カルシウムといえば「牛乳」! でも実は…

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「カルシウムが豊富」なものの代表格である「牛乳」。カルシウムの補給源としておなじみですが、実は牛乳以上に、あるいは牛乳と同じくらい豊富なカルシウムが含まれている食材が、いくつか存在します。

「牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする」「牛乳があまり好きじゃない」といった理由で牛乳を飲めない人にも推奨できる「カルシウムが豊富な食材」、どのようなものがあるのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

牛乳はカルシウムの「吸収率」も高め

Q.そもそも、カルシウムとはどんな栄養素なのですか。

岸さん「カルシウムは人体に最も多く存在するミネラルで、体重の1〜2%(体重50キロの成人で約1キロ)を占めるとされています。カルシウムの99%は、マグネシウムやリンと結合して骨格、歯を形成しており、残りの1%は血液中や細胞中など、体内に広く存在しています。

血液中のカルシウム濃度は一定に保たれ、濃度が下がると骨から溶け出し、濃度が高くなると骨に沈着します。溶け出す量が多くなることでリスクが上がる病気が、『骨粗しょう症』です。その他、カルシウムは細胞の分裂や分化、血液凝固作用の促進、筋肉収縮、神経興奮の抑制などに関わっています。

通常の食事で取り過ぎることはありませんが、サプリメントなどで過剰に摂取すると、高カルシウム尿症や高カルシウム血症、泌尿器系結石、前立腺がん、軟組織の石灰化、便秘といった健康障害の原因となります。また、亜鉛や鉄といった他のミネラルの吸収も妨げられます。なお、耐容上限量(18歳以上)は男女ともに1日2500ミリグラムと設定されているため、カルシウム強化食品やサプリメントを使用する場合は取り過ぎに要注意です」

Q.牛乳は、実際にカルシウムが豊富な飲み物なのですか。

岸さん「はい。牛乳はカルシウムが多く含まれる食品の一つです。通常、牛乳100ミリリットル中に110ミリグラムのカルシウムが含まれています。コンビニやスーパーで買える小さい紙パックサイズ(200ミリリットル)の場合、カルシウム量は227ミリグラムです。

実は、カルシウムは体内に吸収されにくい栄養素の一つです。しかし、牛乳をはじめとする乳製品はカルシウムが豊富な上、吸収を促進させるタンパク質の一種である『カゼインホスホペプチド(CCP)』が含まれており、カルシウム自体も吸収されやすい形態になっている食材といえます。吸収率としては、牛乳が40%、小魚が33%、野菜が19%と続きます」

Q.牛乳よりもカルシウムが豊富な食材があるのは事実でしょうか。

岸さん「事実です。牛乳よりも多くカルシウムを含む食材は次の通りです。実は多くの食材がありますが、1食分に換算してみると、牛乳のカルシウム量の豊富さが分かると思います」

【カルシウムが多く含まれる食材(可食部100グラムあたり)】
※牛乳…100ミリリットル中110ミリグラム、紙パック牛乳(200ミリリットル)で227ミリグラム

・しらす干し…210ミリグラム、1食分(5グラム)あたり11ミリグラム
・サクラエビ(干し)…2000ミリグラム、1食分(5グラム)あたり100ミリグラム
・干しひじき…1000ミリグラム、1食分(80ミリグラム)あたり80ミリグラム
・シソ…230ミリグラム、1食分(3グラム)あたり6.9ミリグラム
・小松菜…170ミリグラム、1食分(80グラム)あたり136ミリグラム
・高野豆腐…630ミリグラム、1食分(16グラム)あたり105.6ミリグラム

Q.1日当たりのカルシウムの理想的な摂取量は。

岸さん「厚生労働省による『日本人の食事摂取基準(2020年)』では、1日のカルシウムの推奨量を、18〜29歳男性で800ミリグラム、30〜74歳男性で750ミリグラム、75歳以上の男性で700ミリグラム、18〜74歳女性で650ミリグラム、75歳以上の女性で600ミリグラムです。

一方、同じく厚労省による『国民健康・栄養調査』(2019年)によると、日本人のカルシウム摂取量について、全年代の1日の平均摂取量が男性520ミリグラム、女性509ミリグラムと、全年代の推奨量に足りていないことが分かっています」

Q.カルシウムの効率的な取り方や、注意点を教えてください。

岸さん「カルシウムの吸収を促進する栄養素として、ブロッコリーやパプリカなどに含まれる『ビタミンC』、しらすやサケ、マイタケなどに含まれる『ビタミンD』、あおさや昆布、アーモンドなどに含まれる『マグネシウム』があります。カルシウムはもともと吸収率が悪い栄養素なので、意識して摂取することが必要ですが、カルシウムが豊富な食品を単品で取るのではなく、1日3回の食事をバランスよく食べながら、野菜や海藻類、乳製品、大豆製品といった幅広い食材を取り入れて、吸収率を上げていきたいところです。

また、カルシウムを一度にたくさん摂取しても、吸収できる量は限られているため、コツコツ摂取していきましょう。カルシウムが豊富な食材と、吸収を促進する食材を一緒に調理したり、付け合わせなどに使ったりしてみてください。一方、吸収を妨げる成分としては、インスタント食品やスナック菓子に含まれるリン、コーヒーや紅茶に含まれるカフェイン、アルコールなどが挙げられます。少量であれば大きな問題はありませんが、取り過ぎには注意しましょう。

脂質が多い食生活の人は、低脂肪乳の利用をお勧めします。また、牛乳が苦手な人はチーズやヨーグルトを食べたり、料理に使ったりなど工夫してみましょう。摂取したカルシウムが体内でどういった働きをするかは、そのときの体の状態にもよるため、普段からバランスのよい食事を心掛け、腸内環境や代謝を乱さないことが大切です」