デカいのもセダン風も「ミニバン」!? 定義広すぎな分類が生まれたワケ ″先駆け″どのクルマ?
「ミニバン」とされるクルマは大小はじめ多様な車種が該当していますが、実際どういったクルマを指す言葉として生まれたのでしょうか。
ミニバンという概念はいつ誕生?
「ミニバン」とされるクルマは、トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」や日産「エルグランド」といったいわゆるLクラスミニバンから、トヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」などのコンパクトミニバンまで、サイズも見た目も異なる様々な車種があります。そもそも「ミニバン」とはどういったクルマを指す言葉で、「ミニでないバン」との違いはあるのでしょうか。
日産「セレナ e-POWER」(画像:日産自動車)。
自動車販売の業界団体である日本自動車販売協会連合会はミニバンの定義について、メーカーごとにどういったクルマを指すのかが違うため、協会では「セミキャブワゴン」と呼んでいるとか。「車高が高く、ボンネットが少しあり、3列シートを有する」という面で、ワンボックスワゴンなどとの違いがあるといいます。ただ各社の「ミニバン」は、2列シートのものでもそう呼ばれることがあり、バラエティが豊かになっていきます。
自販連のいうセミキャブワゴンは、「RV(レクリエーショナル・ヴィークル)」のひとつとして分類されているといいます。その先駆けとなる1982(昭和57)年発売の三菱「パジェロ」では、まだミニバンという言葉は聞かれませんでした。
「ミニバン」という言葉が使われるようになったのは1990年代ごろから。1994(平成6)年発売のホンダ「オデッセイ」などで「ミニバン」という売り方をされるようになってきたようです。
もともと、アメリカで売られているバンを意識したうえで、日本人の体格や生活スタイルに合わせて小さくしたのを「ミニバン」と称するようになった、と自動車事情に詳しい評論家は話します。その中でも「ミニバンの先駆者」とメーカー自ら名乗っているのが、1982(昭和57)年に発売された日産「プレーリー」です。
世界初のセンターピラーレス構造を採用した後席スライドドア車で、前席ドア(ヒンジ)と後席スライドドアをともに開けば大開口部を作り出すことでき、荷物の出し入れを容易にしました。さらに3列シート8人乗りながら内部の居住性を確保。それをワゴンではなく「セダンからの進化形」をうたい、一般市民の日常使いに焦点をあてたクルマとして生み出したのです。その後プレーリーは2004(平成16)年に後継車「ラフェスタ」となります。
なお日産は、ワゴン・バンから派生したミニバン「セレナ」を1991(平成3)年に発売。2代目で今やミニバンの当たり前の装備である両側スライドドアが採用されています。
どちらもファミリー、アウトドア向けのものとして開発されましたが、アプローチの仕方は別々。このような背景が「コンパクトなミニバン」「デカいミニバン」の差を生んだと言ってもいいでしょう。