シングルマザーになり、つきっきりで病気の息子を世話しながらもなんとか過ごしていた女性。カタツムリがその生活を一変させた(画像は『Kris Buckley 2020年5月30日付Instagram「#Schneckengang」』のスクリーンショット)

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先天性の病気を持つ息子を世話しながら、経済的にギリギリで過ごしていたドイツに住むシングルマザーは、息抜きのためにカタツムリを飼うことにした。そのカタツムリの動画をTikTokに投稿すると大きな注目を集め、カタツムリの繁殖ビジネスを始めた女性は、その収入だけで生活できるようになったという。英ニュースメディア『The Sun』などが伝えている。

ドイツ南部バイエルン州ミュンヘン市に住むクリス・バックリーさん(Kris Buckley)は7年前、息子のミラン君(Milan)を出産した。先天性の病気である腹壁破裂を抱えて生まれてきたミラン君は、腹壁に開いている穴を塞ぐ手術を行うために、生後9か月まで入院していたという。

手術や入院の費用がかさんだが、クリスさんの夫は収入をすべてギャンブルに費やしており、最終的にクリスさんや子どもたちを捨てて家を出て行ってしまった。

クリスさんは働いて治療費を稼ごうとしたが、ミラン君につきっきりで世話をしていたことや、もう1人息子がいたためにフルタイムの仕事はできなかった。国からの補助金や教会から食べ物の寄付を受けたりしながら、クリスさんは2人の子どもを養うためにギリギリで生活していた。

子どもたちの世話ばかりで疲れ始めたクリスさんは、「気分転換のためにも、何か自分の趣味を見つけなければ」と考えていた。その中でペットを飼うことを思いつき、犬や猫よりも手がかからないカタツムリを飼うことに決めた。

クリスさんは「これまで私の人生は、ずっと他人の世話をすることばかりでした。自分だけの物すら持っていなかったので、カタツムリを飼うのはとても魅力的でしたね。カタツムリは細やかな世話を必要としませんし」と当時を振り返った。そしてこの決断が、クリスさんの人生を大きく変えるきっかけになった。

早速、クリスさんはアフリカマイマイ(African land snails)という種類のカタツムリを飼うことに決め、テラリウム(飼育用の容器)と合わせて60ユーロ(約9400円)で購入した。アフリカマイマイは、体長最大20センチとなる大型のカタツムリで、10年以上も生きることができるという。公開されている写真には、片手に収まり切らないほど大きなカタツムリを手にするクリスさんの姿が確認できる。

「今の自分には、何か責任を負う必要がないものが必要だと思って、カタツムリをペットにしようと思いました。カタツムリは放っておいても幸せなんです」と、クリスさんはカタツムリをペットにした理由の1つを説明した。

そしてクリスさんは長男の勧めもあり、2019年にカタツムリの様子を撮影した写真や動画をTikTokに投稿し始め、わずか2つ目の動画で大きな注目を集めた。「本当にすぐ話題になりましたよ。毎日何千もの人が、カタツムリについて私に質問するのです。私はあまりオープンな人間ではないので、不思議な感じがしましたね」と、一気にインフルエンサーとなったことにクリスさんは少し戸惑いを覚えたという。

それから2年後、クリスさんはカタツムリの繁殖ビジネスを始めた。自分の寝室を片付けてカタツムリの飼育スペースにし、ビジネスが軌道に乗って専用オフィスができるまでの1か月間はヨガマットの上で眠っていた。「稼いだお金は、すべてカタツムリの飼育に再投資します」と話すクリスさんは、今では500種類を超える5000匹以上のカタツムリを飼育している。この事業が大成功したことで、現在は国からの補助金を受け取る必要はなくなり、カタツムリの繁殖だけで生活できているという。

3人の従業員と共にビジネスを展開するクリスさんは、自身のビジネスが成功した理由について「カタツムリを販売している他の業者は、ネット上でくだらないことばかりしていて、DHL(配達会社)で送るからカタツムリはケガをしたり、死んでしまった状態で届くのです。それで、自分でやるしかないと思いました」と話す。

「私の人生は大きく変わりました。カタツムリが私の人生を救ってくれたのです」と感謝を口にするクリスさんは、カタツムリ愛が高じて、カタツムリへ捧げる歌を作ったという。近日中にリリースされると言い、現在TikTokで約18万人のフォロワーを抱えるクリスさんは「みんながどんな風に反応するのか、楽しみですね」とコメントしている。

画像は『Kris Buckley 2020年5月30日付Instagram「#Schneckengang」、2023年4月22日付Instagram「Snails & Nails - Günther we Love u」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)