中国向けのBaidu・Bilibiliなど8つの検索サイトで6万パターンを超える政治・宗教を検閲するルールが存在することが明らかに
トロント大学が率いるデータ分析団体のシチズン・ラボが中国の8つの検索プラットフォームを調査した結果、検索結果を検閲するために使用される約6万件のルールが存在することが分かりました。
Missing Links: A comparison of search censorship in China - The Citizen Lab
https://citizenlab.ca/2023/04/a-comparison-of-search-censorship-in-china/
FAQ: A comparison of search censorship in China - The Citizen Lab
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シチズン・ラボのジェフリー・ノッケル氏らが調査したのは、中国で最も使われている検索エンジン・Baiduを始め、検索エンジンのSogou、Microsoft Bing、ソーシャルネットワーキングサービスのWeibo、Douyin、Bilibili、質問回答サイトのBaidu Zhidao、eコマースサイトのJingdongという8つの検索プラットフォームです。この中で唯一、Microsoft Bingだけが中国企業によって運営されていないプラットフォームでした。
調査の結果、8つの検索プラットフォームすべてにおいて、検索クエリの一部または全部を検閲するために使用される6万件以上の検閲ルールが見つかりました。検閲ルールの多くは、習近平氏のような中国の政治家や、法輪功のような禁止された運動、天安門事件のような重大な歴史的出来事への言及など、政治的に敏感なものを対象にしていました。また、ギャンブルや薬物使用、ポルノ、武器の売買など、違法行為を対象とした規則もありました。
検閲ルールの中には、「中国间谍气球(中国のスパイ気球)」「成以下一个乌克兰 台湾(次のウクライナ 台湾)」「逮捕令 普京 习近平(逮捕状 プーチン 習近平)」などを意味する言葉が含まれていたとのこと。また、規制は中国語だけでなく英語やウイグル語にも及んでおり、「自由」や「我々の祖国」を意味するウイグル語が規制されていたと報告されています。
ノッケル氏らによると、検閲は大きく分けて「ソフト」なものと「ハード」なものがあるそうです。ソフトな検閲とは、あるクエリに対して「特定の認可されたソース」からの結果のみを表示するもので、通常は中国政府のサイトや中国の国営メディアからの結果だけをユーザーに見せるようになっているそうです。SNSでは、一定レベルの承認と検証を受けたアカウントからの検索結果のみが表示されます。ハードな検閲とは、クエリに対する検索結果をゼロにする、より厳しい検閲のことを指します。
8つのプラットフォームのうちMicrosoft Bingだけが外国企業所有のプラットフォームであり、検閲は中国本土からアクセスするユーザーのみに限定されていました。しかし、それ以外の7つのプラットフォームでは、中国本土からアクセスしているかどうかに関係なく、すべてのユーザーに検閲が適用されていたとのこと。
一方で、Microsoft Bingは検閲ルールの総数こそBaiduに劣るものの、「政治的」な検閲ルールはBaiduよりも幅広く、より多くの検索結果に影響を与えていることも分かっています。ノッケル氏らは「この発見は、北米の企業が中国企業以上に中国人ユーザーの人権を侵害していることはない、という直感に反しています」との見解を示しました。
Googleなどの検索エンジンは、国によっては違法とされるコンテンツへのアクセスを管理し、検索結果に表示しないようにしています。ノッケル氏らは「Googleなどとは違い、中国は主に中国共産党にとって不都合な政治や宗教のコンテンツを禁止しています」と指摘しています。
ノッケル氏らは「BaiduはBingよりも検閲ルールが多いものの、Bingの政治検閲ルールはBaiduよりも幅広く、より多くの検索結果に影響を及ぼすことがわかりました。私たちの研究は、非中国系テクノロジー企業が中国系企業よりも検閲に抵抗できるという前提を疑問視するものです。他の非中国系テクノロジー企業が、中国系企業と同程度の政治・宗教表現の規制を受け入れることなくサービスを展開できる可能性に対する悲惨な予測です」と述べました。