標高日本一クラスのトンネル「乗鞍岳」に誕生へ 災害箇所の復旧“困難” 別ルート建設を判断
車道としては標高日本一の道路「乗鞍スカイライン」にトンネルを建設する方針が固まりました。災害箇所の復旧に際して別ルートへ付け替える抜本的な対策ですが、道路環境が厳しさを増していることの裏返しともいえます。
復旧してもまた崩落 不通続く乗鞍スカイライン
岐阜県高山土木事務所は2023年1月20日、第3回の「主要地方道乗鞍公園線『路側崩壊』対策検討会」を開催。災害により不通となっている「乗鞍スカイライン」へ、新たにトンネルを建設する方針を固めました。
乗鞍スカイラインの崩落個所。2020年に崩落し復旧したのち、2022年にまた同じ箇所が崩れた(画像:岐阜県)。
乗鞍スカイラインは1973(昭和48)年に開通。岐阜県東部の平湯峠(標高1684m)と乗鞍岳の畳平(2702m)を結ぶ、車道としては標高日本一の観光道路です。ただしマイカー規制が敷かれており一般車の通行はできないほか、11月から5月にかけては冬季通行止めです。
現在は、平湯峠のゲートから南へ1km強のところで、路盤からその下の崖にかけて大規模に崩落しており、全面通行止めが続いています。ここは2020年7月の豪雨(令和2年7月豪雨)で崩落し、復旧工事を経て2021年7月に開通したものの、2022年9月、ほぼ同じところが再び崩落、わずか1年余りで不通に逆戻りしました。
そうした状況を鑑みて今回、対策検討会が出した結論は、「被災箇所における復旧工事は不適当」というものです。
地質調査の結果、周辺は継続的に地下水の影響を経て風化が進行しているうえ、大小の崩落跡地が多数存在し、斜面が脆弱化しているといいます。浸食作用の影響により、恒久的に利用する構造物の構築は望ましくない、と判断されました。
安房トンネルより高いところにトンネルを
このため、被災箇所前後の脆弱区間を避け、山側に約600mのトンネルによる付け替えルートを構築していくことに。設計速度40km/hの2車線道路で、縦断勾配を8.5%とするそうです。
高山土木事務所によると、トンネルの標高は低いところが1770m、高いところが1820mになるといいます。この標高は、近くを走るNEXCO中日本が管理する安房峠道路の「安房トンネル」(標高1373m)を上回り、国内で最も高い位置にあるとされる、栃木県と群馬県の境を貫く国道120号「金精トンネル」の標高1843mに匹敵する高さとなります。
乗鞍スカイラインの崩落個所。2020年に崩落し復旧したのち、2022年にまた同じ箇所が崩れた(画像:岐阜県)。
今後の復旧スケジュールについても示されています。2023年から24年にかけ、まずは崩落個所へ桟橋を渡して仮設道路を建設し、資材の運搬ルートを確保します。トンネル本体工事は2024年から2026年を予定するそう。ただ高山土木事務所によると、11月から4月の冬季は作業が難しいとのことなので、トンネルが開通し本復旧となるのは2027年度になる模様です。