多くの通勤客が利用する新宿駅の改札口。ラッシュピークを避けたJR東日本の「オフピーク定期券」は従来の定期券より1割安い(撮影:梅谷秀司)

2023年春、JR東日本は従来の定期券より1割安いオフピーク通勤向けの定期券を発売した。しかし、首都圏の大宮、高尾、取手、千葉、大船より外側の電車特定区間外を含む場合は対象外となり、これら各駅以遠の郊外にお住まいの方はちょっとがっかりしたのではないか。

ならば、電車特定区間外だけの区間の定期券とオフピーク定期券の2枚を購入して、区間が分かれる駅を境に定期を使い分けてみてはどうだろうか。上記のような電車特定区間外縁の駅はもともと乗り換えが発生するケースが多く、いったん改札を出て再入場しても大きく手間は増えないし、乗り換えによって始発電車を利用できれば着席のチャンスもある。

そこで、今回は首都圏外縁からの通勤で、都心寄りの区間だけオフピーク定期券を利用した場合にどのくらい安くなるのか試算してみた。月あたりのおトク額は、わかりやすさのため10円単位の切り上げや切り捨てを行っている場合がある。また、オフピーク定期券にはグリーン車用の設定はない。

いったん改札を出る必要はあるが…

Suicaには、区間を分割していても1枚の定期券として発売する「2区間定期券」というものがある。だが、電車特定区間外の定期券とオフピーク定期券も1枚にできるかJR東日本に確認したところ、「オフピーク定期券は、入場時にご利用可能な時間帯を判定する商品となりますので、通常の通勤定期券とオフピーク定期券を組み合わせて1枚の定期券でお求めいただくことはできません」とのことだ。

また、オフピーク定期券特設サイトの「よくある質問」には、「オフピーク定期券と通常のSuica通勤定期券との併用はできますか」との項目があり、ここには「2枚以上のSuica等の交通系ICカードを同時に使用することはできません」との回答がある。これは、2枚のうち片方の定期券で入場して、もう片方の定期券で出場することはできないという意味だ。

したがって、通常のSuica定期券とオフピーク定期券の2枚を購入して利用する場合、区間分割の境界駅では改札をいったん出場することと、ピーク時間外の再入場が必要になる。それでも大した手間ではないし、これで月最大6000円も安くなるのなら見逃せない話だ。

■中央線・青梅線・八高線

中央線は京王線や西武線と並行する区間があるため、特定運賃の設定でオフピーク区間はとくに安い。そのため最もおトク額が大きい!

例えば、大月―新宿間を高尾で分割し、新宿―高尾間をオフピーク定期にすると、通しで買うより1カ月定期なら3830円、3カ月なら1万970円、6カ月ならなんと3万3730円も安い。ということは、最大で月5620円も安くなる。相模湖―新宿間なら差はさらに大きく、6カ月で3万6040円安、月最大6000円もおトクだ。


区間分割してオフピーク定期券と通常の定期券を使う例(筆者作図)

【大月―新宿間 77.5km】
通常:1カ月3万7040円・3カ月10万5590円・6カ月19万3240円
<分割>
大月―高尾間
:1カ月1万7810円・3カ月5万750円・6カ月8万5540円
高尾―新宿間オフピーク:1カ月1万5400円・3カ月4万3870円・6カ月7万3970円
・1カ月:3万3210円(3830円安)
・3カ月:9万4620円(1万970円安)月3660円おトク
・6カ月:15万9510円(3万3730円安)月5620円おトク

【相模湖―新宿間 52.3km】
通常:1カ月2万5660円・3カ月7万3110円・6カ月13万8530円
<分割>
相模湖―高尾間
:1カ月5940円・3カ月1万6930円・6カ月2万8520円
高尾―新宿間オフピーク:1カ月1万5400円・3カ月4万3870円・6カ月7万3970円
・1カ月:2万1340円(4320円安)
・3カ月:6万800円(1万2310円安)月4100円おトク
・6カ月:10万2490円(3万6040円安)月6000円おトク

ちなみに高尾駅のピーク時間帯は6時25分〜7時55分。高尾7時49分着東京行きの列車を使うと、いったん改札を出て入り直すのにちょうどいいだろう。7時55分以降の高尾始発の列車は8時00分発東京行き(新宿9時02分着・東京9時17分着、三鷹で通勤特快の通過待ち)、その後8時03分発(新宿9時04分着・東京9時19分着・国分寺で通勤特快の待ち合わせ)が使える。


中央線の高尾以遠を走る211系。中央線は高尾で乗り換えとなるケースが大半のため一度改札を出てもそれほど手間ではない(写真:Ran/PIXTA)

1カ月定期のほうがお得な例も

八高線の箱根ケ崎―新宿間なら、拝島から新宿側をオフピーク定期にすると月最大3290円おトクだ。ただ、3カ月定期の場合、1カ月定期よりも月あたりのおトク額は若干少ないことが多いようだ。

【箱根ケ崎―新宿間 39.9km】
通常:1カ月2万1470円・3カ月6万1170円・6カ月11万880円
<分割>
箱根ケ崎―拝島間
:1カ月5940円・3カ月1万6930円・6カ月2万8520円
拝島―新宿間オフピーク:1カ月1万3030円・3カ月3万7120円・6カ月6万2600円
・1カ月:1万8970円(2500円安)
・3カ月:5万4050円(7120円安)月2370円おトク
・6カ月:9万1120円(1万9760円安)月3290円おトク

■東海道線・湘南新宿ライン

東海道線も横浜から京急や東急と競合しているため、特定運賃の設定によって割安になっている区間がある。そのためこのケースでは電車特定区間外縁の大船駅での分割ではなく、横浜駅から都心側をオフピーク定期にして試算してみた。

こちらもなかなかの価格差だ。茅ケ崎から品川へ通勤する場合は1カ月でも2270円、3カ月なら6420円、6カ月なら2万5120円で、月最大4180円もおトク! 渋谷への通勤だと1カ月でも2490円、3カ月なら7000円、6カ月なら1万7070円で、月最大2840円もおトクだ。

【茅ケ崎―品川間 51.8km】
通常:1カ月2万5260円・3カ月7万1980円・6カ月13万6390円
<分割>
茅ケ崎―横浜間
:1カ月1万5010円・3カ月4万2810円・6カ月7万2860円
横浜―品川間オフピーク:1カ月7980円・3カ月2万2750円・6カ月3万8410円
・1カ月:2万2990円(2270円安)
・3カ月:6万5560円(6420円安)月2140円おトク
・6カ月:11万1270円(2万5120円安)月4180円おトク

【茅ケ崎―渋谷間 61.9km】
通常:1カ月2万8440円・3カ月8万1010円・6カ月14万2560円
<分割>
茅ケ崎―横浜間
:1カ月1万5010円・3カ月4万2810円・6カ月7万2860円
横浜―渋谷間オフピーク:1カ月1万940円・3カ月3万1200円・6カ月5万2630円
・1カ月:2万5950円(2490円安)
・3カ月:7万4010円(7000円安)月2330円おトク
・6カ月:12万5490円(1万7070円安)月2840円おトク

あまりお得感のないケースも

■高崎線・宇都宮線

高崎線・宇都宮線には競合となる路線があまりないこともあって、1カ月定期や3カ月定期で比較すると値段差がほとんどないか、むしろ割高になる。だが6カ月定期なら、大宮より東京側をオフピーク定期にすれば月2000円程度安くなる区間はある。

【鴻巣―東京間 50.5km】
通常:1カ月2万4790円・3カ月7万640円・6カ月13万3830円
<分割>
鴻巣―大宮間
:1カ月9900円・3カ月2万8210円・6カ月4万7520円
大宮―東京間オフピーク:1カ月1万4770円・3カ月4万2130円・6カ月7万3970円
・1カ月:2万4670円(120円安)
・3カ月:7万340円(300円安)月100円おトク
・6カ月:12万1490円(1万2340円安)月2050円おトク

【鴻巣―上野間 46.9km】
通常:1カ月2万3260円・3カ月6万6350円・6カ月12万3560円
<分割>
鴻巣―大宮間
:1カ月9900円・3カ月2万8210円・6カ月4万7520円
大宮―上野間オフピーク:1カ月1万3030円・3カ月3万7120円・6カ月6万2600円
・1カ月:2万2930円(330円安)
・3カ月:6万5330円(1020円安)月340円おトク
・6カ月:11万120円(1万3440円安)月2240円おトク

【久喜―上野間 45.5km】
通常:1カ月2万2990円・3カ月6万5500円・6カ月12万3560円
<分割>
久喜―大宮間:1カ月9900円・3カ月2万8210円・6カ月4万7520円
大宮―上野間オフピーク:1カ月1万3030円・3カ月3万7120円・6カ月6万2600円
・1カ月:2万2930円(60円安)
・3カ月:6万5330円(170円安)月60円おトク
・6カ月:11万120円(1万3440円安)月2240円おトク

■埼京線・川越線

川越線沿線から東京へ出る方は、大宮乗り換えを選択することが多いかもしれない。だが、赤羽でも乗り換えはできる。

そこで赤羽乗り換えの場合で試算したところ、なんと赤羽から東京寄りをオフピーク定期にすると、1カ月定期でも6カ月定期並みのおトク額なのだ! 1カ月定期だと1430円安なのに対し、3カ月定期だと4090円安で月あたり1360円安、6カ月定期も8170円安で月あたり1360円安だ。

【指扇―東京間 38.2km】
通常:1カ月2万170円・3カ月5万7490円・6カ月9万8220円
<分割>
指扇―赤羽間
:1カ月1万2540円・3カ月3万5730円・6カ月6万180円
赤羽―東京間オフピーク:1カ月6200円・3カ月1万7670円・6カ月2万9870円
・1カ月:1万8740円(1430円安)
・3カ月:5万3400円(4090円安)月1360円おトク
・6カ月:9万50円(8170円安)月1360円おトク

常磐線は取手で降りて座っていこう

■常磐線・成田線

取手からの始発電車が多数ある常磐線。途中下車して楽々着席通勤しよう。

【牛久―上野間 52.8km】
通常:1カ月2万5660円・3カ月7万3110円・6カ月13万8530円
<分割>
牛久―取手間
:1カ月7260円・3カ月2万690円・6カ月3万4840円
取手―上野間オフピーク:1カ月1万7760円・3カ月5万630円・6カ月8万5360円
・1カ月:2万5020円(640円安)
・3カ月:7万1320円(1790円安)月600円おトク
・6カ月:12万200円(1万8330円安)月3050円おトク

ちなみに取手駅のピーク時間帯は6時40分〜8時10分。取手8時02分着品川行き、または8時12分着上野行きの列車を使うと、一旦改札を出て入り直すのにちょうどいいだろう。8時10分以降の取手始発の列車は8時21分発上野行き(上野9時06分着)、始発にこだわらなければ8時12分発上野行き(上野8時56分着)が使えるだろう。

成田線沿線の方も、我孫子で区間を分ければオフピーク定期券が使える。

【木下―東京間 51.1km】
通常:1カ月2万5260円・3カ月7万1980円・6カ月13万6390円
<分割>
木下―我孫子間
:1カ月7260円・3カ月2万690円・6カ月3万4840円
我孫子―東京間オフピーク:1カ月1万7390円・3カ月4万9570円・6カ月8万5360円
・1カ月:2万4650円(610円安)
・3カ月:7万260円(1720円安)月570円おトク
・6カ月:12万200円(1万6190円安)月2700円おトク

ちなみに我孫子駅のピーク時間帯は6時45分〜8時15分。我孫子8時09分着の列車を使うといったん改札を出て入り直す時間にちょうどいいだろう。8時15分以降で我孫子始発の列車はないが、8時22発(上野8時56分)以降の列車が使える。

■総武線・外房線・内房線

東京への直通も千葉止まりも混在する房総各線。千葉から東京寄りをオフピーク定期通勤に切り替えて、千葉始発の快速で着席通勤はいかがだろうか。

【成田―東京間 68.4km】
通常:1カ月3万2990円・3カ月9万4020円・6カ月16万7900円
<分割>
成田―千葉間
:1カ月1万5010円・3カ月4万2810円・6カ月7万2860円
千葉―東京間オフピーク:1カ月1万7760円・3カ月5万630円・6カ月8万5360円
・1カ月:3万2770円(220円安)
・3カ月:9万3440円(580円安)月190円おトク
・6カ月:15万8220円(9680円安)月1610円おトク

【土気―東京間 57.3km】
通常:1カ月2万8010円・3カ月7万9850円・6カ月14万2560円
<分割>
土気―千葉間
:1カ月9900円・3カ月2万8210円・6カ月4万7520円
千葉―東京間オフピーク:1カ月1万7760円・3カ月5万630円・6カ月8万5360円
・1カ月:2万7660円(350円安)
・3カ月:7万8840円(1010円安)月340円おトク
・6カ月:13万2880円(9680円安)月1610円おトク

【五井―東京間 52.3km】
通常:1カ月2万5660円・3カ月7万3110円・6カ月13万8530円
<分割>
五井―千葉間
1カ月7260円・3カ月2万690円・6カ月3万4840円
千葉―東京間オフピーク1カ月1万7760円・3カ月5万630円・6カ月8万5360円
・1カ月2万5020円(640円安)
・3カ月7万1320円(1790円安)月600円おトク
・6カ月12万200円(1万8330円安)月3050円おトク

千葉始発の快速で着席通勤

ちなみに千葉駅のピーク時間帯は6時35分〜8時05分。総武線からは千葉7時58分着または8時08分着、外房線からは8時03分着、内房線からは8時00分着の列車を使うといったん改札を出て入り直すのにちょうどいいだろう。8時05分以降の千葉始発の列車は8時25分発久里浜行き(東京9時08分)、その後8時36分発大船行き(東京9時18分着)がある。始発にこだわらなければ8時09分発東京行き(東京8時55分着)が使える。

いかがだったであろうか。物価高や電気料金高騰の中、社会保険料値上げや増税で企業と国民を苦しめる政権による経済的圧迫に我々は耐えていかなければならない。筆者の安さへの挑戦は続く。


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(北村 幸太郎 : 鉄道ジャーナリスト)