東大生語る「東大合格する子」の凄い"言い換え力"
東京大学(写真: trikehawks / PIXTA)
本や参考書に出てくる難解な言葉。皆さんはパッと平易な言葉に言い換えることができますか。こうした語彙力があるかどうかは、成績が伸びるかどうかにもかかわってきます。『東大式 たのしく遊んでかしこくなる 天才クロスワード 小学1・2・3年生』を上梓したカルペディエム設立者の西岡壱誠さんが、語彙力を高めることの大切さについて、解説します。
みなさんは、なぜ東大生は頭がよいと思いますか?
「なんで、って言われても……」「もともと頭がよかったんじゃないの?」と思うかもしれませんが、僕には遺伝以外の要素で、「これがうまくいっているから、東大に合格しているんじゃないか」と思うものが1つあります。
それは、「語彙力」です。
東大生は、言葉の知識を豊富に持っているから、頭がよくなっているのではないかと思うのです。
実際、僕らは多くの学校でさまざまな勉強を教えていますが、英語でも社会でも理科でも数学でも、語彙力がない学生の成績は全然上がらない場合が多いです。逆に、成績が今伸び悩んでいる子でも、語彙力がある子は、後からグッと成績が伸びてきます。
今回の記事では、なぜ学習能力に差が生じるのか、すべての勉強の根幹になる「語彙力」についてみなさんにお話ししたいと思います。
言い換えができると、成績が上がりやすい
結論から言うと、語彙力がある学生は「言い換え」ができるようになるため、成績が上りやすいのです。
例えば、社会でこんな一文が書いてあったとします。
「荘園 大きな寺院・神社、または貴族が、自分たちの財力で新しく開墾した、自分たちの土地のこと」
このとき、どうすれば「荘園」を理解して覚えることができるのでしょうか?
その答えは、この荘園の「説明」をしっかり解釈し、自分の言葉で言い換えることができるかにかかっています。
もっと詳しく言えば、この荘園の説明に使われている言葉が理解できているかどうかによって理解度は変わってくるでしょう。
例えば「財力」ってどういう意味?「開墾」ってどういうこと?というのがわかっていない人にとって、この文はよく理解できない文字の羅列になってしまいます。
「財力っていうのは、経済的な力のことを指しているな」「開墾っていうのは、まだ未開の土地を耕して、農地として利用できるようにすることだよな」と言い換えられる状態になって初めて、この荘園の説明をしっかり解釈できていると言えるわけです。
※外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
さらに言えば、逆に「説明」自体を、自分なりに解釈し、ほかの言葉で言い換えられるかどうかも、理解度を変えていくことでしょう。
例えば「自分たちの土地」という言葉を見て、もし「私有地」と言い換えられたなら、おそらく荘園のイメージはかなりはっきり理解できると思います。
もっと言えば、「大きな寺院・神社、または貴族が、今で言う地主になっていたってことだね」なんて自分で言葉にできるのであれば、「荘園について記述しなさい」という問題が出ても楽々と答えられることでしょう。
説明で使われている言葉がわからず、なんとなくでしか理解できていない学生。
説明で使われている言葉を、しっかりと自分の言葉で言い換えられている学生。
どちらのほうが、成績が上がるのかは一目瞭然と言えるでしょう。
同じ授業を受けて、同じ教科書を同じ時間読んでいたとしても、語彙力があるかないかで吸収できる知識は大きく異なります。
黒板の内容をそのままノートに書き写さない
さて、このように「言い換え」というのはとても重要な行為です。
例えば東大生は、黒板に書いてある内容をそのままノートに書き写すということはしないことが多いです。自分なりにその黒板に書いてある言葉を言い換えて書いていることがほとんどなのです。
「〜という国が誕生した」と黒板に書いてあるのを、「〜国 誕生」と言い換えてみたり、「〜という国が崩壊した」と黒板に書いてあるのを、「〜国 滅亡」と言い換えてみたり。
とにかく先生の言った通り・書いた通りに書くのではなく、自分なりに解釈して、同じような内容を違う言葉で出力してノートにアウトプットしているのです。
こうすることで、自分の頭の中で内容を噛み砕いて理解しているというわけですね。
結局、先生の言っていることをコピーアンドペーストしても、ただ丸暗記しているにすぎません。実際にはどういうものなのかを理解しないままでノートに書き写すことになってしまうと、なんの意味もない無駄な時間を過ごすことになってしまうのです。
例えば最近、こんなことがありました。僕が「将校がこんな事件を起こした」と日本史の説明をしたあとで、学生たちに「自分で説明してみて」とお願いしたんです。そしたら、「えっと、将校って人が、こんな事件を起こしたんですよね」と言い出しました。「将校が」というのを人名だと捉えてしまったわけですね。
みなさんはこの話を聞いて笑ってしまうかもしれませんが、確かによく考えてみると、「将校」って結構難しい語彙ですし、探したら「将校」という名前の人もいそうですよね。こんなふうに、言葉をしっかり理解していないと、簡単に解釈を間違えてしまいますし、本や人の話をコピーアンドペーストするだけでは全然理解できていないことも多々あります。
だからこそ、語彙力が重要だと言えます。
語彙力は重要なのに、あまり重要視されていない
語彙の勉強って、国語の授業で体系的に教えてくれるわけでもないですし、各科目の語彙力なんて「持っていて当たり前」として学校でも参考書でも扱われてしまいます。
でも、「方程式」とは何かを教えてもらっていないままで数学の勉強が始まってもあまり理解できないですし、「較差」とは何かを習っていない状態で地理や地学の勉強をしても、よくわからない状態で勉強することになってしまいます。
語彙力の勉強は大事なのにもかかわらず、あまりそれが認知されていない。これは1つ、大きな問題なのではないかと僕は思っています。
それが国語以外の科目であったとしても、語彙力があると、頭に入ってきて物事を覚えやすくなるということはやっぱりあるんですよね。
ちなみにこれは僕の体感的な話ですが、頭のいい人って、言葉のチョイスが絶妙です。僕らがふだん使い分けていない言葉も使い分けています。
「信用」と「信頼」、「目標」と「目的」、「意味」と「意義」など、使い分けが必要なのにあまり意識していない使い方をしている場合も多いと思います。
こういった語彙力が、頭をよくしている、と解釈できるのではないでしょうか。もしみなさんが、頭がよくなりたいと思うのであれば、このようにまずは身近な言葉の使い分けの勉強をしてみてください。
簡単なものから語彙力を身に付ける
また、僕が生徒さんや親御さんにおすすめしているは、語彙力の訓練は簡単なものから実践してみる、ということです。
今の時代、スマホ1台あれば、「それはどういう意味なのか」というのが個人の興味の中で調べることができます。
ちょっとした日常会話で出てきた言葉で、意味がわからないものを、すぐに調べる癖をつけておきましょう。
その場ですぐにそういう行為をやってみると、自然と語彙力も身に付いてくるものです。ぜひみなさんにもやってみてもらえればと思います。
(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)