ロサンゼルスで会見に出席した新田真剣佑(写真:REX/アフロ)

 2023年4月に公開された、映画『聖闘士星矢The Beginning』。主演は新田真剣佑、日本の人気漫画をハリウッドが実写化した期待作だった。新田の本格ハリウッドデビュー作であり、今後の海外進出における重要な鍵になると見ていた映画ファンも多かったが……。

「映画興業において最も重要とされる公開初週で、『聖闘士星矢』は国内観客動員数ランキング8位という結果でした。さらに2週めのランキングから圏外に……。日本発信の作品にもかかわらず、話題にのぼることはほとんどなく、各社で “爆死” と報じられています」(映画関係者)

 同時期に公開された『スーパーマリオ』は世界的にヒットし、全世界の興行収入でアニメ映画の歴代2位に上りつめた。新田真剣佑としては相手が悪かったというほかないが、『聖闘士星矢』の日本での興行収入は、世界累計でも10億円に届かなかったといわれている。

 こうした状況で大打撃を喰らったのが、出資元である「東映アニメーション」だ。というのも、今作は制作こそハリウッドだが、出資は100%東映アニメーションで、その額は6000万ドル(80億円超)と報じられている。

 そんな大きな期待を背負った大作の “爆死” の悲痛が、2024年3月期第1四半期の決算短信に報告されている。

「同決算は、売上高こそ前年比1割程度の増益となっていますが、逆に営業利益は、20億9500万円(49%減)と半減しているんです。その要因は『聖闘士星矢The Beginning』の棚卸資産の評価損と明記されています」(同)

 営業利益半減と書かれたこの短信を、濱崎税理士事務所代表の濱崎幸将氏が解説する。

「要するに『この作品で製作費の回収はできないと判断し、損失として処理した』ということです。

 ここでいう “棚卸資産” というのは、『聖闘士星矢』の製作費を指すと思われます。通常はこの棚卸資産は、興行収入をはじめとする実際の売上に合わせて、『売上原価(売れた商品の仕入れや製造にかかった費用)』として計上されるものです。

 ところが、今回は売上原価に計上せずに『評価損』、つまり製作費の回収が見込めないものとして損失があった、とされています。このことから、今後の売上を見込めないと東映アニメーションが判断したことがわかります」

 濱崎税理士は、前年比で半減した営業収益の原因は、間違いなく『聖闘士星矢』の失敗にあると語る。

「同社は『ONE PIECE』『ドラゴンボール』『スラムダンク』『プリキュア』シリーズといった有力な作品群を抱えています。そこからの安定的な収益の確保・拡大を図った結果、第1四半期における売上高は、前年同期比10.1%増という結果を出しています。そちらは決して “失敗” していないのです。

 にもかかわらず、『聖闘士星矢』の失敗で、営業利益が前年比49.0%減になったほか、親会社に帰属する純利益は31億2000万円で前年比22.4%減となっています。今回の決算短信を読む限り、他の作品の貢献をかなり打ち消していると感じました。

 全体の利益は確保しているので、会社全体が苦しんでいるほどとは思いません。とはいえ、株主の失望は避けられず、会社としても手痛い大コケをしたという大きな反省と危機感はあると思います」(前出・濱崎税理士)

 主演した新田真剣佑は、今後、ネットフリックス版『ONE PIECE』の配信が控えている。こちらも「人気漫画原作」「海外での実写化」「新田が主要キャラとして出演」「東映アニメーションが版権所有」と、『聖闘士星矢』との共通点が多々ある。

 今度こそ、新田の活躍が決算に反映できるとよいのだが……。