●子どもの学習に使われる10.1型デタッチャブルPC

Dynabookの「dynabook K1/V」は、10.1型ディスプレイを搭載する2in1 PCだ。クラムシェルスタイルとタブレットスタイルの形態は、ディスプレイを含むシステム本体とキーボードユニットを分離させることで変更できる。

着脱式2in1 PCのdynabook K1/V

dynabook K1のWebページで子供が使っているシーンを多数掲載しているように、主に教育現場、それも小学校や中学校などの児童生徒に対する利用を想定している。そのため、主な需要としては学校での一括導入になると思われる。

ただ、それら多くの教育現場ではPCの管理が厳しく、学校外への持ち出しは禁止とするケースも少なくないため、家庭学習用に学校で使っているのと同じPCを用意したいという需要も少なからず発生しそうだ。

そして、そのPCが、そのまま子供にとって初めての専用PCとなることが多い。それどころか、世帯としても唯一のPCとなることも十分にありえる(総務省の情報通信白書令和三年版によると、世帯保有率はスマートフォンが9割近くなのに対し、PCは7割程度となっている)。

以上の状況を鑑みて、教育現場向けのPCという特定の目的に向けて開発されたであろうdynabook K1/Vではあるものの、「それを使う子供にとって初めての専用PC」「もしかすると世帯にとっても唯一のPC」という想定の下、このレビューでもまずは通常のPCと同様の視点から評価し、その上で、教育現場、特にDynabookのWebページで訴求している小学校での活用にdynabook K1/Vは適しているのか否かを考えてみたい。

本体デザインは子供向けPCでありがちな“カラフルなプラスチック”感ではなく、ビジネスでも似合いそうなメタリックの質感を施している。天面には有効500万画素のアウトカメラを組み込んでいる

○ビジネス向けっぽい外観、キーボードは着脱可能

冒頭でも述べたように、dynabook K1/Vは分離式(デタッチャブル)の2in1 PCだ。そのため、携行利用としては、キーボードユニットを取り外した本体だけのタブレットスタイルを評価していこう。

タブレットスタイルにおける本体の重さは610gで、Windowsタブレットとしては平均的な値だ。ただ、iPadやAndroidタブレットの同サイズディスプレイ搭載モデルと比べると200g近く重くなる。

たった200gと思うかもしれないが、タブレットのスタイルで、かつ、いまとなってはPCより利用者が多いAndroidやiPadOS製品の重さに慣れている多くのユーザーからすれば、「見た目より重い」と認識されてしまうのはやむを得ない。

ただし、フットプリントの面積を比べると同じサイズのディスプレイを搭載しているだけあって、幅が250mm弱、奥行きで180mm弱とほぼ同等のサイズに収まっている。

ディスプレイとシステムボードを収めた本体とキーボードユニットに分かれる着脱式となっている

評価機の重さはキーボードユニットを接続した状態で1118gだった

タブレット状態の重さは実測で566g

●画面とインタフェース、キーボードは?

○画面サイズと解像度のバランスよし、ペンは附属しない

dynabook K1/Vのディスプレイ解像度は1,280×800ドットだ。現時点では同サイズディスプレイを搭載するWindowsタブレットでも解像度が1,920×1200ドットのモデルが多くなってきている。

また、Windows対応アプリケーションの画面レイアウトやWebページのレイアウトも、高解像度表示が前提となったものが増えてきており、1,280×800ドットでは窮屈な使い勝手と感じるケースも少なくない。

ただ、一方で10.1型ディスプレイの横方向解像度が1,920ドット以上のディスプレイでタッチ操作をしようとすると、スケーリング設定を大きくしないと目的のアイコンやボタンをタップできなくてストレスを感じる機会が増える。これは特にスタイラスペンがなくて指でタップすることを強いられる状況では顕著になる。

その点、1,280×800ドットの解像度ならスケーリング倍率が小さくなるのでアイコンやWindowsのウィンドウ各パーツのサイズが大きいままとなり、タップ操作がストレスなくできる。

加えて、dynabook K1/Vには本体にペンホルダーに相当するものもなければ標準構成でスタイラスペンも付属しない(オプションで専用充電式アクティブ静電ペンを用意している)ため、どうしても指でタップすることが多くなる(とはいえ、スタイラスペンの紛失を防ぐために標準装備としないのは正しい判断だろう)。

それを考慮すると、dynabook K1/Vの1,280×800ドットという解像度は教育現場のタブレットの使用としては至極妥当といえるだろう。

解像度は1,280×800ドットで横縦比は16:10と、フルHDと比べて縦方向の表示量が多い

ディスプレイは最大で約123度(実測)まで開く。座高が小さい小学生なら本体を膝にのせて開いても角度的に問題ないだろう。成人が同じ体勢で使うには角度がやや浅い

○本体にUSB 3.1 Type-Cを、キーボードにUSB 2.0 Type-Aを搭載

本体にはインタフェースとして、タブレット側にはUSB 3.1 Gen1 Type-Cを1基とヘッドホン/マイクコンボ端子を備え、キーボードユニット側には左右両側面にUSB 2.0 Type-Aを1基ずつ用意している。

Type-CにしてもType-Aにしても対応する規格が旧式だが、接続するのが主にUSBメモリで扱うファイルがサイズの小さい低解像度の静止画や低レートの動画の移動であるならば使い勝手としては支障ないだろう。

左側面には本体側にACコネクタを、キーボードユニット側にUSB 2.0 Type-Aを備える

右側面には本体側に電源ボタンと音量調整ボタン、USB 3.1 Gen1 Type-C、ヘッドホン・マイク端子を、キーボードユニット側にUSB 2.0 Type-Aを搭載する

○通信はWi-Fi 5とBluetooth 5.1を利用可能

無線は、IEEE802.11acまでカバーするWi-Fi 5とBluetooth 5.1を利用できる。また、タブレット本体にはディスプレイ側に有効200万画素のインカメラと、背面側に有効500万画素のアウトカメラを組み込んでいる。

搭載カメラの画素数が少ないと思うが、これも撮影した画像を表示するディスプレイの解像度に見合った画質を求めるのであるなら十分だ。

印刷もA4程度までなら問題ないだろう。ただ、校外学習などで撮影した画像を使って、巨大な模造紙で夏休みの宿題など発表会資料を印刷したい場合は解像度が足りず、カクカク画像となりかねないので注意したい。

正面

背面

○キーボードの打鍵は軽め、ストレスなく打てる

キーボードはキーピッチが17mm(キートップサイズは実測で13.7mm)、キーストロークを1.2mm、それぞれ確保している。

タイプの感触は軽いものの、キーボード部分の厚さも実測で約7.2mmあるので、着脱式2in1 PCのディスプレイカバータイプキーボードにありがちな「音楽の教科書の裏表紙に印刷された鍵盤を弾く」ような物足りなさでストレスを感じることはない。ただ、キーボードユニットの強度が華奢で、力強くタイプすると打鍵音が響く。

17mmキーピッチ。イマドキとしてはやや窮屈かもしれないが主要なユーザーとして想定している小学生なら使いやすいかもしれない

キーストローク1.2mmを確保している

●Celeron N4020搭載、ベンチマーク結果は?

○一般的なノートPCと比べると処理能力は低め

dynabook K1/VのCPUには、Gemini Lake Refresh世代の「Celeron N4020」を搭載している。

登場したのは2019年第四半期と時間が経っているだけでなく、内部のアーキテクチャとしても14nmプロセスルールで2017年12月にAtom向けとして登場したGoldmont Plusの採用となる。加えて、同時期に登場した省電力CPUのラインアップの中でも最も下位に位置するモデルだった。

Celeron N4020はCPUコアを2基組み込んでいる。このコアはマルチスレッドに対応していないためCeleron N4020として同時処理できるスレッドの数も2本までだ。TDPは6W。グラフィックス処理にはCPU統合のIntel UHD Graphics 600を利用し、演算ユニットは12基で動作クロックは650MHz。

その他の処理能力に影響するシステム構成を見ていくと、試用機のシステムメモリはLPDDR4-2400を採用していた。容量は4GBで、ユーザーによる増設はできない。ストレージは容量128GBのフラッシュメモリだ。

Celeron N4020を搭載したdynabook K1/Vの処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、3DMark Night Raid、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark 8.0.4 x64、そしてファイナルファンタジー XIV:漆黒のヴィランズを実施した。

CPU-ZでCeleron N4020の仕様情報を確認する

ベンチマークテストを走らせてそのスコアを並べてみたものの、その値は、近年のレビュー記事で掲載しているCoreプロセッサやRyzenプロセッサを搭載したPCのスコアと“別次元”といっていいほど大きく異なる。PCMark 10でいうと全項目でほぼ5分の1、3DMark Night Raidで約15分の1程度だ。Webページの表示や挙動も明らかに重いし、1,280×800ドットという解像度は複数のWebページを開くには狭い。

個人のメインPCとして市販の汎用WindowsアプリやPCゲームを実用的な速度で動かすには、アプリの表示関連設定を軽くなる方向でカスタマイズする必要があるだろう。

○家庭用の学習支援に、向き不向きを理解した上で検討したい

ここまで、dynabook K1/Vの使い勝手と処理能力について“日常使いのPCと同じ目線”で評価してみた。製品の開発意図からすれば、ある意味アンフェアとは思うが、2023年の上半期に登場するPCに求められる一般的な使い方は向かず、用途を割り切る必要がある。

汎用アプリの処理速度は、特にファイル関連処理で時間がかかり画面は狭い。日本語入力の漢字変換で体感でわかるほど待たされるときもある。ビジュアル効果満載の最新PCゲームを実用的な速度でプレイすることも向かない(教育用PCとしてはかえって望ましい、と思ってしまう大人がいるかもしれないが)。

一方で、教育現場における学習支援機器として使用し、かつ、その目的とdynabook K1/Vの能力を考慮して用意された専用のアプリケーション(それは、dynabook K1/Vの限られた処理能力と解像度でも実用的なこと)を使うのであれば問題とはならないはずだ。

子どもの利用を前提とした頑丈さも特徴で、100kgf面加圧試験・76cm落下試験・30cc防滴試験といった耐久試験をクリアしている。制約を理解した上でdynabook K1/Vを使うならば、有力な“教材”(または家庭用バックアップ)となるだろう。

dynabook K1/Vを導入する学校の先生(もしくは管轄自治体の教育委員会)や親御さんには、dynabook K1/Vで使えるアプリやWebページを用意した上で、授業や家庭学習で有意義に使ってもらいたいと切に願う次第だ。

ACアダプタのサイズは実測で89×36.2×26.4mmで重さは169g