には人口10万人を突破。現在では、埼玉県6位となる25万人を超える人口を有しています。
草加市の発展につながったのが、東京都心と結ばれた良好な交通アクセス。草加市内には、東京メトロ日比谷線や半蔵門線にも乗り入れる東武伊勢崎線の谷塚駅、草加駅、獨協大学前(草加松原)駅、新田駅の4駅があります。急行停車駅である草加駅から、急行利用でターミナル駅である北千住駅まで2駅約10分。東京メトロ日比谷線・半蔵門線の直通運転もあるので、茅場町駅や大手町駅へも直通アクセスが可能です。
2020(令和2)年の国勢調査のデータによれば、草加市内従業者の通勤先のトップは東京都の38.0%。草加市内の35.1%を上回り、東京都内へのアクセスの良さを表しています。
また、国道4号線が草加市内を通るほか、東京外環自動車道草加ICもあり、車でのアクセスも良好です。
【草加市のデータ】
総面積…27.46平方キロメートル
人口…25万1,182人
世帯数…12万4,763世帯
※2023年12月1日時点
草加市の魅力は「便利」「歴史・文化」「環境・自然」
「令和4年度草加市民アンケート」によれば、草加市全体のイメージについて「便利だ」が 68.2%で最も高く、次いで「文化・歴史がある」が 68.1%、「よい環境・自然がある」が 52.6%と続いています。通勤利便性に加え、駅を中心に街が発達しており、マルイやイトーヨーカドーが駅前に立地する草加駅など街がコンパクトにまとまっていることも草加市が便利と感じる理由でしょう。
また、日光街道の宿場町だった草加市は、歴史を感じるスポットも多く残っています。日光街道の2番目の宿場町となる「草加宿」には、江戸時代の綾瀬川開削の際に植えられた松並木が受け継がれています。2014年に「おくのほそ道の風景地 草加松原」として、国の名勝に指定されました。
草加松原の周辺には、舟運でにぎわった「河岸」を再現した札場河岸公園、松尾芭蕉翁像や埼玉県の指定文化財である二連アーチ形のレンガ造り水門、甚左衛門堰などもあります。旧日光街道には、明治期の町屋建築を継承した建物も残されています。
草加と言えば、うるち米100%の生地に、香ばしいしょうゆの香りが食欲をそそる草加せんべいも有名。市内には、おせんべい工場や草加せんべいのお店が点在しています。ほかにも昭和初期から盛んな皮革や埼玉県の伝統手工芸品に指定されている草加本染ゆかたなど、地場産業の文化も継承されています。
綾瀬川や葛西用水、八条用水などの豊かな自然も豊富。札場河岸公園やそうか公園、新栄団地の綾瀬川沿い、葛西用水などでは、春は桜が楽しめます。まつばら綾瀬川公園などの水辺に広がる公園もあり、自然が身近にあるのも草加市で暮らす魅力でしょう。
松原団地の建設など高度成長期に住宅開発が進んだ草加市は、市街化区域の割合が91.1%と高いのも特徴です。地目別土地利用を見ると、住宅地が59.7%を占め、農地や工業地は少なくなっています。
草加松原団地の建て替えで街を整備
草加松原団地は、今から約60年前の1962年に入居が始まった、5,926 戸からなるマンモス団地でした。旧日本住宅公団(現UR都市機構)によってつくられた建物は老朽化が進み、2002年度から建て替え事業がスタート。駅に近い街区から段階的に建て替えが行われました。現在は、約3,000戸のUR賃貸住宅コンフォール松原と分譲マンションに再生。緑道や樹木などの豊かな自然環境を残しながら、暮らしやすく災害に強い街に生まれ変わっています。
草加松原団地の再生は、草加市における多世代交流推進のモデル地区に指定されており、子どもから高齢者まで誰もが必要な機能が身近にあるように計画されています。団地の再生で誕生した松原団地記念公園は、地域の拠点となるようにつくられました。総面積は約2万平方メートルにも及ぶ大きな公園で、広大な芝生の広場が広がります。
公園内には、子どもたちが楽しめるアスレチック遊具なども用意。イベントステージも配置されています。さらに、ヘリポートや災害用トイレ設置機能のほか、かまどベンチもあり、災害時の拠点施設としての機能も有しています。南側には、公園の水辺となる修景池があり、近隣のマンションなどの街並みが水面にも映し出されています。子育て中の家族はもちろん、高齢者にとっても安心でうれしい施設でしょう。
2023年3月には、商業施設「トーブ イコート」が松原団地記念公園の隣接エリアにオープン。にぎわいの街並みを形成する、路面に開かれたオープンスタイルの商業施設です。
テラスのある「ピクニックテラスゾーン」、食をメインとした「クオリティマルシェゾーン」、生活を豊かにする「ウエルネスリビングゾーン」の3つのゾーンを提案しています。
スーパーマーケット「ヤオコー」や「タリーズコーヒー」などのテナントが入っており、地域に生活利便とにぎわいをもたらしています。
草加松原団地の分譲街区では、すでに多くのマンションが分譲済みで、現在ソライエテラスが販売中(2023年12月時点)。新しい家族が流入することで、街に活力が生まれています。
草加駅ではリノベーションによる街づくりが進行中
草加市では、2023年5月に草加市役所の新庁舎がオープンしました。地上10階建て地下1階の建物は、防災性に配慮し免震構造を採用。吹き抜けを設け、自然エネルギーを採り入れた環境にやさしい建物に。事務室や会議室を機能的に配置し、業務の効率性を高めるとともにユニバーサルデザインとし、市民が利用しやすくなっています。10階には展望テラスがあり、椅子に座ってくつろぐことも可能。災害に強い庁舎として災害時の拠点としての役割も期待されます。
こうした新しい施設が誕生する一方で、草加市の取り組みとして注目したいのが「そうかリノベーションまちづくり」です。東京都隣接の草加市の弱みとして、昼夜人口比率の低さが挙げられます。松原団地のようなベッドタウンとして発展した街のため、「市内で楽しむ場所がない」、「職場も買い物する場も遊ぶ場もすべて市外」という住民も多く、「公共不動産の利活用の必要性」「都市型産業の不足」などの課題があります。
そうかリノベーションまちづくりでは、今ある地域資源を活用し、街の新たな魅力となるビジネスの創出を通して「ほしい暮らしは自分でつくる」まちづくりを民間主導で行っています。
市内外から集まった参加者がチームを組み、遊休不動産や公共空間などを題材に地域の課題を解決できるような新しいビジネスをワークショップで検討。すでに、草加駅周辺を中心にカフェや食堂、キッチンスタジオなどいくつものプロジェクトが実現し、新たなにぎわいを生み出しています。市街化比率が高く、成熟した街である草加市の強みを生かした取り組み。今後の街の活性化にもつながりそうです。
次に、草加市の住宅事情について紹介します。
新築が3,000万円台から 値頃感のある草加市の住宅価格
草加市で暮らすメリットは、通勤利便性に加え、新築マンションや新築戸建てを含め住宅価格がリーズナブルなことです。市街化が進んでいる草加市は、住宅地のストックが豊富にあります。
2023(令和5)年都道府県地価調査による草加市の住宅地の平均価格は、1平方メートル当たり14万7,700円。同じく東京都に隣接する埼玉県戸田市の平均価格は28万4,600円、川口市は23万7,700円です。戸田市、川口市に比べて、草加市はかなり安くなっています。
そして、草加市に隣接する足立区の住宅地平均価格は、35万3,100円と草加市の倍以上。住宅購入を機に、足立区から草加市に移る人も多いようです。
谷塚駅、草加駅、獨協大学前駅、新田駅の4駅のうち、住宅価格が最も高いのは急行停車駅で草加市役所のある草加駅です。獨協大学前駅は松原団地の再生で街が整備されたこともあり、草加駅の次に高い価格になっています。一方で、もっとも東京寄りの谷塚駅や、越谷市に隣接する新田駅の住宅価格はさらにリーズナブルになります。
2023年12月時点で谷塚駅で分譲されている新築マンションでは、70平方メートル超の3LDKタイプが3,000万円台のものもあります。新築戸建ても3LDKタイプで3,000万円台の供給も目立ちます。新田駅からのバス便では、2,000万円台の新築戸建ても販売されています。予算を抑えたいファミリーにとって、草加市は魅力的な街だと言えるでしょう。
続いて、草加市の筆者おすすめの街を紹介します。
通勤利便性と生活利便性を兼ね備えた獨協大学前駅
一つ目は、獨協大学前駅です。もともとは、東洋最大規模のマンモス団地と言われた「松原団地」を駅名として開業しました。1964年に獨協大学が開学し文化施設が整備され、文化都市としても発展。 2017年4月に駅名を「獨協大学前」に改称し、副駅名として国指定の名勝地〈草加松原〉を採用しています。
2002年からの松原団地の再生により街は大きく発展。駅前には、草加市立中央図書館などの公益施設も立地します。スーパーなどの商業施設やスポーツクラブなどの生活関連施設も充実。住宅地として発展した街だけに、小・中学校など教育関連施設も街なかに整っています。そして、松原団地の歴史を継承する街路樹などの自然環境も継承。緑が豊富で心地よい暮らしがかなえられそうです。
松原団地の再生街区では、住友不動産と東武不動産が売主の総戸数796戸のソライエテラスが分譲中。70平方メートル台の3LDKタイプが4,000万円台から販売されています(2023年12月現在)。草加市内以外からの購入も多いそうで、通勤利便性と生活利便性を備えたプロジェクトとして注目されています。
駅周辺に商業施設が豊富な草加駅
二つ目は、草加駅です。草加駅の魅力は、東武伊勢崎線の急行利用ができる通勤利便性の高さに加え、商業利便性が高い街であること。駅前の「イトーヨーカドー草加店」や「草加ヴァリエ」、「草加マルイ」をはじめ、「西友草加店」や「ダイエー草加店」など、スーパーや買い物施設がそろっています。
駅周辺には、草加駅西口商店会をはじめ多くの商店街が点在。飲食店や物販店など、多彩なお店が充実しています。また、草加市役所の新庁舎のほか、草加神社が鎮座するなど歴史を継承する神社も。季節のイベントなどもあり、アクティブな暮らしができシングルやディンクスにもおすすめの街と言えるでしょう。
交通利便性と生活利便性の高い街だけに、草加市内でも住宅価格はやや高め。駅徒歩圏の新築戸建ての価格帯は4,000万円台が中心です。新築マンションは、3LDKタイプで4,000万円台から5,000万円台が中心。こちらも草加市内の中では、やや高めの売り出しになっています。中古マンションストックは豊富にあり、3LDKタイプが3,000万円台から4,000万円台が中心(価格はいずれも2023年12月現在)。予算と立地を重視するなら、中古マンションを検討するのも良いでしょう。
子育てファミリーや単身世帯にも魅力的な草加市の暮らし
綾瀬川などの自然に恵まれた草加市ですが、草加市の市民一人あたりの公園面積は、埼玉県内では小さいほうです。場所によっては大きな公園がない場所もあるので、子どもの遊び場については、よく確認しましょう。
東京都内で働く比率が高いように、通勤利便性が高い草加市は子育てをしながら働くファミリーにとって魅力的な街。住宅価格が抑えられるのも、教育費などを考えるとうれしいポイントです。草加駅や獨協大学前駅など、生活利便性の高い街でも住宅の選択肢が豊富にあります。街なかにはお店がたくさんあり、便利な暮らしが実現できそう。ファミリー層やカップルだけでなく、単身者の人も引っ越し先として検討してみてはいかがでしょうか。