『「週4時間」だけ働く。』の著者として知られるティム・フェリスは、朝の日記に何を書いているのでしょうか(写真:Khosro/PIXTA)

お金であれ、時間であれ、人間関係であれ、安眠であれ、豊かさを手に入れたいと思ったら「朝の日記」が大事だと述べるティム・フェリスは、どんな日記をつけているのか。その日記には、どんな効果があるのか。

『「週4時間」だけ働く。』の著者として知られるティム・フェリスが、現代のパイオニア106人に成功の秘密を聞きまくってまとめた本『巨神のツール 俺の生存戦略』の『富編』の中から、紹介しよう。

僕の朝の日記をお見せしよう

歴史を紐解けば、成功者たち(それ以外の人たちも)が日記をつけていたという例は枚挙にいとまがない。


マルクス・アウレリウス・アントニヌスからベンジャミン・フランクリン、マーク・トウェイン、ジョージ・ルーカスにいたるまで、幅広く見られる。

だけど、一体彼らは何を書いていたんだろうか?

もしかしたら、彼らの個人的な日記に目を通した君は、こんなことを思うかもしれない。

「信じられない、まるであのすごいゲティスバーグ演説(リンカーンが行った演説)を読んでいるみたいじゃないか」。

それですっかりやる気をそがれてしまう。

ここでは、実際僕が毎朝どんな日記を書いているのか、そのままお見せして、その仕組みをお伝えしたいと思う。

なぜかって?

理由は簡単。僕の日記は、ひどく取り散らかっているからだ。そういうものを見ると不思議と、やる気がわいてくるものだ。

僕たちのヒーローは、何事にも動じないジャガーノート(インド神話に登場する神の名)のような人物で、毎朝襲ってくる不安にも、見事な空手チョップをお見舞いして撃退してる。そんな風に想像するのはすごく簡単だ。

だけど、それはファンタジーの世界だけのこと。雑誌の表紙を飾るような人たちだって、1日中ベッドにもぐり込んでいたいような朝をたくさん迎えているんだ。

君が豊かさを手に入れたいのなら―それがお金でも、時間でも、人間関係でも、安眠でも、その他何でも―「精神的ワイパー(朝の日記)」があれば、トラブルも少なく、頭痛もあまり感じずに、目的地までたどり着くことができるだろう。

思考を書き出すことの効果

それでは早速説明に取りかかろう。

ほぼ毎朝、僕はターメリック、生姜、プーアル茶、それから緑茶を入れたホット・カクテルを持って座る。

そしてジュリア・キャメロンの本、『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』をパッと開いてみる。

朝の日記は、作者のジュリア・キャメロン曰く、「精神的ワイパーの役目を果たす」。

これは、今まで見つけた中で、いちばんコスト・パフォーマンスの高いセラピーだと思ってる。彼女の言葉を引用しよう。

泥沼にはまって、抜け出せないでいるような、混乱を抱えた状態(先の見えない不安、苛立ち、そこにとらわれてしまってる状態)をそのままページに書き出してみると、より曇りのない目で、その日1日と向き合うことができるの。

もう1度、この引用を読んでみてほしい。

もしかすると、がんじがらめになっている思考を、紙の上に吐き出す(書く)ことは、これまで試したあらゆる方法の中で、もっとも重要な点かもしれない。

自分は最悪の書き手だと思っているとしても、書くことを、「道具」としてとらえることができるようになる。

書くことで、得られることはたくさんある。自分を含め―誰1人として―自分の書いたものなんて読んだことがない、という場合でも。

別の言い方をすれば、作品よりもプロセスそのものが大事、ということ。

次に紹介するのが、ある日の僕の日記だ。

12月28日 日曜日 ニューヨーク

7時半、誰よりも早く起床。素晴らしい気分だ。

日曜日だからかな? スローペースでいいんだって感じられる。それで気分が最高なのかもしれない。どうして、月曜日とか火曜日とは違った気持ちになるんだろう?


こっちのことはお構いなしに待ってる人がいても、好きなだけ待たせておけばいいや。

みんなが待ってくれてる場所にたどり着くために働いて、そこを目指して必死になってもがいてるさまは、なんだかおかしいよね。その逆じゃないんだ。

ようやく、大げさにもてはやされた場所にたどり着いたかと思えば、ますます大勢の人間が(ほとんど正当な理由で)ひっきりなしに、ドアを叩いてくる。それは日雇い労働者でいたときよりも、かなりのストレスだ。

収入が100倍になったことで、自分の自由意思の感覚が後退してしまったからなのか? 自分の食べたいものを自分で料理する代わりに、他の誰かのビュッフェから料理をいつも選ばされているような感じだからだろうか?

それとも、自分が持ってるものを、何とかして守らなくちゃって感じてるからか? 時間、お金、人間関係、居場所、ぜんぶひっくるめてさ。

攻めの姿勢で成功した人生の「勝ち組」にとって、守りに転じることは自分自身の核心部分と矛盾するのだろう。

ここでもう1度、ポイントをおさらいしよう。

問題を頭の中から追い出すのに使える

紹介した日記の解釈には2つの方法がある。どちらにも共通点がある。

1. 僕は物事を何とか理解しようとしている。書くことがその役に立つかもしれない。


例を挙げよう。僕は、ゴール(ある意味での「成功」)と、そこから生じる、利益を帳消しにするような副作用の間に葛藤が起きることをちゃんと理解している。

僕がつかんだ大きな成功は、積極的に動いた結果だっていうことも分かってる。

どうしてもある程度の成功を収めると、それが足かせとなって、守りに入らないといけないような気持ちになってしまうんだ。戦う代わりに、妥協しようとしてしまう。

これは僕のDNAとは相いれないもので、不幸へとつながっていく。だからこそ、この「守り」を求める資産をすべて放棄してしまうか、もしくはその管理を上手に別の人に委ねてしまう必要があるのかもしれない。

笑っちゃうくらい分析的に聞こえるかもしれない。僕たちはそんなに頭が良くないって? でも、おそらく本当に大切なのはそんなところにあるのでは……。

2. モンキーマインド(雑念で入り乱れている精神状態)を紙の上に表しているだけだ。だからこそ、気分がのらない日でも、続けていくことができるんだ。

朝の日記で、問題を解決する必要はない。単純に問題を頭の中から追い出す必要があるだけなんだ。

そうしないと、頭の中で、延々と飛び交う弾丸のように、君を苦しめるだろう。

毎朝5分間、紙に向かって、ブツブツ言ったり、頭を抱えることで、本当に人生を変えることなんてできるんだろうか?

クレイジーだと思うかもしれないが、その答えはイエスだって、僕は信じてる。

(ティム・フェリス : 起業家、作家)