20代でオープンした『賛否両論』が予約のとれない店として注目を集めて以来、テレビや雑誌、食育活動など、幅広く活躍し続けてきた笠原さん。先月末には『笠原将弘の副菜の極み158』(扶桑社刊)が発売になり、すぐに重版に。そんな笠原さんのスペシャルインタビューの2回目をお届けします。

笠原将弘さんに聞く、厨房から離れた日常のこと

忙しい日々を送る笠原さんですが、ひとたび厨房から出ると3人の子どもたちの父親としての日常があり、サウナとビールをこよなく愛する飾らない一面も見えてきます。ようやく子育てが一段落したという現在の心境や家族の食卓、普段の暮らし、大好きな晩酌のつまみについて聞きました。

●成長した子どもたちをこれからは見守っていきたい

――シングルファーザーとして育ててきた3人のお子さんたちも、それぞれに成長されたそうですが、毎日の暮らしに変化はありましたか?

笠原:そうですね、長女(24歳)は社会人、次女(22歳)は大学4年生になりましたし、長男(18歳)も地方の大学に入って寮生活を始めたので、毎朝のお弁当づくりからも卒業しました。

――それは、お疲れさまでした。でも、息子さんが家を出られて少しさみしいんじゃないですか?

笠原:親としては、うれしいようなさみしいような複雑な心境です。でも、本人が自炊がしたいというので、この前フライパンや食器を一式送りましたよ。近所のニトリで息子のためにいろいろ選んでいたら、なんだか自分がこれからひとり暮らしをするようなワクワクした気持ちになってきて、あれもこれもと買いすぎちゃいました。もし彼女ができたらその分の食器もいるかな?と2人分ずつ皿とグラスをそろえたり。そしたら、「こんなにあってもしまうところがないよ!」と怒られましたけどね。

もちろん僕のレシピ本も大量に送りました。ときどき「今日はこれをつくったよ」と、炒め物やパスタの写真を送ってくれるんです。それが見覚えのない料理ばかりで、「あれ? 送った本を全然参考にしてないじゃないか」と思いますが、料理初心者の彼からすると僕のレシピはまだ難しいみたいです。家を出て初めて、父親の偉大さに気づいたかもしれませんね(笑)。

――2人の娘さんたちとの関係はいかがですか? 一緒に食卓を囲むときには、どんな話をされるのでしょうか?

笠原:娘2人は相変わらず家にいるので、仕事から帰って晩酌をするときにまだ起きていれば、簡単なつまみで一緒にお酒を飲んだりもします。家族だから、本当に他愛もない話ばかりですけどね。彼女たちが話すのは、今日会社でなにがあったとか、友達とどこに行ったとか、好きなアイドルの話とか。僕もその日店であったことや仕事で会った人の話をしたり。そもそも僕はたまにしか家にいないので、「それ、わかる!」と共感してくれたり、「すごい!」と喜んでくれたり、わりとよく話は聞いてくれますね。

最近は、娘たちにすすめられてネットフリックスで韓国ドラマを見始めました。最初は軽い気持ちでなんとなく見ていたんですが、話がすすむにつれてどんどんハマってしまい、気づいたら朝の4時なんてことも。今までは、テレビをゆっくり観る時間もなかったんですが、たまには料理とまったく違う世界にどっぷり浸るのもおもしろいなと思いましたね。次は韓国のゾンビものを観る予定です。

●大好きなサウナ通いと仕事終わりのビールが最高の癒やし

――笠原さんの意外な一面を垣間見ることができました(笑)。ところで笠原さんといえば、昔からサウナ好きで有名ですが、今も変わらず通われていますか?

笠原:もちろん、サウナには毎日のように通ってますよ。最近、西麻布に新しいサウナができたのでさっそく行ってきたんですが、なかなか快適でテンションが上がりました。でも、僕はちょっと危険なにおいのする昭和っぽさが残るサウナに惹かれるんですよね。サウナだけじゃなく、居酒屋や飲食店も昭和感のある店が好きです。町中華やおそば屋さんとか、ずっと変わらず親父さんが出前をしているような店を見つけると、つい入ってみたくなりますね。

去年自宅を引っ越したんですが、ちょっと一本路地を曲がったところに、昔からある僕好みの渋い居酒屋があったんです。でもひとりじゃ入りづらいなと躊躇していたら、偶然その店の常連だという地元の後輩がいて連れて行ってもらったんですが、雰囲気もメニューもなにからなにまで僕の好みにドンピシャでした。

――居酒屋では、いつもどんなおつまみを注文するんですか?

笠原:僕はごく普通のものが好きですね。焼き鳥、枝豆、ポテトサラダに、店のおかみさんがつくった煮物とか。食卓に小鉢みたいななおかずがいろいろ並んでいると、それだけで気持ちが満たされるんですよね。それにキンキンに冷えたビールがあれば、もうなにもいうことありません。小鉢の話が出たついでに言うと、僕の最新刊『笠原将弘の副菜の極み158』には、おつまみにもなる副菜がたくさん載っています。

家庭で料理をつくる方、毎日の献立に悩んでいる方はもちろん、「今日のお通しは何にしよう?」と悩んでいる全国の居酒屋の店主のみなさんやスナックのママさんたちにも役立つレシピばかりなので、ぜひ手に取ってみてください(笑)。ちなみにこの本の中の僕のイチオシは「納豆のクレソンあえ」です。

笠原将弘さんが愛する「納豆のクレソンあえ」を始め、毎日の献立に役立つ副菜の数々が掲載されている『笠原将弘の副菜の極み158』(扶桑社刊)はただいま発売中。