CLで先発した日本人選手7人を採点 最高点は古橋亨梧の「7」、日本代表のライバル上田綺世は...
チャンピオンズリーグ(CL)グループリーグ第2節。冨安健洋(アーセナル)、久保建英(レアル・ソシエダ)、上田綺世(フェイエノールト)、鎌田大地(ラツィオ)、古橋亨梧、前田大然、旗手怜央(セルティック)の日本人選手7人がスタメン出場を果たした。フル出場は冨安、鎌田、前田の3人で、古橋はCL初ゴールを決めることに成功した。
競り合う旗手怜央(セルティック)と鎌田大地(ラツィオ)。この試合には日本人4人が先発した
同日の2時間15分前にキックオフされたアトレティコ・マドリード対フェイエノールト戦でも、開始早々、日本人選手にチャンスが訪れていた。左インサイドハーフ、キンテン・ティンバー(元オランダU−21代表)の縦パスを最終ラインの裏で受けた上田。次の瞬間に放った左足シュートはアトレティコのGK、DFに当たりながら枠内に転がっていった。周囲の選手から祝福を受けた上田だったが、判定は無情にも相手のオウンゴールだった。
明暗を分けた両者は日本代表の1トップを争う間柄だ。9月に行なわれた2試合(ドイツ戦、トルコ戦)では、上田がドイツ戦、古橋がトルコ戦でそれぞれ先発している。試合のグレードを考えれば、森保一監督はドイツ戦に先発した上田を、古橋より上と評価していたようだ。
ただこの両者の微妙な立ち位置は、CLの今節の結果でひっくり返った可能性がある。得点シーン以外でも、古橋の出来は上田に勝っていたからだ。60分間のプレー(後半15分)でベンチに下がった上田に対し、古橋は後半41分まで86分間プレーしている。採点するならば古橋は7で、上田は5.5となる。
カナダ戦(10月13日)、チュニジア戦(10月17日)を戦う日本代表メンバーの発表があった日に、アトレティコ、フェイエノールト、ラツィオ、セルティックが同居するE組の戦いを見ることになったわけだ。代表選手それぞれへの期待値は、この日のCLのプレーに比例することになった。
【混沌に巻き込まれている鎌田大地】
ラツィオ戦に話を戻せば、古橋が挙げた先制弾で、その2つ前のプレーに絡んだのは前田だった。右のタッチライン際からアシスト役となったオライリーに、よいタイミングで的確なパスを送っていた。アイスホッケーならばダブルアシストが記録されていたはずである。代表では左で起用されることが多い前田だが、右でもスムーズに動けることを証明したと言える。相手ボールを追いかけるプレッシングも光った。採点するならば6〜6.5か。
左インサイドハーフとして出場し、後半27分まで72分間プレーした旗手も悪くなかった。高い位置で安定した球さばきを披露。採点するならばやはり6〜6.5となる。
だが、セルティックは逆転負けした。後半の追加タイム(49分)に、バルセロナ、チェルシーなどで名を売ったペドロ(元スペイン代表)に逆転のヘディングを許し、前節のフェイエノールト戦に続き2連敗となった。
E組はこの日、フェイエノールトに逆転勝ちしたアトレティコの力が一歩抜けていると目されていた。昨季のセリエA4位チーム、ラツィオが僅差で続き、フェイエノールト、セルティックは苦しい戦いを強いられるかに見えた。だが、アトレティコはその守備的すぎるベタ引きのサッカーが弊害となり、選手の能力を発揮できずにいる。ラツィオも今季のセリエAで現在16位と不振を極めている。すべての試合が接戦だ。
その混沌に鎌田は巻き込まれた状態にある。4試合ぶりのスタメン出場となったこのセルティック戦でも、問題は見え隠れした。右インサイドハーフといえば攻撃の中心である。4−3−3では花形のポジションになるが、ボールが回って来ないのだ。相手の左インサイドハーフ、旗手と比較すれば一目瞭然だった。ラツィオの成績が上がらない現実を、鎌田の姿に見て取ることができる。日本人としてはそう言いたくなる。採点するならばギリギリ6となる。
久保が所属するレアル・ソシエダは、現地時間火曜日にザルツブルクとアウェー戦を行ない0−2で勝利した。ただ久保の出場時間は思いのほか短く、後半18分までの63分間に終わった。実際、後半になると元気がなくなったかに見えた。欧州のカップ戦に出場している代表選手を、日本で行なわれる親善試合などに毎度招集することは、選手ファーストの立場から逸脱している、と別の原稿にも記したが、久保のプレーを見ていると、なおさらそう言いたくなる。
【逞しくなった久保建英】
ただし、久保のプレーはずいぶん逞しくなっている。いい意味で"少年っぽさ"が消えた。屈強な相手と対峙しても萎縮せず、主導権を持てるようになった。技術的には相手を縦にかわして出るフェイントが板についてきた。
ザルツブルグ戦では、開始2分、対峙する左SBアレクサ・テルツィッチ(セルビア代表)に対してその足技を披露した。相手の左サイドハーフ、マウリッツ・ケアゴー(元デンマークU−21代表)がそのカバーに駆けつけ、1対2の状況になると方向を転換。内に切り返し左足でグラウンダーのボールを折り返した。左ウイング、アンデル・バレネチェアの枠内シュートは惜しくもDFに当たり、ゴールとならなかったが、そのドリブル&フェイントは、まさしくワンランク上のプレーだった。こうしたA級のプレーを1試合に何度披露することができるか。三笘薫が3回なら、久保はその上の4回を狙いたい。採点するならば6.5となる。
冨安所属のアーセナルは、昨季のフランスリーグ2位チームであるランスに対し、アウェーでまさかの逆転負け(2−1)を喫した。右SBとしてCL初スタメンを飾った冨安は、プレーそのものは悪くなかったが、採点するならばギリギリ6となる。
それは2失点に関与してしまったからだ。同点弾となった1失点目は、GKダビド・ラヤのフィードミスに直接的な原因がある。冨安にめがけて出したパスを相手にカットされ、それが失点に直結したわけだが、コンビネーションに問題があったことは事実。交代出場が多く、スタメン入りを狙う冨安にとっては少々印象の悪い、痛い失点となった。
また、逆転弾となった2失点目では、攻守が入れ替わる基点となるボールロスト役となってしまった。ドリブルで勇ましく前進したものの、相手に囲まれ奪われてしまう。それは直前に惜しいシュートを放っていたことと深く関係していた。
MFマルティン・ウーデゴール(ノルウェー代表)の蹴ったCKに鋭く反応。冨安は好シュートを枠内に飛ばしていた。GKの好守で得点こそならなかったが、存在感を誇示するには十分な一撃だった。その時、冨安の脳内にアドレナリンが出まくっていた可能性がある。ボールを失うことになった直後の強引なドリブルは、その代償に見えた。
それはともかく、アーセナルはマイボールに転じるや布陣を4バック(4−3−3)から3バックに変える、今日的なスタイルのチームだ。この日で言うならば、その可変式の主役を、左SBのオレクサンドル・ジンチェンコ(ウクライナ代表)が担っていた。3日前に行なわれた国内リーグ、ボーンマス戦も同様だったが、この時はジンチェンコに代わって入った冨安も同じ役を任されている。
左SB兼守備的MF。日本代表でも見たいプレーだ。5バックになりやすい守備的な3バックではなく、4バックから3バックへの変化で推移する、いわば攻撃的3バックで機能する冨安が見たいのだ。冨安というタレントをいかに有効活用するか。森保監督はアーセナルのミケル・アルテタ監督に学んでほしいものである。