おかえりGIFT!おかギフ!

より美しく、より磨かれて、物語が帰ってきました。羽生結弦氏東京ドームソロ公演、「Yuzuru Hanyu ICE STORY 2023  “GIFT”」が本人解説や舞台裏映像を含む特別版としてディズニープラスで再び配信されたのです。撮って出しで公開されていたときよりも高音質・高画質・追加映像と格段の進化と向上を経て完成した、まさに「決定版」と言える内容。早速僕も週末のグラマラスなごほうびとしてGIFTの視聴を楽しみました。改めてすごい贈り物だったと胸熱くなる想いです。

↓いい物語は何度でも見たくなる!宮崎駿監督作品のように、GIFTを繰り返し見ることになる人生が帰ってきた!

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今回は何と言っても羽生氏本人による解説があるということで、GIFTの物語を掴むヒントがあるのではないかと楽しみにしていました。ですので、すぐさま追加映像を見たいという気持ちもあったわけですが、その解説を受け止めるためにもまずは久々の本編を改めて見ていくことに。高音質・高画質で仕上がったGIFTは映像編集も含めてより完成度が高まっており、まるで初見のような気持ちで楽しむことができました。

「ここでお顔を…そう…」「ここは横からがよき…そう…」「ここは天井から…いいね…」「ここはあえてドームの天井を引きで映して…いいね…」など、単に流れを追うというよりも、伝えようとした世界を改めて受け止めることができるように編集し直された映像は、じっくりと時間をかけた甲斐のある仕上がりです。異例かつ斬新な40分休憩が秒でワープしていたことは、少し寂しいような気持ちもしましたが、かつて見たものが「ライブ」だったとすれば、これから見ていくものが「作品」ということ。あの日の思い出は胸に残して、「GIFT」を噛み締めていきたいと思います。

さて、公演本編の凄さを改めて堪能したのち、いよいよ追加映像部分へ。まずは舞台裏でのスタッフの皆さんへのご挨拶や、労いの花束を受け取る場面などに胸震わせつつ、公演翌日に収録されたというインタビュー映像へ移っていきます。インタビューに臨む羽生氏は、いわゆる「ファン」の感想だけではなく、初見の人やエンタメ好きの人からの感想にも手応えを感じている様子で、公演直後ならではのフレッシュな想いが語られていきます。

そして、核心に迫る解説部分では、早速ひとつの気づきを得ます。公演本編でも何度も繰り返し表現された部分ではあるのですが、GIFTという物語は「陽と陰」「夢と現実」「”僕”と僕」といった二面性の物語である模様。羽生氏はGIFTの総論として「みんなからいただいた夢(GIFT)からチカラをもらってともに生きている」ことを表現しているとしつつ、「ホントに独りぼっちだって思う人は世のなかにいて」「ホントに独りぼっちだと思っている人にもちゃんと味方はいるよ」と、この公演やそこで描かれた物語・プログラムがそういう人の夢になればいいということを加えます。「GIFT」は羽生氏がもらったものでもあり、羽生氏が贈るものでもある、両方の側面があるのです。

そして、1部と2部の構成自体もそうした二面性の仕掛けであった模様。前半部は羽生氏の半生を物語風にしつつ「ちょっと抽象的に書いてみた」ものであり、2部は1部の抽象的な表現とは逆に「もっとリアルに自分っていうものにフォーカスを当てて掘り下げていく」ことをしたというのです。つまりは、「1部のファンタジックさと2部のよりリアリティのある感じが最終的に融合してエンディングにつながればいい」という構成だったと明かしてくれました。これは何となく一本軸で見ていた自分の受け取り方がズレていたなということがわかりましたし、この見立てでGIFT全体がより明確になった気がしました。

二面性、それがカギだった。

1部は羽生氏の半生という、多くの人が事実ベースでつかんでいるものを軸にし、それをひとつのファンタジーな物語にしたと。2部はその内面で繰り返されていた葛藤を、自分自身のリアルな言葉で表現したと。言うなれば、1部は伝記で、2部は自伝です。どちらも同じ人物の同じ出来事を描いてはいるけれど、1部は見る人によってより幅広い解釈が可能な描かれ方で、2部はより直接的にその内実を吐露したものなわけです。1部でふんわりと「あれ?栄光の物語ではない…?」と初見の人を含めてGIFTの世界に引き込み、2部で本格的に「栄光だけの物語ではないぞ」と突きつける、そんな二段階の構えになっていたのかなと思います。大事なことなので角度を変えて2回言います、的に。

そうした二面性は各プログラムのなかでも掘り下げられていきます。「Let Me Entertain You」について、みんなを楽しませようとする演目に「ただ楽しませてるだけなのかこのプログラム?」という問いを重ねることで「ただの楽しさからちょっと変わるかな」という期待を寄せてみたり、「阿修羅ちゃん」について「曲めっちゃ楽しいのに、そんな楽しいこと言ってないあの子」と楽曲の本質を喝破することで、プログラムに「楽しいだけではない二面性」を内在させていきます。そして、その二面性を自覚することで、羽生氏自身も「楽しみつつも」「誰にも自分の本心はわかってもらえない」「透明のガラスのなかに閉じこもっている自分」という、自分自身の見えづらい本質に迫っていくかのようです。

その二面性について羽生氏は子どもの頃は誰しもが自然に持っていた夢というものを特に挙げながら、「みんな、ちゃんと対峙してない」「社会に生きていくなかで必要なくなってしまう」と指摘し、自分自身が4回転半という夢に向かってきたように、GIFTを見る人々自身のなかにも「みなさん実は持っているでしょう?そういう夢」「ちゃんと見てないだけで、ちゃんと認めてないだけで」と問い掛けます。透明なガラスのなかに閉じこもっている自分であり、本心であり、夢である、そういった自分のなかのもうひとりの自分自身を、社会に適合するなかで忘れたり、見失ったり、捨ててしまったりしていませんかと尋ねるのです。

その二面性的なものを象徴するプログラムこそが「オペラ座の怪人」です。GIFTのステージセットが巨大なオペラ座の怪人になったように、この物語のなかで特に重要な位置づけで起用されたこのプログラムは、この公演の核となる「気づき」の発端だったのでしょう。かつては自分がファントムになった気持ちで演じていたプログラムであったのに対して、自分のなかに美しき歌姫クリスティーヌ的なものも、彼女を守ろうとするラウル的なものも、醜い怪人ファントム的なものもすべてが存在することを認めたことで、「ひとりのなかですべてが行なわれる」プログラムにできる、そういう進化ができると気づいたのです。ファントムだけではない二面性が内在できる、そういう進化を。

キレイな自分も情けない自分も醜い自分もいて、その醜い本音が綺麗事を言う自分にも突き刺さるし、そういう醜い自分がいるからこそ夢へ向かうチカラも生まれる…そんな気持ちわかるような気がします。カッコよくて完璧な人よりも、無様でも懸命な人のほうが素敵に見えることがあるでしょう。勇気や元気をもらえることがあるでしょう。応援したくなることがあるでしょう。「陽も陰も」「夢も現実も」両方があることで、その人生には深みが生まれるのです。「羽生結弦」という栄光に満ちた存在に対しても、影を見い出すことによって、立体感が生まれるのです。そんな二面性の掘り下げの象徴となるのが、美しさと醜さとの二面性をひとりで統べる新たなオペラ座だったりしたのかなと思うのです。


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人間は単純ではなく二面性という両輪(たとえば夢と現実)があり、でもそれは悪いことではなく、それがあることがチカラになる。そして、その二面性は自分自身のなかだけでなく、自分と社会の関係性でも生まれ、それもまた両輪となってチカラになる。つまり、「夢の自分と、それを目指す自分」「求められる自分と、それを目指す自分」があり、そうやって人間は人生という物語を紡いでいくのだ…そんな大きな世界観がようやくつかめたように思います。なかなかに意味が難解であった終盤の独白部分も、「4回転アクセルという夢が消えて、独りになった気がしたけれど」「みんなのくれる期待や応援が新たな夢となって、自分は独りじゃないと気づいた」という理解をすることで、ようやく腹落ちした気がします。何となくそんな感じでは受け取っていましたが、一段深くわかった気がします。

そこまで理解することで、ずっとよくわからなかったあの言葉「この物語とプログラムたちは、あなたの味方です。これはあなたへ、あなたの味方の贈り物」という冒頭の一節も、わかったような気がしてきました。一面においては、羽生氏とファンとの関係性のなかで、「素敵なものを見せます、だから頑張って」ということです。ただもう一面として、「あなたのなかや、あなたの周囲にも、あなたが頑張れるようになる何かがあるんじゃないですか?」「たとえば社会に適合するなかで失われていった自分の夢、自分の本心」「あるいは、あなたの周りの人の期待や応援」「それに気づくことで、あなたにはちゃんと味方がいる、独りじゃないとわかるはずです」「そんなことに気づけるように、この物語とプログラムを紡ぎました」ということなのかなと思いました。「あなたの味方」となるものがちゃんと存在していることに気づかせてあげるという贈り物、それが「あなたの味方の贈り物」なのだと。「プレゼントはミ・カ・タ」なのだと。

GIFTに触れることで、何度も、何度でも、そんなことに気づける…そういう贈り物をしてくれたのだと思ったら、どうりで何度も見返してしまうわけだと納得しました。恋をしたくなる映画や家族に会いたくなる小説があるように、自分には味方がいるんだと思えるアイスショーがここにあるのです。辛いとき、悲しいとき、見たくなりますよね。まさに「GIFT」だなと思いますよね。「楽しいー!終わった!」だけでなく、時折振り返りながら、その時々で何かに気づけるような、そんなものをくれたのですから。



特別編の最後には、羽生氏がGIFT本編を終え、クレーンが降りてきたときの様子も収録されていました。すでにリンクにいる時点からチラッとそんな素振りも見えていましたが、本編を終えた羽生氏は号泣していました。「まだアンコールがあるのでは…」「全員帰るまでがGIFTですよ…」「泣く用に胸、貸そうか?」なんてクチを挟むこともできないほどの大号泣です。そこで羽生氏は「やった…」「頑張った…」「よく頑張った…」「えらい…」と自分自身を讃えていました。途方もない挑戦だとは思っていましたが、本当にそうだったのでしょう。五輪を二度制した人が、やり遂げた自分を讃えて泣くほどの挑戦だったのですから。そんな挑戦を見させていただけたこと、五輪をも凌駕するような体験だったと改めて感謝するばかりです。

そう思うと、「コレはマジでGIFTだったのでは?」ということもちょっと思います。何となく、勝手に、半分ビジネスとして定期的にこういうことをやってくれるんじゃないかと思い込んでいましたが、どうかな?と。予算も労力も体力も気力も時間もすべての採算を度外視して、全身全霊の贈り物をしてくれただけなのではないか、そんな気もしてしまいます。生涯ただ一度と思って取り組むような、そういう気持ちだからできるような挑戦だったとしても、何ら不思議はないと思うのです。それだけのものを見ましたから。「空前絶後」だと言われても、致し方ないと納得するしかないようなものでしたから。

そんな怖ささえ感じるような、素晴らしい公演でした。

「2」があって当たり前ではないぞと、自分を戒めました。

だから、「GIFTを超える」という新たな夢が、あればいいなと思います。

当たり前ではないけれど、それが夢であればいいなと。

GIFTロスは、次のGIFTが来るまで、永くつづきそうですから。

↓帰れる場所があること、嬉しく思います!

何があっても確実に帰れる場所として、ブルーレイ別宅をください!

オーディオコメンタリー付き本編ディスク1枚、メイキングディスク1枚、公演翌日インタビューノーカット版ディスク1枚、ファン・関係者からのお祝いコメントディスク1枚、オリジナルアニメムービー「GIFT」ディスク1枚の5枚組で!

当面はディズニープラスを見ながら、絵本を読んで待ってます!

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12月頃の発売なら、GIFTを贈り合うクリスマスパーティーもよさそうですね!