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『スパイダーマン』ソニー・ピクチャーズが放つ“””シリーズ最新作『』のを見て最初に思ったのは、なんか妙に懐かしい感じがするなぁということだ。なんだか2000年代の洋画アクション映画の映像を観ているような気になる。もちろん、いい意味で、である。

既視感の正体を探ってみよう。「マダム・ウェブ」の劇中の時代設定はまだ公式には明らかになっていないが、2000年代を舞台としている可能性が高い。その理由は二つあって、一つは予告編映像にソニーの大ヒット携帯ゲーム機「PSP」が登場していること。地下鉄の中で「最近のニューヨークはどうなってんだ」と呟く兄ちゃんが、PSPらしき端末を持っている。

この作品はソニー・ピクチャーズ映画なので、劇中で使用される電子端末の小道具は自然とソニー製になる。現在ソニーやプレイステーション関連の携帯ゲーム機は(最新のリモートプレイ端末PlayStation Potalを除いて)現役モデルがない。もしも現在が舞台なら、ソニーは最新スマホのXperiaを登場させたがるはずだ。わざわざPSPが使われているということは、物語が2000年代の設定であるに違いにない。ちなみにPSPの現役時代は2004~2011年頃のことである。

2000年代設定と推測されるもう一つの理由だが、実は本作の撮影中セットのに、3G携帯端末の広告や、ビヨンセが2003年6月にリリースしたアルバム「Dangerously in Love」の広告が映っていた。これが真実だとして、PSPの発売時期も重ねてみれば、おそらく『マダム・ウェブ』は2003~2004年ごろが舞台ということになるだろう。

さらにもう一つの説を推したい。予告編の01:04で、トラックが救急車に横から突っ込むカットだ。個人的に既視感があると思い記憶をたぐり寄せてみると、カナダの人気バンド、ニッケルバック(Nickelback)の代表曲『Someday』のミュージックビデオに、全く同じようなカットがあったではないか。ビデオの02:24に注目してほしい。

Nickelback - Someday https://www.youtube.com/watch?v=8Zc4S1shXas

ありがちなカットといえばそれまでなのだが、「大型車が左から右に突っ込んでくる構図」「ややスローエフェクトのかかった演出」「事故に驚く主人公」というのが、オマージュではないかというほど一致しているように思えていてならない。おまけにこの曲『Someday』のリリースは2003年で、推測される『マダム・ウェブ』の時代設定とも一致。さらにニッケルバックといえば、ボーカルのチャド・クルーガーがサム・ライミ版『スパイダーマン』1作目(2002)の主題歌『Hero』を歌っているという縁もあるではないか!

『モービウス』もそうだったが、SSU映画は・スタジオの全力VFX演出に対して、いい意味でこぢんまりとしていて、この質感も2000年代ノスタルジーらしさを演出しているように感じられる。ニューヨークの街並みの俯瞰ショットは、ライミ版の頃からのお決まりであるトンマナだ。

本作で主人公キャシーは未来予知能力を得るようだが、どれくらい先の未来まで見られるようになるかはわからない。映像を見る限り、数十秒~数分先といった具合のようにも思える。これも、ニコラス・ケイジが2分先の未来を予知する2007年の映画『NEXT -ネクスト-』を思い出させるようである。

もし『マダム・ウェブ』が本当に2000年代を描くなら、それはアメコミ映画のレトロオマージュが前進したということでもある。ファッションの世界では流行が30年サイクルで繰り返されれるというが、2010年代のアメコミ映画は実際に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズや『シャザム!』(2019)などが1980年代オマージュを捧げた。『アイアンマン』のトニー・スタークも、AC/DCの1980年代の曲を好んで聴く世代だ。

映画製作の世界では1980年代回帰のトレンドがしばらく続いたが、『キャプテン・マーベル』(2019)『ブラック・ウィドウ』(2021)では1990年代が舞台となり、今年の大ヒット作『バービー』で見られたファッションも1990年代風ルックと言えるだろう。現行のドラマ「TOKYO VICE」(2022)は1999年の東京が舞台で、劇中では宇多田ヒカルやCocco、バックストリート・ボーイズやインシンクが流れる。1990年代のロサンゼルスを描く『mid90s ミッドナインティーズ』(2018)も話題を集めた。『トランスフォーマー/ビースト覚醒』(2023)は、『ターミネーター2』(1991)に影響を受けたとされる。

そして2000年代回帰といえば「Y2Kファッション」、日本でいえば「平成レトロ」がZ世代にも支持されているところ。そろそろ、こうした気分が映画業界に反映されてもおかしくない。果たして『マダム・ウェブ』は、映画業界にミレニアム・リバイバルの新たなトレンドを打ち出すことができるか。予告編ではビリー・アイリッシュの「Bury A Friend」が使われているが、いっそのこと2000年代の懐メロも使ってみてほしいものだ。この時代といえば、女性シンガーによる素晴らしいヒット曲がたくさんあるのだから。

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