中国・李克強前首相「死去時刻6時間改ざん疑惑」に人民も騒然…訃報記事は「コメント欄」ごと閉鎖の大波紋
2023年3月の全人代で握手する亡くなった李克強前首相(右)と習近平国家主席(写真・代表撮影/ロイター/アフロ)
10月27日未明、中華人民共和国の李克強(リー・コーチアン)前首相(享年68)が、心臓発作のため、上海で死去したと中国の国営メディアが報じた。
李前首相は、1976年に共産党に入党。同じ「共産主義青年団」出身の胡錦濤前国家主席に重用され、2007年の党大会で、習近平国家主席とともに最高指導部の政治局常務委員に選出された。
そして、2013年3月から2023年3月まで、2期にわたって首相を務め、発足させた「李克強内閣」では経済政策に力を入れ、改革開放を推進した。
「しかし、習主席の権力が強まると、李前首相は傍流に追いやられるようになりました。2022年10月の党大会で、李前首相が中央政治局委員から外れ、事実上の引退が決まりましたが、これは慣例とされていた『68歳定年』よりも早い引退だっため、習主席が “排除” したという見方が強まっていたんです」(国際担当記者)
そうした背景が知られるなか、李前首相が休養中の上海で「水泳」をしている際に心臓発作を起こしたことから、病死との発表を訝しむ声が中国内でもあがっているという。
中国事情に詳しいジャーナリストの角脇久志氏は、こう話す。
「アメリカに拠点を置く中華系メディア『ラジオ・フリー・アジア』も取り上げているように、李前首相の死去については、中国のインターネット上では、26日の午後6時ごろには、ニュースが流れていました。
しかし、政府の公式発表はその8時間以上も後のことで、李前首相の死亡時刻も27日午前0時10分とされており、疑問の声があがっています。
さらに、『人民日報』『新華社通信』など、大手政府系のメディアが李前首相の逝去を報じた記事に対しては、『微博(ウェイボー)』のコメント欄でも書き込みができますが、それ以外のメディアの訃報記事や個人ページではコメント欄ごと閉鎖され、書き込みができないようになっています」
日本で広く報じられている李前首相の急逝のニュースだが、中国内ではそれを報じたNHK海外放送のニュース番組が途中から遮断される事態も発生した。
「中国では、最近、明時代の最後の皇帝・崇禎帝を描いた歴史書が発売禁止になりましたが、崇禎帝は疑り深く、独裁的で政策的にも悪手を連発し、亡国に導いた皇帝でした。それが習主席を連想させたのでしょうか、発売禁止の理由が『習主席を批判したから』とされているんです。
これだけ強い独裁体制を習主席が敷くなか、2023年3月には全人代で胡前主席が強制退場させられる事件も起こり、この3カ月で外相と国防相の解任と続いています。
そして、李前首相の “突然死” に対しても、不審な情報規制が入っていることで、中国の人民も “陰謀説” への強い疑念を感じ、騒然としている状態です」(前出・角脇氏)
中国内のニュースサイトでは、李前首相の訃報記事に440万人以上のアクセスがあり、トップになったという。人民のその注目は、いったいどういう視点で向けられているのだろうか――。