Intel第14世代Coreのハイエンドモデル「Core i9-14900K」海外レビューまとめ、Core i9-13900Kからは微々たる変化でCPUクーラー必須の激アツモデル
Intelが第14世代Coreプロセッサ「Raptor Lake Refresh」として、最上位モデルの「Core i9-14900K」、ミドルレンジモデルの「Core i7-14700K」、最も安価に入手できる「Core i5-14600K」を発表しました。最もハイスペックなIntelのフラグシップモデルとなる「Core i9-14900K」の海外レビューをまとめてみました。
Intel Core i9 processor 14900K 36M Cache up to 6.00 GHz 製品仕様
Core i9-14900Kのスペックは以下の通り。
リソグラフィー:Intel 7(第3世代10nmテクノロジー)
コア数:24(パフォーマンス(P)コア:8、効率(E)コア:16)
スレッド数:32
ターボブースト利用時の最大周波数:6.0GHz
キャッシュ:36MB Intel Smart Cache
合計L2キャッシュ:32MB
プロセッサのベースパワー:125W
最大ターボパワー:253W
テクノロジーメディアのAnandTechはさまざまなソフトウェアやベンチマークソフトを使い、Core i9-14900Kが他のCPUと比べてどの程度の性能向上を果たしたかを明らかにしています。
Intel Core i9-14900K, Core i7-14700K and Core i5-14600K Review: Raptor Lake Refreshed
https://www.anandtech.com/show/21084/intel-core-i9-14900k-core-i7-14700k-and-core-i5-14600k-review-raptor-lake-refreshed
Core i9-14900Kの前モデルに相当するのは第13世代CoreプロセッサのCore i9-13900KSで、さらに一世代前のモデルに相当するのがCore i9-13900Kです。Core i9-13900KはCPUのパフォーマンスを向上させるIntel Thermal Velocity Boostを使っても最大動作周波数が5.80GHzでしたが、Core i9-13900KSはすでに最大動作周波数が6.0GHzに到達していました。そのため、AnandTechは「Core i9-13900KSがなければCore i9-14900Kの登場はより驚きをもって伝えられていたでしょう」としています。
AnandTechはCPU以外に以下のパーツを使用してPCを構成し、さまざまなベンチマークテストを実施しています。
マザーボード:MSI MEG Z790 Ace Max(BIOS 7D86vA0)
メモリ:2×16GB(DDR5-5600B CL46)
冷却システム:MSI MAG Coreliquid E360 360mm AIO
ストレージ:2TB PCIe 4.0×4
電源:MSI A1000G 1000W
GPU:AMD Radeon RX 6950 XT
OS:Windows 11 22H2
SPEC CPU 2017を用いたベンチマーク結果が以下。オレンジ色がCore i9-14900K、水色がCore i9-13900K、青色がCore i9-12900K、黒色がRyzen 7950Xのスコアで、数字が大きいほどスコアが優れていることになります。シングルスレッドパフォーマンスを比較すると、「Core i9-13900KからCore i9-14900Kに代えるべき利点はほとんど見られません」とAnandTechは記しています。唯一大きなスコアの向上が見られたのは、10Gbitイーサネットワークの個別イベントをシミュレートする「520.omnetpp_r」で、Core i9-14900KのスコアはCore i9-13900Kから約23%も向上しています。なお、AnandTechはスコアが伸びた理由を「最大動作周波数が5.80GHzから6.0GHzに向上したため」と説明しました。
マルチスレッドパフォーマンスを比較したのが以下のグラフ。最大動作周波数の向上によるメリットがあると思われる唯一のテストが「502.gcc_r」で、これはソースコードの入力とデータを分析するGNU Cコンパイラに基づくシミュレーションです。502.gcc_rにおいて、Core i9-14900KはCore i9-13900Kよりも34%高いスコアを記録しています。
その他のスコアはCore i9-14900KとCore i9-13900Kで大差はなく、むしろ2560×2048ピクセルのチェス盤をレンダリングしてTarga(.tga)形式でファイルを保存するというシミュレーションの「511.povray_r」では、Core i9-13900Kの方がわずかに高いスコアを記録しています。
これらを踏まえ、AnandTechは「SPEC CPU 2017のベンチマークテストにおいて、Core i9-14900KはCore i9-13900Kと比べて大幅なパフォーマンスの向上を示していませんでした」と記しています。
以下はCPU別のピーク電力をまとめたグラフ。Core i9-14900K(オレンジ色)は「428.28W」を記録。
以下はPC向けベンチマークソフトであるUL Procyonを用いて行った、各種ソフトウェアを実行した場合の性能比較スコア。すべてスコアが高いほど優れたパフォーマンスを実現したことを表します。
Word
Excel
Outlook
PowerPoint
動画編集ベンチマーク
LibreOfficeで作成したデータ20個をPDFに変換
さまざまなソフトウェアの動作を比較していますが、Core i9-14900K(オレンジ色)が劇的に優れたパフォーマンスを発揮するということはありません。むしろ、ミドルレンジモデルのCore i7-14700K(赤色)が一貫して上位のスコアをたたき出しており、「Core i9-14900KよりもEコアが4つ少ないにもかかわらず、優れたパフォーマンスを発揮している」とAnandTechは指摘。
動画編集ソフトや暗号化ソフトでさまざまな設定でエンコーディングを行った際のパフォーマンスを比較したのが以下のグラフ。
WebP2 Image Encode:Q75、CE7
WebP2 Image Encode:Q100、LC
SVT AV1 Encoding:Bosphorus 1080p、Fastest Preset
SVT AV1 Encoding:Bosphorus 4K、Fastest Preset
SVT AV1 Encoding:Bosphorus 1080p、Mid Preset
SVT AV1 Encoding:Bosphorus 4K、Mid-Speed Preset
Dav1d AV1 Benchmark、Summer Nature 4K
SVT-HEVC Encoding:Bosphorus 1080p、HQ
SVT-HEVC Encoding:Bosphorus 1080p、HQ
SVT-HEVC Encoding:Bosphorus 4K、HQ
SVT-VP9 Encoding:Bosphorus 1080p、Quality Optimized
SVT-VP9 Encoding:Bosphorus 4K、Quality Optimized
FFmpeg 6.0 Benchmark:libx264 Encode、Live Scenario
FLAC Audio Encoding 1.4:WAV to FLAC
7-Zip 22.01:Compression Rating
7-Zip 22.01:Decompression Rating
各種ソフトでのレンダリング時のパフォーマンスをスコア化して比較したのが以下のグラフ。
Blender 3.6:BMW27(CPUのみでレンダリング)
Blender 3.6:Classroom(CPUのみでレンダリング)
Blender 3.6:Fishy Cat(CPUのみでレンダリング)
Blender 3.6:Pabellon Barcelona(CPUのみでレンダリング)
CineBench R23:シングルスレッド
CineBench R23:マルチスレッド
CineBench 2024:シングルスレッド
CineBench 2024:マルチスレッド
C-Ray:Toral Time - 4.1.R.P.P
V-Ray 5.0.2 Benchmark:CPU
POV-Ray 3.7.1
解像度1080pでのゲームプレイ時の平均FPSをCPU別に比較したのが以下のグラフ。
シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI
グランド・セフト・オートV
レッド・デッド・リデンプション2
解像度4Kでのゲームプレイ時の平均FPSをCPU別に比較したのが以下のグラフ。
シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI
グランド・セフト・オートV
レッド・デッド・リデンプション2
なお、AnandTechは「おそらくもっとも重要な点は、第14世代Coreプロセッサと第13世代Coreプロセッサは、PコアおよびEコアのアーキテクチャおよびIHS(銅製ヒートスプレッダ)の下にあるすべてのシリコンが実質的に同一であるという点です。Core i7-14700KのEコア数増加は別として、他のモデルは前世代のモデルと同じコア構成をしながら、わずかに高いクロック周波数で動作しているだけです」と指摘。さらに、複数のベンチマークテストの結果を見ても、パフォーマンス面で第14世代Coreプロセッサと第13世代Coreプロセッサに大きな変化はないと強調しています。
ただし、第9世代、第10世代、第11世代Coreプロセッサ辺りを使用しているユーザーが、第14世代Coreプロセッサに買い替えるメリットは「数多くある」と言及。ただし、これらのモデルを利用している人の場合、第13世代Coreプロセッサに買い替えるメリットも同じようにあり、これらのモデルは一世代古いもののため、より安価に購入できると指摘しています。
海外メディアのThe Vergeは、Core i9-14900KにCore i9-13900Kからのコア数の増加がなく、最大動作周波数も200MHz増加しただけである点を挙げ、「このような小さな変更だけではゲームやクリエイティブなタスクのパフォーマンスを劇的に変えるには不十分」と指摘。さらに、「競合であるAMDのx3dに匹敵するには明らかに不十分」と指摘しました。
Intel Core i9-14900K review: a refresh in name and nature - The Verge
https://www.theverge.com/23918907/intel-core-i9-14900k-review
なお、The VergeはCore i9-14900Kの優れた点として「クリエイターアプリにおける素晴らしいパフォーマンス」「すぐに使える6.0GHzの動作周波数」「第13世代Coreプロセッサと同じ価格帯」という点を挙げており、欠点には「第13世代Coreプロセッサと比較してパフォーマンスが若干しか向上していない」「重いワークロードでは105度に到達する」「第13世代Coreプロセッサと比較して電力効率が向上していない」という点を挙げました。
Club386はCore i9-14900Kのレビュー記事に「Core i9-13900KSのデジャブ」という辛辣なタイトルを付けており、「名前以外はCore i9-13900KSそのもの」と評しています。なお、Club386はCore i9-14900Kの長所として「コンテンツクリエイターに最適」「すぐに利用できる6.0GHzの動作周波数」「ワイドマザーボードのサポート」の3つを挙げており、短所には「膨大な電力が必要」「360mmのオールインワン冷却システムが必要」「前モデルからのパフォーマンス向上がほとんど見られない」という3点を挙げています。
Intel Core i9-14900K review - 13900KS deja vu | Club386
https://www.club386.com/intel-core-i9-14900k-review/
テクノロジーメディアのGuru3Dも、「Core i9-14900KはCore i9-13900KとCore i9-13900KSと比較して、動作周波数の増加のみを提供するモデルです。シングルスレッドのパフォーマンスは非常に高速ですが、マルチスレッドパフォーマンスは、Core i9-13900Kと比べてまあまあといったところで、ゲームにおけるパフォーマンスは非常に優れています。ただし、これはあくまでも名前を変えたCore i9-13900KSにほかなりません」と言及。ただし、あくまでもCore i9-14900Kの高いパフォーマンスは称賛しています。Core i9-14900Kの欠点としては強力な冷却システムが必要になる点を挙げており、「有名ブランドの280mmの水冷クーラーを使用することを推奨します」と記しました。
Intel Core i9-14900K review
https://www.guru3d.com/review/intel-core-i9-14900k-review/
PCWorldはCore i9-14900KとCore i7-14700Kの長所として「優れたゲーム性とクリエイティブアプリにおけるパフォーマンス」「既存のIntel600シリーズおよび700シリーズのマザーボードとの互換性がある点」「新しいAI機能がパフォーマンスを最適化してくれる」「Wi-Fi 7とThunderbolt 5をサポート」「理想的な環境をそろえれば6.0GHzで動作する」という5点を挙げ、短所としては「Core i9-14900Kは、Core i9-13900Kからのパフォーマンス向上はほんとわずか」「非常に高い電力消費」「Core i9-14900Kは、はるかに安価なCore i7-14700Kと比べても、ゲーム性能がわずか3〜6%ほど向上しているだけ」という3点を挙げました。
Intel Core i7-14700K and Core i9-14900K review: A mild CPU update | PCWorld
https://www.pcworld.com/article/2108211
Tom's Hardwareも「Core i9-14900KとCore i5-14600Kは第13世代Coreプロセッサと比べて大きなアップグレードはなく、CPU市場の競争環境を大きく変えるようなものではありません。一方で、Core i7-14700Kは前モデルからEコアが4つ増えており、スレッドアプリケーションで目に見える向上をもたらし、Core i7全体の価値を向上させているように思えます」と言及し、第14世代Coreプロセッサの中ではCore i7-14700Kが最も魅力的と指摘しています。
Intel Core i9-14900K, i7-14700K and i5-14600K Review: Ryzen X3D Stays On Top | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/news/intel-core-i9-14900k-cpu-review
Neowinは「第14世代Coreプロセッサは猛獣のようで、動作速度の面ではAMDの主力チップを圧倒しており、Intel支持者はあらゆる面でIntel製CPUの方が優れていると言うでしょうが、これはベンチマークテスト結果が証明しています。冷却する余裕さえあれば、Core i9-14900Kを搭載したゲーミングキングを構築することができるでしょう」と指摘。Core i9-14900Kの優れたパフォーマンスを称賛しているものの、電力効率が悪く、スペック通りに動作させるにはハイスペックな冷却システムの導入が必要になるとしています。
Core i5-14600K/i9-14900K review: Intel snatches crown from AMD's Ryzen 7950X3D, with 6GHz - Neowin
https://www.neowin.net/reviews/core-i5-14600ki9-14900k-review-intel-snatches-crown-from-amds-ryzen-7950x3d-with-6ghz/
Extremetechは「第14世代Coreプロセッサは妥当な価格設定を考えると、それほどひどい買い物ではありません。しかし、第14世代Coreプロセッサと第13世代Coreプロセッサの差はごくわずかであるため、価格が落ちれば第13世代Coreプロセッサがよりお買い得になるだろう」と指摘。
Intel Raptor Lake Refresh Benchmarks for 14900K, 14600K Show Minimal Gains | Extremetech
https://www.extremetech.com/computing/intel-raptor-lake-refresh-benchmarks-for-14900k-14600k-show-minimal-gains
ゲームメディアのPC Gamerは、Core i9-14900Kの長所を「優れたシングルスレッドおよびマルチスレッドパフォーマンス」「ハイエンドのGPUと組み合わせることで驚異的な動作を実現」「Intelの600/700シリーズのマザーボードと互換性がある」とし、短所として「Core i9-13900Kと比べるとあまり改善されていない」「大型のCPUクーラーが必須」「一部のゲームではAMDの3D V-Cache対応チップに匹敵しない」「新しい要素は何もない」を挙げました。PC GamerはCore i9-14900Kを購入すべき人を「現時点でIntelが提供する最高のものを求めている人」としており、「高額な値札の付けられた製品であるため、本当に必要としている人以外には非推奨」としています。実際、ゲームのパフォーマンスにおいてはCore i9-14900K以外のCore i5-14600Kでもほぼ同等のパフォーマンスを引き出すことができるため、「平均的なPCゲーマーにIntelやAMDのハイエンドCPUを推奨するのは非常に難しい」と記し、必要性が高い場合以外はCPUではなくGPUに予算を回すことを推奨しています。
Intel Core i9 14900K review | PC Gamer
https://www.pcgamer.com/intel-core-i9-14900k-review-performance-benchmarks/
なお、Core i9-14900KはAmazon.ne.jpでは税込11万909円で販売されています。
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