「発達障害」の兆候となる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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最近ではよく耳にするようになった発達障害ですが、発達途中のお子さんを持つ親御さんなら気になるところではないでしょうか?

また大人の発達障害ということもよく聞くようになりました。
生きづらいと感じていたら発達障害だったと大人になってから診断される方も増えてきています。

また、仕事などで一緒に働く部下とのコミュニケーションに困っている上司の方や同僚の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は、そのような発達障害について特徴から症状、治療と対策まで詳しくご紹介します。
お子さんの発達・ご自身の感じる生きづらさ・身の回りの方についてなど心当たりのある方はぜひ参考にしてみてください。

発達障害の特徴

発達障害には種類があると聞きましたが…。

発達障害は生まれつき、脳の働き方の違いにより現われる行動や精神的な特徴のことです。
おっちょこちょい・忘れっぽい・あわてんぼう・空気が読めない・よく叱られるなどのことがもしあるのなら、それは脳に特性があるせいかもしれません。
発達障害にはいくつか種類があります。それぞれ診断された障害名が一緒でも症状の現われ方に違いがあったり、いくつかの障害を併せ持っている場合があったりと人それぞれ違います。自閉症スペクトラム障害(ASD)
認知機能や言語などの知的障害は全くありません。社会生活においてコミュニケーションを取ることが難しく、相手の感情を察して反応することが困難です。特定の行動などにこだわりが異常に強く、同じでないと癇癪を起こすこともあります。また自分の興味のあることには何時間でも没頭したりします。

学習障害(LD)
「読む」・「書く」・「計算」のうち特定のことだけが困難に感じます。
全て苦手というわけでもなく、どれか偏った分野が苦手だという風に症状が現われることも多いです。

チック症
チックは自分の意志とは関係なく不意に出る素早い動きや発声のことです。
実際には、まばたきをする・頭を振る・肩をビクッとさせるなどの動きがよくみられます。
主に幼少期(3歳・5~8歳)で発症し、1年以内に症状が治まることが多いです。
1年以上強く症状が持続し、日常生活にも支障が出てしまうほどになる場合にはトゥレット症とよばれます。吃音
吃音は言葉の一部を繰り返したり、詰まったり、引き伸ばしたりするというような言葉がスラスラで出てこない症状が現われます。

グレーゾーンについて教えてください。

発達障害のグレーゾーンとは、以下の障害で発達障害だと診断される基準を全て満たしていない状態の人たちのことです。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

注意欠如/多動症(ADHD)

学習障害(LD)

発達障害だと診断がついていない状態ですが、症状が軽度というわけではありません。
診断基準の90%をクリアしていても、20%だけクリアしていてもグレーゾーンというわけです。

大人の発達障害について教えてください。

発達障害は生まれつきの脳の特性ですので、成長し大人になってから発達障害になるということはありません。
ですが、子どもの頃には特に気にならなかった特徴や症状が進学、就職すると共に表面化して気付くことがあります。
同じミスを繰り返してしまう・悪気はないのに相手を怒らせてしまうなど社会生活の中で自分は人とは何か違うと感じ、大人になってから診断を受ける方も少なくありません。

発達障害の兆候と症状

どのような兆候がみられますか?

それぞれの障害で以下のような兆候がみられることが多いです。主に幼少期で見られる兆候ですので参考にしてみてください。まずは自閉症スペクトラム障害(ASD)です。

目を合わせない

指差しをしない

後追いをしない

微笑み返さない

他の子どもに関心を示さない

言葉の発達が遅い

こだわりが強い

一人遊びが多く、集団活動が苦手

かんしゃくを起こす

次に注意欠陥多動性障害(ADHD)をみていきましょう。

落ち着きがない

座っていても手足をもじもじする

席を離れる

おとなしく遊ぶことが難しい

他人の会話やゲームに割り込む

学習障害(LD)については、全般的な知的発達には問題が無いが、読む・書く・計算するなどの特定のことが困難に感じる場合が多いです。

症状を教えてください。

注意欠陥多動性障害(ADHD)です。

空気が読めないので周囲の人のひんしゅくを買ってしまうことがある

仕事では融通が利かず臨機応変な対応ができない

孤立してしまう・受け待過ぎる・一方的過ぎるなどの対人関係が苦手

方法や順序、並べ方など強いこだわりがあり、いつも通りでないと気が済まない

興味のあることには優秀な結果を残す、興味のないことはほぼ手を付けない

自分の興味のあることばかり話し、相互的な会話が難しい

自分の興味があることは何時間でも熱中してやり続ける

仕事が臨機応変にこなせない

周りの人と違う言動で「空気が読めない」と言われることがある

注意欠陥多動性障害(ADHD)です。

スケジュール管理ができない

他人の会話やゲームに割り込む

学校の勉強でミスが多い

課題や遊びに集中し続けられない

話しかけられても聞いていないように見える

やるべきことを最後までやり遂げない

課題や作業の段取りが苦手

整理整頓が苦手

忘れ物や紛失が多い

気が散りやすい

計画的に物事を進められない

そわそわして落ち着かない

他のことを考えてしまう

感情のコントロールが難しい

最後に学習障害(LD)も確認していきましょう。

読む・書く・計算するといった特定のことができない。

学習成績や社会生活で非常に困難が生じる。

いずれも症状は個人差があります。また社会生活、対人関係においてもうまくいかないと悩み、うつ病などの精神疾患を患う可能性もあります。

発達障害の原因を教えてください。

原因として分かっていること、まだ分かっていないことが発達障害にはあります。
以下にまとめました。脳機能の障害、遺伝・DNA異常においては、遺伝的要因が大きいとされてきたようです。
ですが、両親が正常で子どもが自閉症スペクトラム障害と診断されるケースもかなり多く遺伝的要因を説明できない症例もあり、まだまだ発達障害の脳機能障害は分かっていないことが多いようです。
妊娠中の環境要因についてご紹介します。妊娠期間に母親が感じるストレスが胎児に影響を与えるといわれています。具体的には、

暑さや寒さ

騒音

細菌やウィルス感染

薬や化学物質

心理的ストレス

などがあげられます。後は遺伝要因と環境要因の組み合わせも影響するといわれています。

どのような検査で診断されますか?

いざどこに相談に行けばいいか迷うかと思います。
子どもの場合は小児科・子どもの心療内科地域の療育センターなどに相談できます。
大人になってからの診察は精神科・心療内科に足を運ぶと良いでしょう。
精神科や診療内科でも発達障害について診断してくれる医療機関は限られているので、事前に問い合わせておくと安心です。
主に問診を行い、診断基準を基に診断されます。障害によって、少し診断方法も変わります。自閉症スペクトラム障害(ASD)
診断基準を基に主に問診によって診断。心理検査やRAADSといったスクリーニング検査を併用することもある。注意欠陥多動性(ADHD)
診断基準を基に心理検査と併用した問診により診断学習障害(LD)
診断基準を基に認知能力検査と併用した問診により診断チック症
診断基準を基に問診によって診断吃音
診断基準を基にした問診
文章の読み上げによって吃音の現われ方をチェックする検査を用いて診断

発達障害の治療と対策

治療方法はありますか?

発達障害は早期に発見し、その障害に合わせた療育を受けることで、社会に馴染みやすくなるでしょう。発達障害の治療には大きく3つの方法があります。

心理療法

行動療法

薬物療法

それぞれの障害で見ていきます。

自閉症スペクトラム障害(ASD)
心理・行動療法:専門の施設や専門家の指導の基、家族カウンセリングを行い、家庭・学校・職場などの環境を調整し見直します。また社会生活が正常に送れるように刺激し発達を促したり、異常に強いこだわりを減らすための療育を行うことで予後が良くなることが明らかになっています。
薬物療法:治癒する薬はありません。睡眠や行動の問題が著しく出ている場合、てんかんや精神的な不調に対して薬物療法を併用することもあります。注意欠如・多動性(ADHD)
心理・行動療法:患者本人と家族へそれぞれトレーニングをしていきます。トレーニングは患者本人の年代によって変わり、本人には社会生活を円滑に送るためのトレーニングを行います。家族へは声かけ方法などのペアレントトレーニングを行なっていきます。
薬物療法:環境調整や行動からの療育を行っても日常生活での生きづらさが続くようであれば薬物療法を併用します。薬物療法は二次障害を予防するために使用されます。学習障害(LD)
学習障害には教育的な支援が重要になり、その人が何に困難を感じるのかを把握し、適切な支援・学習方法を見つけることが大切です。

どのような対策を行えば良いでしょうか?

どのような対策を行うかは、障害によって違うというよりも、障害を持っている本人の症状や環境によって異なります。
医師や臨床心理士、理学療法士などの専門の方の指導に従って、その人に合った対策を見つけてください。
ですがどの障害も支える周りの家族などの支援がかなり重要になります。

診断された場合に注意することを教えてください。

上記にも紹介していますが、どの障害も周りでサポートする人の存在と理解がかなり重要です。
家庭では家族・学校では先生やクラスメイト・社会では上司や同僚などです。
発達障害であること・どのような症状で得意・不得意は何なのかを理解してもらうことで社会生活が送りやすくなるでしょう。
また、障害をもっている人に合わせた治療・療育を受けることによって予後が良くなっている症例は多くあります。
今はインターネットなどに沢山の情報が溢れています。
そういった情報に振り回されずに、医師から自分に合わせた治療方法をよく聞き、実行することが何よりも解決の近道です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

発達障害は見た目では、分かりにくい障害です。
発達障害の特徴を性格だと思われていたり、自分でも性格だと思い込んでいたりして「なぜ私は…できないの?」と自己否定をしていませんか?それは脳の障害かもしれません。
今回この記事を読み、少しでも当てはまることがあるかもしれないと感じた方は、医療機関の受診をおすすめします。
少しでも現在感じている「生きづらさ」が和らぐことを願っております。

編集部まとめ


発達障害の症状は、一見その人個人の性格にも感じてしまいます。それは本人にもそうですし、周りの人達から見ても「変わった人」と思われてしまいます。

それにより知らず知らずの内に自分自身を追い込んでしまう、発達障害を持つ子どもの親であれば「なぜ…この子はこうなんだろう?」と追い込んでしまいがちです。

そのような時に「発達障害」や「発達障害の傾向がある」ということが分かれば、自分や子どもが周りの人と違うのは、障害があるからなんだと生きづらさから解放されるのではないでしょうか?

今回の記事で、少しでも生きづらいと感じていることが和らぐお手伝いができていれば嬉しいです。

参考文献

発達障害(厚生労働省)