写真提供:法政大学たわし散歩サークル小金井支部(@wtws_koganei)

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洗浄用具のタワシをペットのように散歩させる「たわし散歩サークル」の活動風景が、ツイッターで「なんかよく分かんないけど面白そう」「不覚にも癒されてしまった...」などと注目を集めている。詳しい経緯やタワシ愛を、関係者が語った。

「小さくて可愛い生き物が着いてくるという健気さ」

話題となっているのは、ツイッターアカウント「法政大学たわし散歩サークル小金井支部」(@wtws_koganei)が2023年4月22日に投稿した動画だ。紐に繋いだタワシを引きずり歩く5人の集団が映されている。かねて「第一回たわし散歩」として参加を呼びかけていた。

動画は168万回以上再生され、投稿には「なんかよく分かんないけど面白そう」「不覚にも癒されてしまった...」「私もたわし散歩したくなった」「なんだこれw」と様々な声が出ている。同様のサークルに関しては、明治大学、立教大学、青山学院大学、中央大学を名乗るアカウントも現れている。

法政大学たわし散歩サークル・多摩本部長と小金井支部長が26日、J-CASTニュースの取材に答えたところによると、本部は設立して約1年、小金井支部は4月に出来たばかりだ。市ヶ谷支部もあり、非公認サークルながら全体で80人近く所属している。本部長はタワシ散歩の魅力を次のように話す。

「引っ張ったら小さくて可愛い生き物が着いてくるという健気さ。とにかく可愛いんですよ。それが一番ですね。うちは動物が飼えないので...生き物が飼えない方に刺さるんだと思います」

メンバーはタワシに目玉パーツを付け、名前を与え、授業の合間に散歩させたり旅行に連れたりしている。名前は例えば、おさかなちゃん、しめさばちゃん、ひじきちゃんなど。

本部長は「トラタワシの『とらちゃん』」と「すきやきちゃん」。小金井支部長は「かねまぴー」と直感的に命名し、「ビジュアル的な可愛さもそうですし手触りも凄い良い」という。ペットのようでいて死ぬこともない。

批判的な声も...メンバーを「守っていきたい」

本部長は散歩をする際、タワシが「苦手そうな道」に気を配っているとも話す。ひっくり返ると目が取れる場合があるため、段差などは浮かせて運ぶ。時には虫かごに入れて歩く。

裏面が汚れるため、散歩後は除菌スプレーをかけているが、丸洗いする発想はなかったようだ。「生き物感が強くて水はダメかなと思って。タワシって濡らして良いんだっけ?みたいな」と笑い、タワシ愛の深さをみせる。

サークル設立の経緯には、タワシ散歩の本家とする「タワシおじさん」(@tokorozawaaisu)の影響があった。都内での目撃情報やテレビ出演によりインターネット上で一定の知名度を誇る人物だ。本部長は、大学入学前にタワシおじさんを見かけ、タワシ散歩の虜になった。

「みんなでタワシが散歩できたら楽しいだろうな」と構想を温め続けサークル設立に至った。その後、本部の活動に惹かれて、小金井支部が立ち上がった。

投稿の反響を受けて支部長は、「『いいね』が集まることよりも、色んな人にこの活動が広まっていくのが1番嬉しい。1人でも多く始めてくれたら」と喜ぶ。実際に入会希望のダイレクトメッセージ(DM)が届いたと明かす。ちなみに同支部は他大学生も受け入れており、初回は近隣の東京農工大学や早稲田大学からの参加があった。

タワシ散歩の動画には、ライバル球団のぬいぐるみを引きずる野球ファンの姿と重ねて面白がる声も上がっている。支部長は「それは全然違う」「僕らはタワシが好きで、可愛くて引っ張ってるんです」と熱弁する。

寄せられたのは好意的な反応だけではない。本部長は、衆目を集めると批判が出るのは仕方ないとしつつ、活動に集中できるよう「メンバーの皆をちゃんと守っていきたい」とした。

タワシおじさん「楽しんでやっていただければ」

一方、タワシおじさんは26日、タワシ散歩サークルの広がりは温かく見守っている旨を取材に答えた。「多様性を尊重して、自分とは異質なものに寛容に皆がなってくれれば」との思いを伝え、持論を述べた。

「本来は流しで皿を洗ったり風呂場や床を磨いたりするもので、非生物なのにペットのように散歩するということを通して、タワシは洗うものだという観念から自由になる、枠を外すという意味もあります。

単純に、子どもたちなどが見るとケタケタ笑ったりするのが楽しいと言うのもありますし、学生たちも楽しんでやっていただければ」

タワシの散歩を始めたのは10年以上前。地元の埼玉・新所沢で、白菜を紐に繋いで歩く人を目撃したのがきっかけだという。はじめは相手について調査しようと思い立った。自身が再現を試みるなどしているうちに、紆余曲折の末、現在に至る。

法政大学たわし散歩サークル・多摩本部長によると、タワシおじさんとはツイッターで交流している。手製のタワシをもらえるという話もあり、対面の計画を詰めていきたいとする。

今後のサークル活動については、大学内での合同散歩会を第一の目標にしている。「みんなで散歩させたら凄いインパクトと可愛さなので」と本部長は意気込む。

「タワシ散歩の活動は本当に楽しくて可愛いです。タワシおじさんのほうも『タワシ散歩は自由!』とおっしゃっているので、それぞれ好きな形でタワシ散歩に目覚めて、楽しんでくれたら、ハッピーになってくれたら良い」

小金井支部長は、同支部の活動を進めつつ、7月2日に控える「タワシの日」に向けて他大学への普及を志す。今年は日曜日のため、「他の大学ともタワシをお散歩したい」。「ネットから広まるものは地域性がないから、ほかの都道府県に広がっていくのも早い」と期待している。