関西で多くのレギュラー番組をもち、幅広い世代から支持を獲得しているお笑いコンビ・ロザンの菅広文さんと宇治原史規さん。菅さんが2008年に“京大芸人・宇治原”ができるまでの物語をつづった『京大芸人』はなんとシリーズで累計35万部を突破! 6月には最新刊『京大中年』を上梓し、話題となっています。

ロザン『京大中年』インタビュー

今回は、お笑い界きっての仲よし高学歴コンビに取材! 書籍にまつわることや仕事術、さらにはおふたりの子育てまで、貴重なお話をたっぷり伺いました。

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●ベストセラー『京大芸人』から早14年…

――大ヒットした『京大芸人』から14年が経ちましたが、シリーズ最新作となる『京大中年』の発売が決まったときの気持ちを教えていただけますでしょうか。

菅広文さん(以下、菅):もちろん率直にうれしいですし、発売前後のドキドキ感を味わえるのは今だけなので、楽しみはありますよね。

――同時発売される、文庫版『京大少年』では宇治原さんがあとがきを書かれたと伺いましたが、書かれてみていかがでしたか?

宇治原史規さん(以下、宇治原):正直言うと、結構緊張しました。人様の作品なので、害があってはいけないというか…(笑)。菅さんはその必要ないと思ってるかもしれませんけど、マネージャーに渡すときに「菅さんにも渡してほしい」ということは言っています。

菅:別に修正するところもないと思てるし、僕も読む気なかったんですけど、「いいわ、読まへんわ」っていうのも、それはそれで失礼かな、と思って(笑)。編集の方もおられるから、一応作者チェックはしとかなあかんわ、と思って読みましたね。

――ちなみに、あとがきは宇治原さんが「書くよ」と立候補されたのでしょうか?

宇治原:違う違う違う(笑)。

菅:宇治原さんが書きたい言うたんです。「文庫化するって聞いたんやけど、俺あとがき書きたいねん」っていうメールが来て。

宇治原:いやいやいや、イタイイタイ。

菅:ははは!

――(笑)。あとがきのお話をいただいたときは、どう思われましたか。

宇治原:なんにせよ、依頼をいただいたものなので、ありがたいという気持ちはもちろんありながら、本当に緊張感はあるんです。結構…結構考えました。以前のあとがきを送っていただき読み返したりして、仕事の中でいちばん考えて時間をかけたのがこのあとがきかもしれないです(笑)。

――ご自身でもなにか「執筆してみたい」と、思われたりしないんですか?

宇治原:いや、単純にその能力はないんで書けないです。あとがきはおもしろいですよ。この文量が、僕が書けるギリギリでしたね。

――では、また文庫になったときにあとがきを…。

宇治原:そうですね。いつですか、文庫化。

菅:僕も根がふざけてる人間なんで、多分どこかのタイミングで、あとがきを頼まない1冊をつくったりするでしょうね。あとでツッコまれたいんです。「おまえなんで俺に頼めへんねん!」って。そういうコンビなんですよ。

●理想は、「手を抜かずに力を抜く」

――本作には、仕事術についても多く書かれていらっしゃいますが、おふたりが長く仕事を続けていくうえでどういったことに気をつけていらっしゃいますか。

菅:本でも書かせてもらってるんですけど、「2人でしゃべりたい」ということで、この仕事を始めたところがあるんですよね。それが継続できてはいるんですけど、そうすると、よく読まれている方からしたら、依存しているように見えるところもあると思うんです。

でも、2人ともそういうことではなくて、“ひとり立ちできる2人がお互いに支え合っている”ところがあるというか。そこは今後も肝になってくるのかな。あまりにも支え合いすぎていて、「じゃあひとりでなにかできますか?」というときに「なにもできません」ではちょっと厳しいし、個人としても独立してるみたいなところが大きいと思います。

宇治原:まあ、“無理しない”っていうことが僕の中では大きいですね。仕事をするうえで理想なのは、“手を抜かずに力を抜く”。できるだけそれに近づけるようになりたい、とは思っていますね。

もちろん、そうなるのに場数はあると思うんですけど、取材していただくときでも20代ぐらいのときって「なにか言うたろ」と、あとから見たらめちゃくちゃスベってる、みたいなことがあったり(笑)。でもそれが今はないんですよね。ただ適当に答えてるんじゃなくて、逆に今のほうが本気でしゃべってるんですよ。それが“手は抜いていないけど、力を抜いている”なんですよね。

菅:オンとオフの境目がなくなってきたのかな? 取材もそうですし、テレビや漫才も、普通にしゃべっている状態になってきたというのはありますかね。自分の中ではそれは成長かな、と思います。

――それは、生活の延長線上にお仕事があるということでしょうか?

菅:そうですね。それに、宇治原さんの言葉を借りるなら、無理してないというか、長続きさすにはそれが僕らにとったら居心地がよかったってこともあると思います。

●子育てにも芸人のサガが出てしまう!

――子育てのお話も本の中に少し出てきますよね。私生活では子育てで、気をつけてらっしゃることはありますか?

菅:僕は子どもがいちばんじゃないというふうにとらえてますね。どうしても、子ども中心にはなりますし、それはしょうがない側面はあるんですけど、かといって子どもがいちばんで夫婦が2番、3番という感覚はなくて、僕も妻も子どもも並列の感覚なので、そういう子育てをしたい。

要は、“あなたのためにしてあげたんだよ”というのがあんまり好きじゃないんですよね。「これだけしたのに」とか「こうやってあげたのに」みたいなのがあったりすると、子どもが思ってた人生じゃないと、がっかりしてしまう。だから、それをあまり持たないようにしていきたいなと思ってますかね。

宇治原:なに言っても、「おまえ好感度取りにいってるやろ」みたいな答えしか思い浮かばんな…(笑)。まあ、情報に流されすぎない、ということは気をつけてますね。夫婦で話をするときにも、相手にもそれを注意するようにということは意識的にやってるかもしれないです。

皆、情報を取りに行きすぎてがんじがらめになってる感じがして。なんにもしなかったらあかんわけじゃないと思う。僕らは今の育児してる層よりちょっと古い人間だから、親の感じがもっと適当やったというか…。育児をしている層が真面目すぎるというか、もうちょっと適当でええで、っていうのは結構気にしてます。

――なるほど。では、お子さんからどんなパパだと思われていると思いますか?

菅:僕は完全に遊び相手ちゃうかな。寝かしつけが得意で結構すぐ寝てたんですけど、最近、僕の顔見たら、ニヤニヤするんですよ。「寝かそうとしてるやん」って(笑)。そうなると笑かしてしまう自分もいるんですよね。子守唄をちょっと違う感じで歌ってみたり。これしたら絶対に寝ぇへんのに。でもウケてるしな、っていう芸人のサガが出てしまうときがあります。

宇治原:う〜ん…。決定権を持っている人間だとは思ってるかもしれないですね。夫婦の感覚が近しい部分もあったりして、最終的に父親が怒ったら、めちゃくちゃ怖いからやめといた方がいいとか、お互いを立てて子どもが尊敬するようにもっていこうとはおそらくしてると思います。

●ロザンから読者へ一言

――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

菅:僕の本の宣伝で申し訳ないんですけど、お時間がない方って結構おられると思うんですけど、すき間時間に読める本にはなっているし、笑える本になっていると思うので、家事や育児の息抜きになってくれたらありがたいかなと思ってます。

宇治原:読者に伝えることかどうか分からないですけど、ちょっとやっぱり、情報の波に…飲まれてる。情報をインプットしない時間はすごく重要なんですよね。インプット、アウトプットが大事って話はわかりますけど、インプットしてアウトプットするまで間の時間がいちばん大事。

でも、それが今どんどんなくなっていて、考える時間がないんですよね。なにもしないと思った時間でもスマホを見てたり。情報のインプットの休憩時間も必要やなと思いながら、雑誌見たり本読んだりしてもらったらいいんちゃうかなと思います。