飲食店員に「八つ当たり」をする人の心理は? やめるにはどうする? カウンセリングのプロが解説
飲食店や小売店に行ったときに、客が店員に怒りをぶつけるのを見掛けることがあります。なぜ店員に八つ当たりをするのでしょうか。また、他人への八つ当たりをやめるには、どのような対策が有効なのでしょうか。カウンセリング事業などを手掛ける、コレット(広島市西区)の代表、田中よしこさんに聞きました。
心に余裕がない状態
Q.飲食店や小売店に行くと、店員に対して怒りをぶつけている人を見掛けることがあります。なぜ店員に八つ当たりをするのでしょうか。
田中さん「店員に八つ当たりをしてしまうのは、『相手に威圧的な態度を取っても大丈夫だ』『自分は客だから、威圧的な態度を取ってもひどい目に遭わない』などと、無意識に感じてしまっているからです。実は、人は精神的に余裕がないときに、このような態度を取る傾向にあります。つまり、感情のコントロールができないほど、毎日の生活にストレスがかかっているといえます」
Q.では、こわもての相手や、自分よりも体格が大きい相手に対しては、八つ当たりをしないことが多いのでしょうか。
田中さん「そもそも八つ当たりは、自分の怒りやネガティブ感情を人にぶつけるのが目的で、先述のように、八つ当たりをしても『自分がひどい目に遭わない』と思える人に対して、こうした態度を出す傾向にあります。
自分より体格も地位も強い人に八つ当たりをして、逆に感情が出せないとなると、目的が達成されません。八つ当たりをする過程で、無意識のうちに目的に沿って最適な相手を探しているのです」
Q.他人から八つ当たりをされた人は、心理的にどのような影響を受けることが多いのでしょうか。
田中さん「八つ当たりをされた人は、もちろん嫌な思いをします。怒りを感じるのはもちろん、相手にそんな態度を取られたことで、悲しくなりモヤモヤしてしまうでしょう。そのときの感情に引っ張られてしまった場合、『こんな思いをするのなら、もう会社を辞めてしまおうか』と、仕事そのものが嫌になってしまう人もいます」
Q.他人に八つ当たりをした場合、八つ当たりをした本人にも心理的な影響を及ぼすことがあるのでしょうか。
田中さん「意外かもしれませんが、八つ当たりをしてしまい、後悔している人は多くいます。自分でも悪いことをしたと分かっている人も、いらっしゃいます。
覚えておいてほしいのは、八つ当たりをした人の方が、自分へのダメージが大きいということです。なぜなら、私たちは誰もが自分のイメージを持っていますが、他人に八つ当たりをすると『怒りをコントロールできない自分』『他人を巻き込まないと、感情をコントロールできない自分』『人に嫌な思いをさせる自分』など、さまざまなマイナスイメージを受け取ることになるのです。
八つ当たりをする人は、自分の弱さと向き合えていない、劣等感を抱えながら過ごしている状態なのです」
Q.他人への八つ当たりをやめるには、どのような対策が有効なのでしょうか。
田中さん「八つ当たりをやめたいと思っている人は、必ず八つ当たりをしてしまった後に、嫌な感情や罪悪感を持つはずです。その思いが出たときに『私はいつからイライラしていたのかな?』と考えてほしいです。八つ当たりをしてしまうのは、自分の感情が爆発したときです。何日も前から、自分の中で何か我慢しているものがくすぶっていたのです。
そして、どのような部分にいつも引っ掛かっているのか、パターンを探しましょう。例えば、こだわりが強い人は、自分の望みとずれているだけで、他の人よりも腹が立ってしまう傾向にあります。そこで、『自分はこの部分に対するこだわりが強い』『こんなときに腹が立ちやすい』などと理解していると、対処方法を探すことができます。
すぐできる方法は、八つ当たりをしそうになったら、一度その場から離れることです。怒ったりイライラしたりしている人は、呼吸が浅くなっているので、その場を離れて深呼吸するのがお勧めです。その後、冷たい飲み物で冷静さを取り戻してあげましょう」
Q.客からできるだけ八つ当たりされないために、飲食店や小売店ができる対策はあるのでしょうか。
田中さん「対処法ですが、相手をイライラさせる要素が店内にないかチェックするのが大切です。『会計周辺がごちゃごちゃしていないか』『動線が分かりやすくなっているのか』『スタッフがハキハキしているのか』など、働き手も客も気持ちよく居心地のよい店舗を目指すのは、八つ当たりやクレームを防ぐだけではなく、店の繁栄にも大切なので、意識しておいて損はありません」
人に八つ当たりをしてしまう人は、まずは自分を見つめ直す必要があるようです。