「就活で負け組だと思う人」の考え方の悪いクセ
自分は就活で負け組?学生からの相談です(写真: xiaoping /PIXTA)
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以下支離滅裂な文章お許しください。私は現在大学4年生で、就職活動を行っています。公務員になりたいと思い、勉強していましたが、希望勤務地の公務員の倍率が高いため、民間企業も併願しました。
自分自身の能力が低いため、どちらもこなすことができず、民間での就活が主になってしまいました。目指すべきものに一心に取り組めないメンタルの弱さ、忍耐力のなさ、計画性のなさなど自分の弱さや悪いところを改めて実感しました。
本当に大切なことは自分の働きたいと思う場所の試験に向け一心に取り組むことであったはずなのに、内定を早く取らなければいけないという気持ちにとらわれてしまいました。そして現在、面接を受ける日々を送っていますが、希望勤務地を重視すべきなのか、自分の興味のある職種を優先すべきなのか、などの迷いや、自己否定感、もう引き返せないという絶望感にさいなまれています。どうにか現状を打開したいのですが、自分の軸がわからず、自分は負け組だと感じます。
TH 学生
就職活動はいわば自分探しの旅のようなものですから、大いに悩むこと自体はむしろいいことです。
そのような就職活動において、いちばんやってはいけないのは苦労せず、労力をかけずに内定をもらえそうなところを選んでしまうことです。
つまりは、苦労してなんぼの世界なのです。
苦労することで、本当にやりたいことが見える
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苦労して、いろいろとやってみて、悩むことで、自分にとっての向き不向きみたいなものを知ることができます。そして自分を理解し、持つべき目標に対して納得したうえで、将来の道を選ぶのです。
もちろん、本格的な就職活動が始まる前に各種インターンやセミナー、OBOG訪問などを通じて、自分にとっての適性を理解するのが理想ですが、THさんの場合はその限りではありませんから、今更言ってもしかたのないことです。
ではどうすればよいのでしょうか。
そういった、本来事前にやっておくべきであったことを就職活動を通じて行えばよいのです。
就職活動を通じて、自分自身を知る。そのためには、数をこなすことも重要です。
最初の段階で頭でいろいろと考えて、下手に絞り込むよりも、興味のありそうな業種や職種の説明会などに幅広く参加し、その中で優先順位をつけて志望する会社を探す、でよいと思います。
対象を絞り込むためには、基礎知識が必要です。
就職活動における基礎知識とは、世の中にどんな会社や仕事があり、それぞれがどういった特徴を有しているのか、その中で自分にとっての向き不向きや好き嫌いを理解する、というプロセスです。
THさんは、「目指すべきものに一心不乱に取り組めないメンタルの弱さ」と書いていらっしゃいますが、現時点においてTHさんにとって、「目指すべきもの」が明確ではありませんから、まずやるべきなのはいろいろと自分の目で確かめ、経験し、その中で「目指してもいいと自分が現時点で思える対象」を探せばよいのです。
会社や職場は一生ものではない
そして大切なことですが、就職活動を通じて選んだ会社や職場は、一生ものであるというわけではありません。
自分にとっての適性や、理想と思える職場や仕事探しは、社会人になってからも続くものなのです。
むしろ、学生という立場では限られた情報と知識、経験しか持ち合わせていないわけですから、その時点で選んだ選択肢が一生ものであるという可能性のほうが低いと考えたほうがよいでしょう。
そうであるからこそ、世の中では転職が非常に盛んなのです。
みんな、仕事を始めても、日々悩み、学び、理解し、そしてその中で自分にとってのベターを探しているのです。
つまりは、自分にとっての人生や職業人としての軸を探して苦労しているのです。
現時点において、軸を持てずに悩んでいるTHさんは決して負け組ではありません。大いに悩める大多数の1人にすぎません。
したがって、そのこと自体で自分の評価を勝手に下げてはいけませんし、自分を卑下してはいけません。
永遠に続く自分の軸探しの最初の一歩を踏みだしただけであり、まだ入り口の段階なのです。
内定を取る、ということはもちろん大切ですが、それ以上に長い目で見て重要なのは、この入り口の段階でいろいろと経験し、大いに悩み、自分を理解し、現時点においてベストと思える選択肢を見出すことです。
ある程度、興味ある業種などが絞り込めているのであれば、その周辺を含めていろいろと参加してみる、でもよいですし、そうでないならばあえて制限を外し、幅広く挑戦してみる、でもよいと思います。
業界、職種だけではなく、勤務地や年収なども制限を設けずに、ゼロベースで考えた際に自分は何に惹かれるのか、そしてそれはなぜなのか。
そういったことを考え、そして実際に行動に移すことで見えてくることも多々あるハズです。
少なくとも、行動をせずに、頭で机上の空論であれこれと考えるよりも全然よいと思います。
悩むのが就職活動の基本です。悩めば悩むほど自分自身をより深く知ることができるのです。
反対に言うと、悩まないと自分を知ったつもりになって行動してしまいますから、後々苦労する、ということになるのです。
誰もが悩むプロセスを、みんな遅かれ早かれ経験するわけです。そうであれば、入り口の段階で、できる限り悩みまくったほうがよいのです。
もちろん、繰り返しにはなりますが、説明会やいろんな各種イベントに参加するなど、行動を伴う必要があることは言うまでもありません。
まずは情報をどんどん仕入れることが大事
少なくとも、現時点において自分自身に軸がないということに気がつけた、ということはよいことです。
すでに始まっている就職活動で、この段階で気がつくのが遅かった、と考えるかもしれませんが、知らずに終わるよりも、気がつけた、ということのほうが大切です。
ここで気がついたのであれば、自分自身を知り、軸を見出すために必要な情報を行動を通じてどんどん仕入れる、ということにまずは重きを置けばよいのですから、今やるべきことが明確になったとも言えるでしょう。
情報なくして決断なし、です。いちばん大切なことは、最終的に自分が理想とする場所に少しでも近づく、ということです。
そのためには、どんどん情報を仕入れ、経験をし、日々悩み、自分の現状と理想像を考え、今やるべきことを理解し、そのうえで論理的な行動をとるとよいでしょう。
THさんは、忍耐力や計画性、決断力がないのではありません。足りないのは、どんな道に進みたいのか、自分を知るため、悩むための材料です。
自分を卑下するような考えをやめる
結果を出す、イコール物事を完成させるためには情報や材料が必須です。まずは、気持ちを切り替えて実際に行動しながら情報収集をし、そのなかで自分を理解し、最終的に選択肢を絞り、決断する、という流れに持っていきましょう。
誰もが通る当たり前の道です。むやみに自分を卑下してはいけません。つらい就職活動を乗り越えるためには、自分自身が自分自身のいちばんの応援団でいなくてはいけません。
THさんがそのようなスタンスで、大いに悩み、情報と知識を固め、ご自身の理想とする姿を見出すであろうことを応援しております。
(安井 元康 : 『非学歴エリート』著者)