「働きがい」をアピールするのはやめたほうがいい理由について解説します(漫画:筆者作成)

就職活動中の人に「働きがい」をアピールする会社は少なくないと思いますが、「そのアピールは控えめにしたほうがいい」と指摘するのが、著書に『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』などがある漫画家・イラストレーター・グラフィックデザイナーのJamさんです。その理由について、Jamさんが解説します。

「働きがい」は実際に働いてみないとわからない


(漫画:筆者作成)

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「働きがいのある会社に就職したい」。若者たちからはそんな言葉をよく聞きます。でも、会社側が「働きがい」をアピールポイントにするのはとても難しいと思います。なぜなら働きがいって、実際にその職場である程度の期間働いてみないとわからないからです。

そして、何をもって働きがいを感じるかは人それぞれです。厳しい指導も含めて達成感に働きがいを感じる人もいれば、待遇や人間関係が良好な社内環境に働きがいを感じる人もいます。答えは1つじゃありません。

だから思うのですが、もういっそ「働きがいがある会社」というアピールは控えめにして、別のメリットを推すのはどうでしょう?

「働きがい」を推せば、聞いたほうにも期待が生まれます。それで入社して「自分が考えていた働きがい」とは違ったとなればがっくりするし、転職に抵抗の少ない世代は簡単に退職してしまうでしょう。

まずは、すでに社内で働いている人たちの「働きやすさ」を改善してみませんか。「働きがい」は抽象的ですが「働きやすい環境」というのは具体的な実例があります。福利厚生がしっかりしている、人間関係が良好である、正当な評価をしてくれる。安心して仕事に集中できれば長くその会社で働きたいと思うものです。その状態を維持するために何かをしたいという気持ちは、個々の働きがいにつながるのではないでしょうか。

抽象的な「働きがい」という言葉より、福利厚生や待遇というのは就職活動中の若者に対しても伝わりやすいメリットです。

「働きがい」は心の余裕がないと気づきにくい

新入社員は上司や先輩をよく見ています。長く務めている人がどれくらいいるか、パワハラや残業はないか、不平不満や愚痴が会話の主体を占めていないか。今ここで「働きがい」を感じている先輩の背中が見えない会社が、「働きがい」がある会社に見えるでしょうか。

冒頭にも書きましたが、働きがいというのは実際にある程度の期間働いてみないとわからないし、働いた本人がどう感じるかによります。愚痴や不満などのネガティブなものほどすぐに気づきます。

働きがいを理由にすぐに辞めてしまう人には、働きがい以外の理由もあると思います。誇りや充実感などの「働きがい」は、心の余裕がないと気づきにくいものですから。

「何かが足りない」って何?


(漫画:筆者作成)

もしも職場に抽象的なことばかり言う上司がいるなら、少し用心したほうがいいかもしれません。「この企画書、何か足りないんだよな」とか「あと一歩だな」とか言われたことはありませんか。当たり障りがなくやんわりとした伝え方に感じますが、こういった曖昧な表現は仕事の場ではちょっと困るのです。

「何か」とはなんでしょう? 「足りない」とはどれくらいでしょう? 「あと一歩」ってゴールまでどれくらいあるのでしょうか?「いい感じだね」などのほめ言葉もそうです。何と比べていいのか基準がわかりません。現状を把握するための情報が曖昧だと、仕事というのはうまく回らないのです。

それでも上司から部下への注文であれば成果を問われます。ここを改善しなければ評価も上がらず、職場への不安や不満だけが募っていきます。でも、これらの問題は少しの心がけで改善できます。抽象的ではなく具体的にしてもらうことです。手っ取り早い方法は、できるだけ数字を使って伝え合うことです。

私が以前、企業や投資家向けの企画資料を作っていた際に上司に言われたことがあります。「必ず達成までの制作期間を出すこと」「成果がイメージできる数字を出すこと」「過去の成功例の統計を出すこと」です。

制作期間が明確なら、制作費や人件費がどれくらいかかるか伝わります。売り上げや契約数など、成果がイメージできれば興味を持ってもらえます。過去の成功例があるものには安心感があります。それらを一番イメージしやすいのが「数字」なのです。

確実に結果が出せるかわからないものに対して数字を使うのは勇気がいるかもしれませんが、逆の立場で考えてみてください。

「完成はなるはやを目指します。前例はないけどいい感じの企画なのでうまくいくと思います」と言われて、「よし、やろう!投資しよう!」となるでしょうか?納期も費用も成功するかもわからない、うまくいった実例もない。私ならご遠慮願いたいです。

あなたへの評価は数字で返ってくる

話を元に戻しますが、それが上司相手であっても同じだということです。上司の命令には余程の事情がなければ逆らえません。断れない取引先みたいなものです。そして、あなたがどんな曖昧な指示を受けても仕事の成果を問われて評価を受けます。「何件契約がとれたか」「ボーナスは〇カ月分」と、あなたへの評価は数字で返ってくるのです。

仕事の成果よりやる気や人間関係のほうが大事だという人もいると思います。でも、成果の出ない仕事にやる気を持ち続けることは難しいし、仕事がうまくいく相手とは長く良い関係を続けたいと思うものです。

だからできるだけ具体的に、必要なときは数字を使って、やるべきことや伝えるべきことを明確にしていきましょう。

(Jam : 漫画家・イラストレーター・ゲームグラフィックデザイナー)