ゆとりのある年金生活を送るためには、ライフステージに合わせてお金の使い方や守り方を見直す必要があります。そこで今回は、ファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さんに、60代・70代でやるべきことをそれぞれ教えてもらいました。

退職を迎える60代。年金生活の下準備をスタート

いよいよ年金生活がスタートする年代。ムダな支出をなくし、老後の生活を整えて。元気なうちに、将来の自身の介護の情報収集も始めましょう。

 

●<やめること>食材配達やサプリの定期購入をやめる

同居人数や食事量が減ったのに、食材配達やウォーターサーバーの契約を漫然と続けていませんか。新たな収入がなくなる退職後はムダな支出はできるだけ抑えたいもの。解約手続きは年を取るにつれ、おっくうになるので、元気なうちに見直しを。サプリや健康飲料の定期購入、通販コスメなども見直しポイントです。

●<始めること>年金の受給年齢を検討する

年金は受給開始年齢を繰り下げるほど受給額がアップします。ただし受給開始までの生活費の確保が必要。60代は、退職やローン完済で、自分にいくら老後資金があるのか把握できる年代。試算し、最適な受給開始年齢を決めましょう。繰り下げる場合は、65歳前後に届く年金請求書を即時返送しないよう注意。

●<始める>親の介護からしっかり学ぶ

まず、親の介護費はなるべく親のお金から出すこと。そのうえで、介護支援や助成金について地域包括支援センターに相談したり、老人ホーム施設を見学したりして、親の介護をしながら自分の老後を予習しましょう。また退職後、シルバー人材センターで働くのもおすすめ。家事代行や買い物支援など、いろいろなサポートがあることを実感でき、自分も利用しやすくなります。人に「頼る」「相談する」練習をしていきましょう。

70代になったら元気なうちに「マネー終活」を

認知機能が衰え始めるのが70代以降。自分が亡くなったあと、家族が困らないようにお金の情報を整理し、共有しましょう。

●<やめること>銀行口座を2つに絞る

口座名義人が死亡すると、その口座は相続手続きが終わるまで凍結されます。たとえ数万円の残高であってもこの手続きが必要になるため、口座が多いと残された家族の負担に。年金が振り込まれる生活費用の口座と、投資など資産として残す口座の2つ程度に絞り、あとは解約手続きを。この方が資産管理もラクになります。

●<始める>資産運用の手じまいを

投資は、入院や認知症などで自分で運用ができなくなり、損をする可能性も。元気なうちに売却や家族信託を検討しましょう。家族に財産を託し、管理してもらうのが「家族信託」。家族が口座から医療費を出したり、資産を売却して施設費用に充てたりできるように、弁護士や金融機関などに相談。家族間で「信託契約書」を結びます。

●<始める>「口座からのお金の流れ」を家族と共有

ジム代やスマホ代など、口座振替やカード引き落としで支払っている料金は要注意。死亡後、家族が解約手続きをとらなければ引き落とされ続けたり、遅延金が発生する場合が。「どの口座からなんの料金が引き落とされているのか」を一覧にまとめ、家族と共有しましょう。「解約に必要なID・パスワード・口座情報・カード情報」もまとめておくと、いざというときに役立ちます。その際、パスワードの一部を伏せ字にするなど、書き方を工夫して防犯対策を。

年を重ねるにつれ、暮らし方もお金の使い方も変わってくるもの。そのときどきに合わせてきちんと見直すことで、老後資金の不安を解消していきましょう。

 

『これからの暮らし by ESSE vol.04』では今回紹介した以外に、50代〜70代の暮らし達人が「買ってよかったもの、ずっと大切にしたいもの」や、老後のお金の不安まるごと解決、飛田和緒さんとめぐる「大人の湘南・鎌倉」、坂東眞理子さんの人生お悩み相談、糖質オフ2品献立、自律神経整え習慣など50代以上の暮らしに沿った情報が満載。