5月30日から6月1日にかけて、日本ハムが今年から本拠地とする「エスコンフィールドHOKKAIDO」へ行ってきた。日頃から取材をするヤクルトがセ・パ交流戦の開幕カードをこの新球場で迎えることもあり、話題の開閉式屋根つき天然芝のボールパークについて選手、観客目線で追ってみた。


今年3月に開業した日本ハムの本拠地・エスコンフィールドHOKKAIDO

【極端に狭いファウルゾーン】

 この3連戦はすべて18時試合開始だったが、11時には多くのファンが外野エリアで時を過ごしていた(ナイターの日は9時半から14時半まで開放)。この時間帯は試合のチケットを持たずとも入場可能で、運がよければ早出練習をする選手たちを見ることができる。

 観客席から球場を眺めると、まず目を引くのが芝の育成をうながすために外野席後方に広がる高さ70メートルのガラス壁だ。その向こうには北海道の広大な景色が広がる。球場に目を向けると、外野フェンスには三角地帯があるなどいびつな形状になっていて、外野のファウルラインもかなり狭くなっている。

 日本ハムの谷内亮太が言う。

「最初に球場に入った時はやりづらいのかなと思いましたが、今はいろいろな形の球場があってもいいんだなと感じています」

 谷内は2019年にヤクルトから日本ハムにトレード移籍し、内野のユーティリティとしてチームに貢献している。

「基本、ドームとなると白いイメージがあるんですけど、ここは屋根が黒いじゃないですか。そのことで見え方がこんな違うんだって。あとはガラス壁から自然光が入ってくるので、そこでも見え方や雰囲気が今までのドーム球場とはまったく違いました」

 谷内が守る内野については「天然芝と土なので気を遣うことが多いかもしれないです」と続けた。ちなみに、エスコンフィールドの芝は長めで、土は硬めとのこと。

「現時点で、芝の部分は打球が死ぬ感じなのですが、土のところにくると加速したりすることがあります。今後、芝がどういう状態になるのかわからないですし、慣れが必要かなと思っています」

 外野のファウルゾーンが極端に狭いことについては、「ここでプレーする分にはやりづらいことはないです」と言った。

「ただ、チーム全体としてファウルゾーンが狭いことに慣れているので、ほかの球場で試合をするほうが神経を使うと思います。誰がどこまで打球を追いかけるのかという基準が難しく、内野手と外野手の声かけや連係がより大事になってくる。逆にビジター球団がここに来た時は、追いかけてもファウルになるのであまり影響はないと思います」

 エスコンフィールドはホームからバックネットまで15メートルとかなり短く、全体的にファウルゾーンが狭いつくりとなっている。

「打者として打ち直しが可能なので、ありがたいと言えばありがたいです。僕はまだその恩恵を受けていませんが......(笑)。それはほかの球場へ行った時により感じます」(谷内)

【舞台を見ているようなブルペンの景色】

 日本ハムの試合前練習が進むなか、ヤクルトの山崎晃大朗が言う「ビジターとは思えないほどゆっくりできるクラブハウス」から、ヤクルトの選手たちがグラウンドに姿を見せ始める。

 谷内が山田哲人をはじめ、かつてのチームメイトと旧交を温め終えると、グラウンドではヤクルトの練習が始まった。

 中村悠平は「この前、(WBCで)アメリカの球場で試合をしましたけど、そういった雰囲気の球場ですね。開放感があって、野球場なんですけどボールパークというか、遊園地感覚で楽しめます」と、印象について語った。

 サイスニードは「とてもいい球場!」と親指を立てた。来日3年目の先発右腕は、北海道を訪れるのも初めてだった。

「飛行機を降りると、湿気が少なく暑くないのでアメリカ北部の気候に似ていると思いました。気持ちいい! 球場は2020年に完成したテキサス・レンジャーズの『グローブライフ・フィールド』に似ていますね(※同じ会社が設計)」

 ショートの長岡秀樹は「メジャーの球場はこんな雰囲気なのかなと、ちょっとワクワクしました」と話し、プレーでは天然芝と土のグラウンドの対応の難しさを感じたという。

「芝で打球が死んでも、土が硬いので急に速くなったりします。急にポーンと跳ねますし、練習の時から常に打球を疑って、『ここで跳ねるかな』とか想定しながら守っていました」


日本初の開閉式屋根つき天然芝球場のエスコンフィールドHOKKAIDO

 エスコンフィールドはブルペンが外野にあるのも特徴のひとつで、中継ぎの木澤尚文は「神宮もブルペンは外ですが、また違った感じでした」と話した。

「ブルペンレベルからでもボールパークを感じることができましたし、球場の雰囲気を感じながら準備できるのは新鮮でしたね。マウンドで気になることはなかったです。バックネットまでの距離が短いことも視覚的に違いは感じなかったですし......打ちとったと思った打球がファウルになってしまうくらいですかね」

 セットアッパーの清水昇は、観客席が近いことについて「競った展開での緊張した空気がじかに感じられた」と言った。

「そのことでブルペンから呑まれてしまうこともあります。いい流れの時は、球場が一体になっていい感覚でマウンドに上がれますけど、競っている時に球場の雰囲気と一緒になってしまうのは中継ぎピッチャーにとってよくないことなので、そこは気になりました」

 バックネット側の上段席から見るブルペンは、投球練習するピッチャーの頭上にスポットライトが当たり、まるで舞台を見ているような独特な景色だった。

「正直、上から照明が当たることってないので、最初にブルペンに入った時はすごく違和感がありました。ほんとに上からドーンと照明が当たって、自分の影がはっきり見えるなかで投げないといけない。景色がまったく違うんです。東京ドームやバンテリンドーム、甲子園のブルペンの室内は蛍光灯で、そんなに影は映らないですから。自分の影が見えるのは気になりましたけど、それを理解していけばいいと思いました」(清水)

【試合終了後も飲食店は営業】

 前出の山崎は「きれいですし、ほかの球場と違うというか、新しい球場っぽさをいろいろ感じました」と話した。

「外野に関しては、右中間が狭かったというか、球場独特の広がりがなく、芝も長く柔らかい印象を受けました。フライは、屋根が黒いからボールは見やすかったです。ただ、練習中に打球を追ったら照明と被るところがあるので、そこは気になるかもしれないですね」

 さらに山崎は「僕自身はいろいろと見える角度が独特でした。応援団の席も外野ではなく内野でしたし」と振り返った。なかでも気になったのが、ネクストバッターズサークルの位置だったという。

「ふだんはバッターのちょっとうしろにあるのですが、ネクストがベンチ寄りというか......僕としては打席と同じくらいの角度でピッチャーを見たいのに、バッターよりもピッチャーの前にいる感じです。どうすればいいかなと考えていたら、ミンゴ(ドミンゴ・サンタナの愛称)はネクスト関係なしに見ていたので、そういうのもありなのかな(笑)」

 そしてエスコンフィールドの最大の魅力は開閉式屋根つき天然芝にあり、5月31日は日本ハムが練習している途中まで、屋根が開いた状態で行なわれた。北海道の空はどこまでも青く、太陽に照らされた天然芝の鮮やかな緑は圧巻の美しさだった。

「屋根が開いた状態で練習したのは初めてですが、本当に開放感があって、同じ球場なのに雰囲気がまったく違うなと感じました」(谷内)

 7月1日のオリックス戦では、初めて青空の下で試合が開催される。谷内は言う。

「試合になれば風も吹くでしょうし、気をつけることはたくさん出てきますけど、僕らも違う気持ちで、いい雰囲気で試合を楽しめると思いますし、見ている方も特別な日になるんじゃないですかね」

 エスコンフィールドでは試合終了後も飲食店は営業していて、多くの観客が余韻にひたることができるが、球場を出ると帰る人たちでごった返す。

「○○へのバスは1時間待ちです」
「北広島駅へ歩く方は左の道をお通りください」

 北広島駅に向かって歩きはじめた。人の列が駅まで続くので迷うことはない。家族連れ、友人同士......それぞれが野球談義に花を咲かせ、約25分の距離は苦にならないようだ。駅に着くと、球場から到着したシャトルバスの乗客も合流。改札口は大渋滞となったが、これも「野球の一部」と思えば幸せな時間なのだった。

 北海道は開拓の歴史。5年後、10年後、エスコンフィールドの風景がどうなっているのか、楽しみでならない。