神戸DF山川哲史が全部答える!「Jで全く対応できなかった選手」「古橋は異次元」「昨季の低迷を経て」

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昨シーズン、前半戦でわずか2勝と絶不調に陥り、J2降格の危機にあったヴィッセル神戸。

しかし3度目の監督就任となる吉田孝行氏のもとで立て直しに成功し、終盤の5連勝でなんとか残留に」成功すると、今季は開幕から6勝1分1敗の快進撃で首位を走っている。

その神戸において、大卒4年目にしてスタメンで活躍しているのがDF山川哲史だ。Qolyは今季開幕直前、25歳のセンターバックに単独インタビューを実施した。

インタビュー第3弾では、Jリーグで対戦してやりづらかったドリブラー、元同僚・古橋亨梧のFWとしての“いやらしさ”、さらには昨季の神戸や神戸だからこそ向上した部分などを中心に聞いた。

(取材日:2023年2月16日)

――Jリーグで対戦してやりづらかったドリブラーは?

横浜F・マリノスのエウベル選手が一番やりにくかったです。

単純なスピードと馬力がありますし、ボールを受けて正対して1対1というより一回中に入ってから縦に来るプレーが多く、しかもそこのスピードがとっても速くて。

初めてやった時はもうまったく対応できなかったですね。

――神戸からスコットランドのセルティックへ移籍した古橋亨梧選手が向こうで得点を量産しています。ディフェンダーとして感じた古橋選手の“いやらしさ”みたいなのはどんなところです?

今もそうだと思うんですけど、クロスからの得点、ワンタッチのゴールが多いじゃないですか。

自分も一緒に練習していてすごく思ったのは、僕の背中にいる時の動き。ニアに入っていくのかファーに逃げるのかみたいなところの動きが多すぎて、まったく的を絞れませんでした。

後ろにいて、ディフェンダーの逆を取って、そこにボールが来るか来ないか。来ればもう触ってゴールみたいな感じです。そこのクロスに入っていく時の駆け引きがめちゃめちゃ上手いですし、もちろん一瞬のスピードも速い。

最後、触るか触れないかのところで先に触ってゴールしているシーンがたくさんありますし、そこの駆け引きとスピードが異次元です。

――神戸は昨シーズン、苦しい時期があり、ただそれを乗り越えてきたチームだと思います。チームとしての変化はどんなところに感じますか?

昨年で言うと、全体の中でやっぱり雰囲気の悪い時期もありました。

雰囲気が悪くなって自分たちで「これじゃダメだ」とミーティングをして良くなって、また時間が経ち調子が悪くなってきたらまた自分たちで下げてしまってみたいなことの繰り返しでした。

そこは教訓として昨年いた選手全員の心に残っていると思いますし、今年のシーズンが良いか悪いかは始まってみないと分からないですけど、仮に1年間を通して良くなくても、悪い時期があったとしても、全員の心構えというか普段の練習中から意識することなどは整理できています。

昨年の経験があったからこそ今年はそういった時でもチームがバラバラにならず、一致団結して戦っていけるんじゃないかと思います。

――今の神戸には、アンドレス・イニエスタというすごく大きな存在の選手がいます。同じピッチにイニエスタ選手がいるというのは率直にどんな感じなんです?

これは良い意味でなんですけど、やっぱりちょっと慣れてしまったというのは若干あります。アンドレスがすごいプレーをしても「まあまあまあ」みたいな。「それくらいしてくれるでしょう」みたいな感じで(笑)

とりあえず渡せばボールを失わないですし、もし僕がセンターバックをやるにしてもサイドバックをやるにしても、困った時にアンドレスの場所だけ分かっておけば、アンドレスに渡れば取られないので。

それでもやっぱり、“言語化できない凄さ”がありますね。

――ボールを持つことに関してすごく特別なものがある選手だと思います。三笘選手のドリブルとイニエスタ選手のドリブルの違いみたいなところではどんなことを感じますか?

お互いに相手の重心を見ているというか、どちらの足に体重がかかっているかを見て、逆を取ってくる感じがすごく似ていると思います。

薫はそこからどちらかというとスピードで抜いていく感じなんですけど、アンドレスの場合は…何て言うんですかね。一瞬のスピードが速くて、ボールが足もとから離れずにドリブルをしてきます。

単純なスピードだけでいえば、薫のほうが速いとは思います。アンドレスはドリブルしている時に足もとにボールがあるので、抜きに来た時に自分が対応すると逆に変えることができたり、僕が取りにいった瞬間にパスを出せたりみたいなところがあります。

ずっと一緒にサッカーをしていて色々な選手にも聞いているんですけど、そこを言語化できる選手はあまりいないのでちょっと難しいですね。どう説明していいか分からないんですけど、近寄れない感じがあります、アンドレスは。

――イニエスタ選手のところだけ特別な空間があるように見えるのはそういう何かなんですね。

時間が若干遅く流れているみたいな、アンドレスだけが速く動いているみたいな感じの。難しいんですけど本当にそういう感じです。

――サイドバックでいうと、酒井高徳選手の存在もチームにとってすごく大きいと思います。酒井高徳選手はどんな存在です?

「先生」という感じですね。僕よりも何年も長くサッカーをしてきて、またすごい世界のトップレベルでプレーされてきて。試合中に考えていることのレベルがやっぱり全然違うと感じさせられますし、真似をしようと思ってなかなかできるようなレベルではないです。

普段の練習から分からないこととかを聞いていますし、逆に高徳さんから話しかけてきて教えてもらうこともたくさんあります。普段の練習から色々と吸収して、僕が年齢的に上になってきた時には同じように下の選手に伝えられるようになりたいと思っています。

――昨シーズン、プロ初ゴールをホームの北海道コンサドーレ札幌戦で決めました。ちょっとあれが気になっていて。本来であれば山川選手は身長的にエリア内にいるはずじゃないかなって。下がって受けて、綺麗なミドルシュート。なぜあそこにいたんですか?

あの試合って、(山口)蛍さんは出ていましたっけ?(※欠場)。たしか普段はあそこが蛍さんか誰かなんですけど、出ていなくて、僕がこぼれ球をやる予定だったんです。

もともとこぼれ球のポジションの予定だったんですけど。あのコーナーキックの1本目はたしかトリックプレーみたいな決まり事があって。僕がそれを忘れていて、最初はこぼれ球のところにいたんですけど、その1本目だけは(僕が)中にいてやるトリックプレーで、遅れて行って…。

「マズい」と思って下がることにしたら、目の前にボールが来たので、蹴ったら入りました。

※ゴールシーンを振り返ると、たしかにエリア内に走りこもうとした山川(23番)がキッカーが蹴る直前、再び後ろに下がっている…。

――そんな経緯があったんですね。でもあのシュートは気持ちよかったんじゃないですか?

ジャストミートしてはなかったんですけど、ピッチも水を巻いていてスリッピーだったのでそれのお陰で入りました。気持ちよかったです(笑)

――神戸ではそういった素晴らしい選手たちと一緒にプレーされています。プロでの成長というか、神戸だからこそ向上した部分はいかがです?

やっぱり各選手、特に上の選手なんかは海外のトップでプレーしてきているので、普段のロッカーでのサッカーの話などもヴィッセル神戸じゃないと聞けないレベルの高い話を聞くことができます。

サッカーの戦術的な部分や個人戦術、心構えやメンタル的な部分でもやっぱりブレない選手が多いのでそういうところはすごく参考になりますし、成長につながっているかなと思います。

――今シーズンの神戸で見てほしい部分は?(※インタビューは開幕直前の2月16日に実施)

やっぱり個の部分。個に秀でた選手がたくさんいるのでそういった選手たちがマッチした時、うまくいった時には練習でもレベルの高いプレーが生まれたり、すごい連携でゴールが決まったりしています。個の融合というかそういったところを合わせていきたいです。

あとは、プロサッカー選手として色々な方に感動を与えたりするのはやっぱり「戦う姿」だと思います。ピッチで戦う姿勢は試合に出ている選手だけではなくベンチの選手やベンチ外になった選手全員を含めて、誰がいつ見ても戦っているなと思われるような姿勢を示していきたいと思います。

――最後に神戸のファン・サポーターへのメッセージお願いします!

今のと少し重複するのですが、僕は技術的な選手でもないですし、そういうタイプの選手ではないので、個人的には本当にピッチの中で一生懸命戦う姿を見せていきたいです。

昨年はやっぱりファン・サポーターの方々に喜んでもらう機会が少なかったので、今年はより多くの勝利を届けられるように、喜びを分かち合えるように、とにかく全力で毎日準備をして、一つ一つの試合に懸けてやっていきたいと思います。

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今季の好パフォーマンスから、日本代表入りも現実味を帯びている山川哲史。サムライブルーでの三笘薫との再会を期待せずにはいられない。

そんな山川にも注目のヴィッセル神戸は今週末の22日(土)、昨季王者の横浜F・マリノスとホームで対戦する。