画像:『マンガでわかる!「わたし、発達障害かも?」生きるのがラクになる「話し方」あります』より

発達障害の人やグレーゾーンの人が困りがちな「コミュニケーション」における問題を、漫画と共にご紹介する本連載。第1回は“より現実的に”改善していく方法について考えてみます。

精神科医・ゆうきゆう氏と漫画家Jam氏のコラボによる『マンガでわかる!「わたし、発達障害かも?」生きるのがラクになる「話し方」あります』から一部抜粋、再構成してお届けします。


天才、才能がある……にウンザリ

「発達障害の人には天才が多い」

「発達障害の人には突出した才能があるから、その才能を伸ばしていけばいい!」

書籍やテレビ、ネットなどでそんなふうに語られていることが多くあります。それらを見て、「またか……」とウンザリしたことはないでしょうか。

発達障害のある人、グレーゾーンの人の中には、

「発達障害のいい面はもう聞き飽きた! でも実際、自分はそのいい面を活かせていない! それどころか日常生活がうまくいかなくて困っているんだ! 今、目の前にある問題を改善する方法を知りたいんだ!」

そんなふうに思っている人は少なくないのではないでしょうか。

そこで本記事では、より現実的に、発達障害の人が困りがちな人間関係を少しでもよくする「話し方」のコツを紹介します。

ちょっとしたコツでコミュニケーションに自信がつきます。職場の人やまわりの人と「安心して」コミュニケーションが取れるようになると、仕事も人間関係もラクになり、生きづらさも軽減できます。


話は、伝わればそれでいい

発達障害の人の中には完璧を求め過ぎてしまったり、失敗してはいけない、恥をかいてはいけないという思いが強い人がいます。こういった「完璧主義」の傾向は、必要以上に自分自身を苦しめてしまうことがあるので注意しましょう。

どんなことでも「うまくやろう」と意識すると、緊張してかえって失敗してしまうものです。

たとえるなら、走るのが苦手な人が100m競争で「ゴールしよう」と「かっこよく走ろう」をセットで叶えようとするようなもの。「うまく走りたい」という意識のせいでかたくなってしまって、ぎこちない走りになってしまうことも多いのです。最悪の場合は、転んでケガをしてしまったり、走れなくなってしまう恐れもあります。

会話もこれと同じです。話すのが苦手な人が「もっと流暢にかっこよく話そう」とばかり考えていると、「伝える」という本来の目的が果たせなくなってしまう恐れがあります。

よってシンプルに考えましょう。流暢に話せなくても「相手に伝わればそれでいい」とハードルを下げましょう。そうすれば緊張しにくくなります。


自分なりの話し方の型をつくる

発達障害の人の中には、複数の物事への注意の分配が難しいため、マルチタスクが苦手な人もいます。

会話の際の「やるべきこと」「やらなくてもいいこと」をあらかじめ“型(ルール)”として決めておきましょう。

自分なりの会話の「型」をあらかじめつくっておけば、考えなくてはならないことを減らすことができ、目の前の相手との会話に集中しやすくなります。また、緊張をやわらげる効果も期待できます。

会話におけるすべてのことを、台本もなく、ぶっつけ本番のアドリブでこなす必要はないのです。

そして重要なことは、会話中に何か失敗したとしても、必要以上に落ち込まなくていいということ。何が悪かったのかを振り返り、対策を立て、自分なりの会話の「型」をつくり上げていきましょう。


「伝えること」は1つに絞ろう

ADHD(注意欠如・多動症)の人は、頭の中に次々と考えが浮かびやすく、それらをどんどん口に出してしまうと「しゃべり過ぎ」になってしまう傾向があります。話題があちこちに飛んでしまうと、聞いている相手も「何が言いたいんだろう……」と混乱してしまいます。


一方、ASD(自閉スペクトラム症)の人には「自分の気持ちや考えをうまく言葉にできない」と悩む人が多くいます。

このような傾向を踏まえ、会話を始める前に「この会話では何を伝えるか」と、「伝えること」を絞りましょう。できれば1つ、多くても3つまでにしましょう。

会話がグダグダになってしまうとしたら、「あれもこれも伝えたい」、または「何を伝えたいのか分からない」という状態のまま漠然と話し始めてしまうからかもしれません。

また、自分の考えを言葉にするのが苦手な人は、日頃から自分の考えや感じたことを、メモに取るなどして「言語化しておく」のもいいかもしれません。

(ゆうきゆう : 精神科医、作家、マンガ原作者)
(Jam : 漫画家・イラストレーター・ゲームグラフィックデザイナー)