記事のポイント

TikTokの2024年の広告支出は前年比25%増と予測され、特定のマーケターは予算の20〜25%をTikTokに割り当てる目標。Insider Intelligenceによると、TikTokのデジタル広告市場占有率は2023年2.2%から2025年3%へ増加予測。

成長は顕著な一方で、広告主がTikTokに振り向ける予算はMetaへの支出の足元にも及ばないという事実もある。

TikTokは期間限定特別オファーを通じて2023年度第4四半期の広告費用を積極的に増やし、2024年度の広告予算を前もって確保する強かな戦略を展開。


TikTokへの広告支出は来年2024年、またも大幅な増加が予想されており、2023年度をさらに上回る勢いでの投資が成長を加速する見込みだ。

広告界幹部によれば、来年度、TikTokへの支出増は今年度のそれを25%も上回る勢いだという。

抑えておくべき重要点



プロテインスナックブランドのチョンプス(Chomps)や中国のチリソースブランド、フライバイジン(Fly By Jing)を顧客に持つエージェンシー、グッドピープス(Good Peeps)の創業者/CEOシュレイ・ジョシ氏は、2024年度、マーケター勢に予算の最低20〜25%をTikTokに投じさせることを目標にしている。プロクター&ギャンブル(Procter & Gamble)やユニクロ(Uniqlo)、キャスパー(Casper)を顧客に持つパワーデジタル(Power Digital)も然り。

インフルエンシャル(Influential)のCEOライアン・ディタート氏は、フォーチュン500(Fortune 500)に載る企業を含む同社顧客の大半は、2024年度、TikTokへの支出を10〜15%ほど増やすと予想。

インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)の予測データによれば、2023年度、TikTokが世界の総デジタル広告費に占める割合は2.2%。2024年にはそれが2.6%に、2025年には3%に増加。

これらの数字の背景



こうした成長は顕著ではあるが、その一方で、念頭に置いておくべき重要点もいくつかある。なかでも注目すべきは、広告主が現在TikTokに注ぎ込んでいる資金はあくまで、彼らがメタ(Meta)といった巨大テックに費やしている金額に比べれば、雀の涙ほどでしかない、という事実だ。

マーカシー(Markacy)のマネージングパートナー、タッカー・マセソン氏が指摘するとおり、TikTokへの資金流入先は2つに大別される――TikTokコンテンツ制作への投資、そして広告をより効果的にする、あるいは特定の目標に到達させるための努力だ。マーケター勢はこの形態に慣れており、言い換えれば、彼らがそうするまで、広告には常に制限がかかることになる。

「TikTokでのやり方は、メタのそれとはまるで違う。メタでは通常、コンテンツを適切なものにし、確実にテストを行なうには、実際のコンテンツ量の2〜3倍が求められる」とマセソン氏。「一方、TikTokでは、週に3、4、5、6回もコンテンツを投稿し、コンテンツをより多くの人に見せる確率を上げるアルゴリズムを活用するべく、反応があるものを手当たり次第に推す必要がある」。

その点を踏まえると、たとえば、今年2023年にTikTokを試していた従来型CPGブランド勢が支出額を今年度の約5%から2024年度は8〜10%に増やしたとしても驚かないと、マセソン氏は話す。「Z世代にフォーカスする一部ブランドの場合、TikTokに適切なコンテンツがあり、そこにナラティブがあると判断すれば、支出増が20%強に至ることもありうる」。

用意周到



さらなる広告費の確保にかけては、TikTokは何事も偶然に任せるタイプではない。自身への2023年度ホリデーシーズン支出を増やし、翌年度のスタートを有利に切るべく、厳選した広告主に「期間限定特別オファー」をすでに送っているのは、その証だ。

米DIGIDAYが得た情報によれば、同社は広告主に対し、「2023年度第4四半期の広告費が7万ドル(約1050万円)を超えた皆様に、2024年度第1四半期、1万4000ドル(約210万円)の広告クレジットを進呈」とのオファーを送っている。DIGIDAYはTikTokにコメントを求めたが、返答はなかった。



御社は期間限定特別オファーを受けるに相応しい、数少ない広告主の一社に選ばれました。
2023年度第4四半期の広告費が7万ドルを超えた皆様に、
2024年第1四半期、1万4000ドルの広告クレジットを進呈。
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このインセンティブは、少なくとも大半においては、効を奏したものと思われる。広告主の中には、これを2024年度第1四半期に留まらず、TikTokへの支出をさらに促す布石と見る向きもある。

「第4四半期の投資を翌年にまで拡大させ、TikTokが現在享受している広告費増を一時的なものにさせない戦略であり、うまいやり方だ」と、ベイシステクノロジーズ(Basis Technologies)のサーチ&ソーシャルメディアサービス部門SVPエイミー・ランプラー氏は、DIGIDAYが得たこのオファー情報を分析する。「このインセンティブがTikTokへの広告は(第4四半期に留まらず)効果を持続できると示す一助になれば、ブランド勢が2024年、さらに巨額の、もしくはより長期の投資をする可能性は高いと思われる」。

一方、こうした類のインセンティブに惹かれないブランドもある。これはあくまで、TikTokというチャネルがクライアントに適切だからではなく、いわば、おまけで釣って支出を促しているのと変わらないからだ。

「我々としては、クライアントレベルの広告クレジットの活用が望ましい。そうすることで、我々がクライアントから『信託』されている動機が生まれるからだ」と、同じくこのオファーを分析したマーカシーのマネージングパートナー、タッカー・マセソン氏は話す。「それならば、クライアントは然るべき広告支出を回収でき、我々としても、資金運用にフォーカスするマーケティンググループであることを踏まえ、テスト機会がクライアントのビジネス目標に合致するか否かを的確に判断できる」。

実態把握



実情:TikTokは依然、広告費的影響力よりも文化的影響力のほうが大きい。ただし、その溝はゆっくりと埋まりつつある。とはいえ、TikTokがさまざまなピースをまとめられるまで、溝は完全には埋まらないだろう。ショートフォーム動画、ショッピング、音楽、検索……現状は文字どおりジグソーパズルのようだ。そして、TikTokの広告幹部勢がそれらをまとめ上げる術を見つけ出せたなら、このアプリは「あると良いもの」ではなく、メディアプランにおいて、「なくてはならない存在」になるに違いない。

バドワイザー(Budweiser)やイーベイ(eBay)、グルーポン(Groupon)を顧客に持つエージェンシー、マインドグルーヴ(Mindgruve)はたとえば、TikTokを依然、実験的広告の場と見ている。だが、広告主のオプションやさまざまなケイパビリティへのフォーカスが増すなか、同エージェンシーのグループメディアディレクター、ヘイリー・フィーゼル氏は――TikTokはメタに比べて、KPIにばらつきがある点を踏まえ――少なくとも一部クライアントの予算15〜20%のTikTokへの移行を期待したいと話す。現状、マインドグルーヴの顧客の場合、ソーシャル予算の約90〜95%は依然、メタとLinkedInに投じられている。

[原文:The Rundown: TikTok 2024 spending]

Krystal Scanlon(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)