セルフのガソリンスタンドで給油する際、満タンになった時点で「カチン」と音がして、給油が自動的に止まります。あれはどういった仕組みなのでしょうか。

セルフ給油おなじみの「満タンストッパー」

 セルフのガソリンスタンドで給油する際、満タンに気づかず吹きこぼれることはありません。というのも、満タンになった時点で「カチン」と音がして、給油が自動的に止まるからです。あれは一体どういった仕組みなのでしょうか。


給油ノズルのイメージ(画像:写真AC)。

 給油ノズルを製造販売するメーカーにたずねたところ「ノズル内にセンサーがあります」と話します。

 ノズルの先端には「検知口」と呼ばれる穴があり、持ち手付近まで小さなパイプが伸び、普段は中を気流が通っています。

 満タンになると検知口がふさがれ、パイプ内の気圧が低下します。すると持ち手のレバーを支えていたパーツが負圧に引っ張られて解除され、レバーは「ぶらんぶらん」の状態になり、ノズルの弁を開ける力を失って給油がストップする、という仕組みです。この状態はノズル部分をスタンドへ戻さないと解除されなくなっています。

 この機構は1998(平成10)年当時にセルフ給油所の普及にともない、事故をふせぐために消防庁が「満了停止制御装置」として、導入するよう通達を出しています。

「もうちょっと」その足し方が一番危険

 ところで、満タンを検知して給油が自動ストップしたはいいものの、まだもうちょっと入りそうだと、わずかな流量で「ちょい足し」給油をする人もいるようです。給油機器の関係者は、この「ちょい足し」行為こそが一番危険だと口を揃えます。

「先述のとおり、給油停止センサーは、先端の検知口が燃料でふさがれることで発動する仕組みです。ノズルをしっかり挿し込まずに給油する『ちょい足し』をおこなうと、センサーが働かなくなっていしまい、非常に危険です」

 これは最初から給油開始する場合も同じで、ノズルをわざと浮かし気味にしたり、給油口から離して燃料の噴出する勢いで間接的に注ぎこむような方法 は、やはりセンサーが無力になり、いつか吹きこぼれを引き起こすことになります。

 そして、ちょっとした吹きこぼれでも、静電気などを原因として着火、炎はあっという間にこぼれた染みを伝ってガソリンタンク内へ引火することとなります。消防庁が公開しているガソリンスタンドでの火災事故の原因は、いろいろな燃料漏れに対して、大半が最終的にどこからかの「静電気」で着火に至っていることがわかります。

 タンクが一見満タンに見えないのは 、車種によってタンクの形状が異なり、ノズルセンサーの位置にそれぞれ誤差が生まれるからといいます。とはいえその誤差は0.5%程度とのこと。わずかな給油量の差を気にしなくていいよう、普段から余裕を持ったこまめな給油を心がけましょう。