選手の移籍に絡んだ賄賂の存在を追及し、ボルトンのサム・アラダイス監督など、複数のサッカー関係者を告発した『BBCテレビ』のドキュメンタリー番組について、アーセナルのアーセン・ベンゲル監督は否定的な考えを示した。

 不正行為については厳しい処分を求めるベンゲルだが、おとり取材など、一方的な情報に基づく糾弾の手法に、「まるで15世紀の魔女狩りだ」と番組を非難した。

「誰であろうと、不正行為を働いた者は厳しく処分されるべきだ。しかし私は、今回のような“メディアの正義”については否定的な考えを持っている。彼らは、関係者に反論の機会を与えない。有無を言わさず人々を裁いた15世紀を連想させられるね。番組のやり方がフェアだとは思えない」

 また、まもなくアーセナルの監督就任10周年を迎えるベンゲルは、自らの関与を否定している。

「先日数えてみたら、私は10年間で150程度の移籍に関わってきた。しかし、一度だって賄賂の申し出を受けたことはない。そういう話は聞いたことはあったが、自分が関わったことがないから、詳しいことは分からない。ただ、証拠もなしに裁くのは、やはり間違いだ。長年この世界で尽力してきた人々に対して、あまりにもアンフェアだと思う」

 ベンゲルの言葉を裏づけるように、番組内で関与を指摘された関係者やクラブの一部が、『BBC』に対する法的措置の検討をはじめている。また、いまだ情報提供に応じない番組側に対し、イングランド・サッカー協会が不快感を表明するなど、波紋は各方面に広がっている。メディアが仕掛けたサッカー界の“魔女狩り”には、これからも多くの注目が集まりそうだ。