いくつになっても悩みがつきないのが、友人との人間関係。そんななか「60代以降の人間関係は難しい」と語るのは、現在ご自身も64歳になったという脳科学者の黒川伊保子さんです。

60代からの「人間関係」をラクにするコツ

『夫のトリセツ』や『妻のトリセツ』など、数多くの家族関係を脳科学で分析してきた黒川さんが、新たに上梓した『60歳のトリセツ』(扶桑社刊)では、60代以降の人生を「自分史上最高の人生」にするための秘訣を紹介しています。

ここでは、同書の記事を抜粋・再編集し、60代以降の人生において、人間関係がラクになるための秘訣をお届けします。

●友人との距離の取り方に悩んだら、どうしたらいい?

60代の友だち関係は、案外難しいもの。子育てや仕事が言い訳に使えなくなるため、友だちにどっぷり依存されてしまうと逃げ道がなくなります。夫がいれば、夫を言い訳にできるけど、独身だと、途方に暮れてしまうこともあるはずです。

ある女性から「友だちとの距離の取り方がわからない」と相談を受けました。「近所に同じ年代の友だちがいるんです。お互い独身なので、週末はなんとなく一緒にご飯を食べるという習慣になってしまった。一緒にいれば楽しいけど、ときには一人でゆっくりしたいこともある。それなのに、『今週はなに食べる?』のように毎週当たり前のように振る舞われると、ちょっと疲れてきて、距離をつくらなきゃ、となりますよね」と訴えました。

かと思えば、ある女性は、「仕事終わりに、同僚につかまっちゃうんです。ときには1時間以上も愚痴を聞かされることがある。彼女、私以外に話を聞いてくれる人がいないらしくて」と頭を抱えます。

人間関係の距離感に悩む女性の多くは、優しいので、なかなかNOが言えません。このため、「自分の気持ち」よりも多めに踏み込んでくる相手を止められず、疲れて、適正の距離感を保てる関係になりたい、と願っているのです。

さぁ、どうしたらいいでしょう?

●気兼ねしすぎず、率直に気持ちを伝えるだけでOK

前出の質問、私なら、「今週はひとりでゆっくりするわ」と率直に言います。友はきっと、私の友情や愛情を疑わず、「たしかにそうよね、人間、ひとりの時間も大事よ」と思ってくれると信じてるからです。まぁたぶん、そうでない人もいたのだろうけど、そういう人とは疎遠になって、結果、わかってくれる友人しか残っておらず、だから、ますます素直に言える…という好循環なのかもしれません。

というわけで、率直に気持ちを伝える、というのが、第一のアドバイス。

ただし、その場合の「率直」ですが、「毎週、当たり前のようにうちに来ようとする態度にドン引き」という気持ちを伝えるのではありません。ドン引きの理由は、「たまにはひとりでいたいのに」なのでしょう? そちらを伝えましょう。

多くの人が、率直に気持ちを伝えたらいい、というと、「いやな思い」を伝えると思いがちですが、そうなってしまった「本当はこうしたかったのに」の方を伝えるのである。いやな思いは、この際、隠蔽すべき。だって、いやな思いは、友が悪いわけじゃない。自分が、適正な距離の取り方を、相手に伝えられなかったのが原因なのですから。

2人の人間の「会いたい気持ち」の強さが、常に同じというわけはありません。長い付き合いのなかでは、「会いたい気持ち」は忙しさや疲労にかき消されるときもあり、ときには、どちらかが強くて、どちらかが弱いというのが当たり前。そんなとき、互いに「今週は会わない」を率直に伝え合える友でありたい、と私は思います。

●「夢中になれるなにか」を理由に、距離を置いてもいい

とはいえ、そんな素っ気ないことできないわ、という女心もわかります。

友の「会いたい」に応えるのが友情、というのが、多くの女性たちの友情の定義。だからこそ、子育てや夫、ときには姑も使って、断ってきたのです。「会いたい気持ちは山々だけど、夫が出張から戻ってくる日だから」みたいに。

60過ぎると、その理由がなくなるから、途方に暮れるわけです。

というわけで、断る理由をつくればいいのです。私は、「夢中になれるなにか」をもつことを、熱烈おススメします。