キヤノンが繰り出すカッパのコスプレ? 謎型マスクデバイスの正体を暴く【道越一郎のカットエッジ】
見るからにカッパのコスプレ。キヤノンが開発中の新製品だ。外見は大きめの布製マスク。前に突き出した立体的な形状が激しくカッパ感を醸し出している。実はこれ、しゃべる声を減音する新型デバイス「Privacy Talk」のプロトタイプ。さしずめマスク版「叫びの壺」ともいうべき製品だ。これを、なぜキヤノンが開発するのかという点に、素朴な疑問を抱きつつも、これまでにない新たなものを創造しようとする、挑戦の心意気に拍手を送りたい。
用途は単純明快。オンライン会議だ。これを使えば、オンライン会議で話す自分の声が、周囲の人たちに聞き取りにくくなる。会社のデスクで、自宅の居間で、街中のカフェでと、あらゆるところで会議ができるようになった。しかし、周囲に人がいる環境では、迷惑をかけないように配慮しなければならない。相手の音声はヘッドホンやイヤホンを使えば問題ない。背景の映り込みもバーチャル背景を使えば解決する。しかし、どうしようもないのが、自分のしゃべり声だ。
一部では「オンライン会議はご遠慮ください」とするカフェもある。携帯電話の通話と同様の扱い、と考えれば無理もない。かといって、オンライン会議のたびに部屋を確保したり人気のない場所を探したりするのも面倒。15分単位で数百円も課金される電話ボックス型ブースを借りるのもコスパが悪い。そこでこの減音マスクを装着すると、問題が一気に解決する、というわけだ。
装着モデルになっていただいた方に、撮影しながら感想を伺った。「●kぢえ▼ぇ■おう※けお」。全く聞き取れない。そういう製品なのだから聞き取れなくて当然。笑ってしまった。距離にしておよそ1m。これぐらい離れただけでも、もごもごと聞こえるだけで何を話しているのかは、全くわからない。マスクを外して「普通のマスクとあまり変わらない装着感です」というコメントをいただいた。マスク内部にはマイクが仕込んであり、当然ながらオンライン会議の相手には自分の音声はクリアに聴こえる。周囲の雑音も減音される。マスクには有線イヤホンもついている。マイクとイヤホンはBluetoothでパソコンやスマートフォンと接続して使用する、という仕組みだ。製品カテゴリーではヘッドセットということになるだろう。
気になるのは減音の仕組み。開発に携わるキヤノンマーケティングジャパン コンスーマ事業戦略本部コンスーマ新規ビジネス企画部 ichikara Labの紅村茉友 氏は「まだ詳しくお話しできないが、独自の構造で減音している。しかし、ノイズキャンセリングイヤホンのような電子的な処理は一切していない」という。内側の構造はまだ公開できないとのことだったが、ちらっと見えたところでは、シリコンのような柔らかな枠が口を覆うようになっており、その先に何らかの構造上の工夫がなされているようだった。ムレ防止のため、ファンも内蔵する。しかし、マイク近くにファンがあれば、どうしても音声にノイズが入ってしまう。この音をどうやって軽減するかはまだ開発の途上だという。発売時期については「できるだけ早く発売したい」(紅村氏)としているが、具体的な日程はまだ決まっていない。
マスク型デバイスといえば、ダイソンの空気清浄機付きヘッドホン「Dyson Zone」を思い出す。「なんでまたヘッドホンに空気清浄機?」と思ったが、大気汚染の激しいインドのムンバイや中国の天津のように、もやがかかったような空気で、視界もろくに確保できない環境では威力を発揮しそうだ。しかし、少なくとも日本にいる限り、今時そんなひどい大気汚染に苦しめられることは希だ。ウイルス除去効果を期待して購入する向きもあろうが、コロナ禍がほぼ終息した今となっては、ほとんど無用の長物になりつつある。しかし、減音マスクなら断然ニーズはありそうだ。
オンライン会議で相手がマスクをしていると、ちょっとがっかりしてしまう。口元の表情は重要な情報の一つ。ただでさえ情報量が限られるオンライン会議。表情ぐらいは見えていたい。減音のためにマスクが必要なら、せめて相手にはバーチャルな処理で口元がアニメで見えるようにする工夫があってもいい。いろんなバリエーションから口元を選べればなお楽しいだろう。今のところそんな計画はないというが、検討の価値はあると思う。もしこのアイディアを取り入れるのなら、是非ともカッパの口元を初期バリエーションの一つに採用していただきたい。(BCN・道越一郎)
一部では「オンライン会議はご遠慮ください」とするカフェもある。携帯電話の通話と同様の扱い、と考えれば無理もない。かといって、オンライン会議のたびに部屋を確保したり人気のない場所を探したりするのも面倒。15分単位で数百円も課金される電話ボックス型ブースを借りるのもコスパが悪い。そこでこの減音マスクを装着すると、問題が一気に解決する、というわけだ。
装着モデルになっていただいた方に、撮影しながら感想を伺った。「●kぢえ▼ぇ■おう※けお」。全く聞き取れない。そういう製品なのだから聞き取れなくて当然。笑ってしまった。距離にしておよそ1m。これぐらい離れただけでも、もごもごと聞こえるだけで何を話しているのかは、全くわからない。マスクを外して「普通のマスクとあまり変わらない装着感です」というコメントをいただいた。マスク内部にはマイクが仕込んであり、当然ながらオンライン会議の相手には自分の音声はクリアに聴こえる。周囲の雑音も減音される。マスクには有線イヤホンもついている。マイクとイヤホンはBluetoothでパソコンやスマートフォンと接続して使用する、という仕組みだ。製品カテゴリーではヘッドセットということになるだろう。
気になるのは減音の仕組み。開発に携わるキヤノンマーケティングジャパン コンスーマ事業戦略本部コンスーマ新規ビジネス企画部 ichikara Labの紅村茉友 氏は「まだ詳しくお話しできないが、独自の構造で減音している。しかし、ノイズキャンセリングイヤホンのような電子的な処理は一切していない」という。内側の構造はまだ公開できないとのことだったが、ちらっと見えたところでは、シリコンのような柔らかな枠が口を覆うようになっており、その先に何らかの構造上の工夫がなされているようだった。ムレ防止のため、ファンも内蔵する。しかし、マイク近くにファンがあれば、どうしても音声にノイズが入ってしまう。この音をどうやって軽減するかはまだ開発の途上だという。発売時期については「できるだけ早く発売したい」(紅村氏)としているが、具体的な日程はまだ決まっていない。
マスク型デバイスといえば、ダイソンの空気清浄機付きヘッドホン「Dyson Zone」を思い出す。「なんでまたヘッドホンに空気清浄機?」と思ったが、大気汚染の激しいインドのムンバイや中国の天津のように、もやがかかったような空気で、視界もろくに確保できない環境では威力を発揮しそうだ。しかし、少なくとも日本にいる限り、今時そんなひどい大気汚染に苦しめられることは希だ。ウイルス除去効果を期待して購入する向きもあろうが、コロナ禍がほぼ終息した今となっては、ほとんど無用の長物になりつつある。しかし、減音マスクなら断然ニーズはありそうだ。
オンライン会議で相手がマスクをしていると、ちょっとがっかりしてしまう。口元の表情は重要な情報の一つ。ただでさえ情報量が限られるオンライン会議。表情ぐらいは見えていたい。減音のためにマスクが必要なら、せめて相手にはバーチャルな処理で口元がアニメで見えるようにする工夫があってもいい。いろんなバリエーションから口元を選べればなお楽しいだろう。今のところそんな計画はないというが、検討の価値はあると思う。もしこのアイディアを取り入れるのなら、是非ともカッパの口元を初期バリエーションの一つに採用していただきたい。(BCN・道越一郎)