チーム8コンサートの終盤であいさつする小栗有以さん(中央)。AKB48の中でも「なかなかチーム8って認めていただけなくて…」などと話す場面もあった

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47都道府県からメンバーを1人ずつ集めたAKB48の「チーム8」が2023年4月30日、横浜市内でコンサートを開いた。チーム8は22年10月、このコンサートと4月6日に東京・秋葉原のAKB48劇場で行われた「チーム8 9周年公演」をもって活動を休止することを発表しており、チームにとって大きな節目を迎えた。

チーム8は14年、トヨタ自動車の支援を受けて発足。AKB48の他のチーム(A、K、B、4)と離れた独自の活動も多く、東京都代表の小栗有以さん(21)は終盤のあいさつで、AKB48の中でも「なかなかチーム8って認めていただけなくて...」と、かつての不遇ぶりに言及する場面もあった。ただ、最近のAKB48のシングル曲ではチーム8出身者は「一大勢力」で、センターポジションを務めることも多い。いみじくも、16年に出版されたAKB48の「公式10年史」では、20年にはチーム8メンバーが「AKB48のセンターや看板メンバーになっている可能性が高い」と指摘していた。この「予言」を的中させた上での大団円だ。

「リクアワ」で恒例化したトップ争い

チーム8は、AKB48の「会いに行けるアイドル」とは逆の「会いに行くアイドル」がコンセプト。オーディションを47都道府県で行って「代表」を選び、イベントやコンサートで全国を多く回ることで、従来のAKB48と差別化した。チーム8のファンは「エイター」と呼ばれ、特に熱量が高いことでも知られる。20年まで行われていた、楽曲に投票してランキング形式で発表するコンサート「リクエストアワー」では、チーム8の代表曲「47の素敵な街へ」がトップ争いを演じるのが恒例で、19年には1位を獲得した。

ただ、独自路線に当初はメンバーが苦悩していたのも事実だ。この日のコンサートは昼夜2公演が行われ、夜公演終盤に「47の素敵な街へ」を披露した直後に小栗さんがあいさつ。涙ぐみながら次のように述懐した。

「楽しいこととか、うれしいこととか...悔しいこととか、苦しいこととか全部チーム8メンバーはみんなでともに共有してきました。最初はAKB48の中で、なかなかチーム8って認めていただけなくて...。みんなで、スタッフのみなさんとチーム8メンバーとで、たくさんもがきました」

チーム8の全メンバーは、18年4月の「組閣」と呼ばれるチーム再編成で、AKB48の既存チームと兼任する体制に移行。これを機に、チーム8出身者のグループ内での存在感も高まった。小栗さんがAKB48のシングル曲「Teacher Teacher」(18年5月発売)でセンターを務めたのに続いて、「元カレです」(22年5月発売)では栃木県代表の本田仁美さん(21)をセンターに抜てき。本田さんは日韓合同ユニットIZ*ONE(アイズワン)の2年半にわたる活動を経てAKB48に復帰したばかりで、K-POP仕込みのダンスも話題になった。最新曲「どうしても君が好きだ」(23年4月発売)でも本田さんがセンターを務め、16人いる選抜メンバーのうち6人をチーム8出身者が占める。

東京五輪見越して「下積みや挫折の経験を踏んで、最高に輝くアイドルにと、長期展望で」

この状況を予言していたとも言えるのが、「涙は句読点 AKB48公式10年史」(2016年、日刊スポーツ新聞社)に収録されている記事だ。トヨタ自動車の村上秀一・国内企画部長(当時)のインタビュー記事で、チーム8発足の狙いが大きく2つあったことが説明されている。ひとつ目が、全国で車を売るトヨタと全国にアイドルを広めようとするAKB48とで「地方創生、地方活性化」の姿勢が合致した点だ。もうひとつが、トヨタが最上位スポンサーの1社だった東京五輪・パラリンピックに向けた取り組みで、村上氏によると「2020年に向けて、スポーツを盛り上げなければいけません」。

インタビューでは地の文で

「デビュー時のメンバーの平均年齢は14.4歳。東京五輪の時に20歳になる。 AKB48のセンターや看板メンバーになっている可能性が高い」

と指摘した上で、村上氏が

「(編注:チーム8が発足した14年から)この6年で下積みや挫折の経験を踏んで、最高に輝くアイドルにと、長期展望で見守っています」

と話している。

その後、トヨタによる支援は終了。21年3月には「サポート体制の変更」を理由に、ウェブサイトのドメインも「toyota-team8.jp」から「akb48team8.jp」に変更された。コンサートでは、トヨタへの感謝を込めてトヨタ自動車やトヨタレンタカーのCMソング「恋する充電プリウス 〜恋するフォーチュンクッキー2〜」「好きだ好きだ好きだ」も披露された。

「バラバラになっても心をひとつに、48グループをみんなが盛り上げようという気持ち」

コンサート時点でのチーム8メンバーは29人。すでに卒業を発表している人もいるが、大半のメンバーは兼任先のチームでAKB48メンバーとしての活動を続ける。ただ、前日の4月28日に開かれたAKB48のコンサートでは、従来のチーム制とキャプテン制の「休止」が発表されたばかりだ。運営会社の発表では、その狙いを

「今後の劇場公演は同世代や同期の組み合わせなど、多様な編成にリニューアルしていく予定です。チームの垣根を越えて一丸となりさらなる飛躍を目指すこれからのAKB48にぜひご期待ください!」

と説明しているが、メンバーからはSNSなどで困惑の声が上がっているのも事実だ。

小栗さんはこういった状況を念頭に、次のように決意表明。会場からは大きな拍手が起きていた。

「チーム(チーム8)として今回休止になって、AKB48自体もチームがそれぞれバラバラになることが発表され...。チームはバラバラになってしまうんですけど、AKB48がまた、みんなが、気持ちがひとつになるきっかけのひとつだと思っています。なので、バラバラになっても心をひとつに、今はこの、48グループをみんなが盛り上げようという気持ちで、これからひとりひとりがまた前に向かって突き進んでいけたらいいなと思います。チーム8は、私たちの青春そのものでした。私たちはチーム8が大好きです!」

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)