「入社が難しい有名企業ランキング」トップ200社

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1位はマッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパン。東京オフィスは港区六本木のアークヒルズ仙石山森タワーにある (写真:yama1221/PIXTA)

大学選びに際して、就職状況に対する関心は相変わらず高い。実就職率(就職者数÷《卒業者数-大学院進学者数》×100で算出)に注目すると、コロナ禍におけるオンラインを活用した就職スタイルの変化や、観光、航空など採用が止まった業種があったことなどから、2020年以降、各大学の就職率は下降気味だったが、2022年卒の大学の平均実就職率は、前年を0.8ポイント上回る86.0%となった。

景気は不透明でも人手不足の企業は多く、大学生の売り手市場が続く中、受験生やその保護者の関心は、「どのような企業に就職できるのか」。


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多くの受験生や保護者が望む就職先は将来が見通せる有名企業だが、そのハードルは高い。リクルートワークス研究所によると、2022年卒の学生に対する全体の求人倍率1.5倍に対し、従業員規模5000人以上の大企業に限定すると0.41倍に急減する。

こうした狭き門の有名企業への就職は、「どのくらいの難易度の大学に行けば叶うのか」知りたいところ。そこで、有名企業はどのようなレベルの大学から入社しているのかを知るための指標として入社難易度を算出した。

「入社難易度」の算出方法

入社難易度は、駿台予備学校の協力を得て模試の難易度を用い、大学通信が各大学に有名企業427社への就職者数をアンケート調査している結果とあわせて算出した。427社は、日経平均株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定している。

算出にあたって、まず2022年の各大学・学部の難易度を、医学部と歯学部を除いて平均した値を大学個別の難易度として定めた。最高は東京大学の70.0で、以下、国際教養大学67.7、京都大学66.5、国際基督教大学65.0、早稲田大学64.8、慶應義塾大学64.7などが並ぶ。

この大学の難易度を基に、各企業の入社難易度を算出した。例えば、東京大から5人、国際基督教大から3人、早稲田大から10人の採用があったA社の入社難易度は、次のような式で求められる。(東京大×5人+国際基督教大×3人+早稲田大×10人)÷(5人+3人+10人)=66.7となる。この入社難易度を就職判明者10人以上の企業に絞ってランキングしたのが「入社が難しい有名企業ランキング」となる。同率で順位が異なるのは、小数点第2位以下の差による。

企業別の表を見ていこう。1位は外資系コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパン。採用判明者51人中、東大卒が40人と圧倒的に多い。かつては官僚やメガバンクなどに向いていた東大生の視線が外資コンサルに移っている。東京大以外の採用大学は、慶應義塾大(5人)、京都大(3人)など5大学。マッキンゼーの就職偏差値は東京大とほぼ同じ68.9。最難関大に合格できる地頭がないと、入社が叶わない企業ということだ。

2位も外資系コンサルのボストン コンサルティング グループ。マッキンゼーほど採用大学に偏りはなく、東京大(6人)、京都大(5人)、慶應義塾大(3人)、東京工業大学と早稲田大(各2人)など7大学から採用している。

外資コンサルが難関大生から人気のワケ

外資コンサルが難関大生から人気が高いのは、高い給与水準とともに、自らの成長とやりがいを重視する学生が満足できる環境が整っていることにある。外資コンサルをステップとしてさらに高みを目指そうともくろむ学生も多い。

上位2社以外にも、デロイト トーマツ コンサルティングが14位、PwCコンサルティングが19位、にランクイン。国内コンサルでは、アビームコンサルティングが24位に入っている。

外資コンサル最大手のアクセンチュアは、採用数が多いこともあり53位と順位が抑えられている。それでも、東京大からの就職者数は同大から最多の53人で、京都大からの26人は同大で3番目に就職者が多い企業になる。私立大では、慶應義塾大が同大最多の88人で早稲田大もNTTデータと並んで最多タイとなる87人が就職している。

コンサルは、近年、大学生の人気が上がってきたことから、調査対象に加えたのは2021年。そのため、2020年度の順位は「‐」となっている。ちなみに、42位のアマゾンジャパン、45位の日本取引所グループは2022年から調査対象となっているため、2020年と2021年が「‐」となっている。

商社も難関大生の人気が高い企業だが、コンサルを調査対象に加えたことから相対的にランクダウン。三菱商事が3位、住友商事が4位にランクインしている。三菱商事はコンサル調査前の2020年は1位だった。それでも5大商社の入社難易度が高いことに変わりはなく、三井物産が7位、伊藤忠商事が12位、丸紅が26位にランクイン。2022年に5大商社に1人でも就職者がいた大学は、アンケート回答557大学中、40大学にすぎない。特に東京大、一橋大学、京都大、慶應義塾大、早稲田大といった国立と私立の最難関大からの採用が多く、これらの大学からの採用者数は5大商社全体の6割以上を占めている。

ランキング5位には、前年の20位から大きく順位を上げた富士フイルムが入った。写真分野の技術を生かして、医療機器、製薬などのメディカル系や、化粧品などのヘルスケアに大きく業務転換したことから、難関大の理系学生や大学院生を中心に人気が上がっている。

仕事に対するやりがいを求める難関大の学生からは、大都市圏で再開発事業を進める不動産の人気も高く、6位に三菱地所がランクイン。三井不動産(9位)や東京建物(18位)なども上位に入っている。

銀行では、日本政策投資銀行が8位。政府系金融機関の安定性と、日本経済の成長を支援する仕事のやりがいから、難関大生の人気が高い。ちなみにメガバンクで最上位は三菱UFJ銀行で52位。

10位は世界最大の消費材メーカーのP&Gジャパン。難関大生が就職先に求める条件である、入社後の成長とワークライフバランスの良さを高いレベルで実現している外資系企業として人気が高い。

業種別で入社難易度が右肩上がりの「出版」

「業種別・入社難易度ランキング」を見ると、1位が広告で2位が放送、3位が不動産。難関大生の人気が高い業種のうえ、採用数が少ないことから難易度が高く、順位は異なるが2021年と同じ顔ぶれとなっている。

ランキングが右肩上がりなのは4位の出版。紙媒体が苦戦し出版不況と言われる中で入社難易度が上がっているのは、電子書籍や映像、Webメディアなど多彩なコンテンツを展開することで、難関大生の注目を集めていることにある。出版では、講談社(13位)、KADOKAWA(17位)、集英社(33位)などがランクインしている。






【表の見方】

大学の就職者数は、各大学へのアンケート調査と企業からのデータを使用した。未回答の大学は掲載していない。また、一部の大学は大学院修了者の人数を含んでいる。有名企業427社は、日経平均株価指数の採用銘柄に加え、会社規模や知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に大学通信が選定した。社名はアンケート上の名称。21年順位、20年順位の「-」は調査対象外であるか、就職判明者が9人以下のために順位がついていないことを表す。

難易度は、駿台予備学校全国マーク模試(合格可能性80%)を使用した。全データから、2部・夜間主コース、医学部医学科、歯学部歯学科、私立大共通テスト(2020年以前はセンター)利用入試を除いた難易度の平均を学部平均難易度とし、その平均値を各大学の平均難易度とした。ただし、共通テスト利用入試のみの私立大は共通テスト利用入試のデータを使用した。

企業難易度は、大学の平均難易度×その大学からの就職者数を企業ごとに合計し、その企業の就職者数の合計で割り算出した。同じ難易度で順位が異なるのは、小数点第2位以下の違いによる。就職判明者が9人以下の企業は除いた。

(井沢 秀 : 大学通信 情報調査部部長)