8月15日、ラグビー日本代表チームが会見を開き、ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)がひとりずつ読み上げる形で、ラグビーワールドカップ(9月8日開幕)に臨む最終登録メンバー30名(FW15名、BK15名)を発表した。


一番のサプライズ選出は34歳のレメキ ロマノ ラヴァだ

【日本代表登録メンバー30名】
<FW=15名>
稲垣啓太(PR 埼玉パナソニックワイルドナイツ/33歳)
クレイグ・ミラー(PR 埼玉パナソニックワイルドナイツ/32歳)★
シオネ・ハラシリ(PR 横浜キヤノンイーグルス/23歳)★
具智元(PR コベルコ神戸スティーラーズ/29歳)
垣永真之介(PR 東京サントリーサンゴリアス/31歳)★
ヴァル アサエリ愛(PR 埼玉パナソニックワイルドナイツ/34歳)
堀江翔太(HO 埼玉パナソニックワイルドナイツ/37歳)
坂手淳史(HO 埼玉パナソニックワイルドナイツ/30歳)
堀越康介(HO 東京サントリーサンゴリアス/28歳)★
ジェームス・ムーア(LO 浦安D-Rocks/30歳)
ジャック・コーネルセン(LO/FL 埼玉パナソニックワイルドナイツ/28歳)★
ベン・ガンター (FL 埼玉パナソニックワイルドナイツ/25歳)★
姫野和樹(FL トヨタヴェルブリッツ/29歳)
福井翔大(FL 埼玉パナソニックワイルドナイツ/23歳)★
リーチ マイケル(FL 東芝ブレイブルーパス東京/34歳)

<BK=15名>
齋藤直人(SH 東京サントリーサンゴリアス/25歳)★
流大(SH 東京サントリーサンゴリアス/30歳)
福田健太(SH トヨタヴェルブリッツ/26歳)★
李承信(SO コベルコ神戸スティーラーズ/22歳)★
松田力也(SO 埼玉パナソニックワイルドナイツ/29歳)
小倉順平(SO/FB 横浜キヤノンイーグルス/31歳)★
長田智希(CTB 埼玉パナソニックワイルドナイツ/23歳)★
中野将伍(CTB 東京サントリーサンゴリアス/26歳)★
中村亮土(CTB 東京サントリーサンゴリアス/32歳)
ディラン・ライリー(CTB 埼玉パナソニックワイルドナイツ/26歳)★
ジョネ・ナイカブラ(WTB 東芝ブレイブルーパス東京/29歳)★
シオサイア・フィフィタ(WTB トヨタヴェルブリッツ/24歳)★
セミシ・マシレワ(WTB 花園近鉄ライナーズ/31歳)★
レメキ ロマノ ラヴァ(WTB NECグリーンロケッツ東葛/34歳)
松島幸太朗(WTB/FB 東京サントリーサンゴリアス/30歳)

★=ワールドカップ初選出
※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)

【予想外に多く選ばれたBK陣】

 前回大会より3名増えて、今回のワールドカップには33名が登録できるようになった。ただし現在、日本代表チームは複数のLOがケガを抱えており、さらにはフィジー代表戦でレッドカードを受けたFLピーター・ラブスカフニ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/34歳)が何試合の出場停止になるか未定なため、それらを見極めてから残り3名のFWを発表する。

 おそらく、ラピースを含めて夏の5連戦で大活躍したLO/No.8アマト・ファカタヴァ(リコーブラックラムズ東京/28歳)、2019年ワールドカップ組のLO/FLヘル ウヴェ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/33歳)、身長202cmのLOワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京/21歳)、成長著しいFL/No.8下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス/24歳)あたりから3名が選出されそうだ。

 ラグビー日本代表は6月から合宿を敢行し、7月から8月にかけての国内5連戦を行なったが、結果は1勝4敗。その内容から「この5試合で活躍した若手や、中軸となっている2019年ワールドカップ組は順当に選ばれるだろう」と予想されていた。

 ジョセフHCは6月の合宿から日本代表36名を絞って発表していたため、サプライズはほとんどないと思われていた。しかし、その予想はやや裏切られた結果となった。

 ワールドカップの予選プールでは、チリ代表、イングランド代表、サモア代表、アルゼンチン代表と、FWの強いチームと対戦する。そのため、33名のバランスは「FW19人、BK14人」もしくは「FW20名、BK13名」もあるのでは......と予想されていた。ところが、いざフタを開けてみると「FW18名、BK15名」(残り3名をFWから選ぶ予定としての人数)だった。

「日本のラグビーは、誰がコーチを務めているかは関係なく、速いプレー、ボールを持って戦うプレー、真のアタッキングマインドを常にアイデンティティとして持っている」

 会見でジョセフHCが話したように、やはりラン、パス、キックで「ボールを動かすラグビー」を主軸に世界と勝負する心づもりのようだ。

 BK陣の選手層に厚みを持たせたのは、そのためだろう。フィジカルの強い中野将伍を入れてCTBを4名、さらにはWTBにも夏の5連戦には出場しなかったが昨季までレギュラーだったシオサイア・フィフィタを選ぶなど、充実した顔ぶれとなった。

【最終スコッドに滑り込んだ2名】

 スペシャリストである左右のPR、HO、そして9番SHと10番SOのハーフ団、計5つのポジションで3人ずつ選ぶとすでに15名。残り6つのポジションは18名でカバーしなければならない。

 今大会はフランスで開催されるため、ケガ人が出た時もポジションの補充に時間がかかる。そのため、残り6つのポジションに関してジョセフHCは「ひとつのポジションに専念しながらも、別のポジションでもプレーできる能力を持つ選手を選んだ」と語る。つまり、前回のワールドカップでも重視した「ヴァーサティリティ(万能性)」を評価したセレクションとなった。

 そのような背景もあって、今回の選出において「最大のサプライズ」となったのが、第二次ジョセフ体制(2019年ワールドカップ後)で2年前(2021年10月vsオーストラリア戦)に1試合しか出場していないWTBレメキ ロマノ ラヴァが最終スコッドに滑り込んだことだ。

 また、今年7月のオールブラックスXV戦で25分しか出場していないSO/FB小倉順平も、FBでプレー可能な「3人目のSO」としてスコッド入りした。

 その一方で、驚きの落選もあった。この3年間ずっとコンスタントに出場してきたベテランFB山中亮平(コベルコ神戸スティーラーズ/35歳)が憂き目を見たことだ。

 このサプライズ選出と落選に関して、ジョセフHCはしっかりと理由を答えた。まず、レメキを選んだ理由について。

「レメキは前回のワールドカップ以降、日本代表としてほとんどプレーしていないが、グリーンロケッツ東葛ではSO、FB、CTBとしてチームを支えていた。マシレワはWTBもFBもできるし、長田もWTBやCTBでプレーしている。ワールドカップで真価を発揮するのは、彼らの高いヴァーサティリティである。私たちが求めているのは、そういう選手なのです」

 セブンズ日本代表としてリオ五輪で大活躍したのち、レメキは15人制に専念して前回のワールドカップで活躍した。その後、選出されなかった時期は「自分は代表でWTBとしか見られていないので、代表に戻るにはいいプレーが必要」と答えていたが、昨季はFBを中心に躍動したことにより、さまざまなポジションをカバーできる選手として再評価されたわけだ。

【落選した山中が心境を語った】

 山中の落選についても、ジョセフHCは丁寧に説明した。

「ワールドカップの規定(選出人数33名)なので、誰かをあきらめないといけない。FBのファーストチョイスは松島だ。さらに、チームが勝ち上がって毎週負傷者が出ても、マシレワとレメキがいればそのカバーはできる。

 この数年、日本代表のためにたくさんプレーしてくれた山中のようなすばらしい選手がセレクションから外れたのは、本当にアンラッキーだった。私たちがリスペクトしている選手であることは変わらない。

 山中はFBとして評価している。だが、10番としては評価できない。練習で少しプレーしただけでいいわけではない。だから、彼を連れて行って適切な準備もなしにプレーさせるのは、彼にとってフェアなことだとは思えない。そして残念ながら、その準備はできなかった」

 指揮官として、苦渋の選択だったことがうかがえる。

「今大会で日本代表は最後」と公言していた山中は、今回の落選を受けて自身のX(旧Twitter)で心境を述べた

「この1週間いろいろ考えて このまま諦めるのは性に合わないので 山中は、2027年のワールドカップを目指します。自分に何が足りなかったのか。もう一度自分を見つめ直す。年齢とかそんなん関係ない。できるできへんじゃなくて やるかやらんか。ラグビー人生、第3章のスタートです。」(原文ママ)

 今回のワールドカップ登録メンバー発表では、悲喜こもごものドラマがあった。山中が「代表のメンバーのことが大好きです。選ばれたメンバーは怪我なく いい結果を残せるように頑張って!」とエールを送ったように、選ばれた選手はメンバー外になった彼らの思いを胸に、前回大会の結果を越えるべくワールドカップ本番に臨んでいく。