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第32回ファンタジア文庫大賞に選ばれたライトノベルが原作のTVアニメ『スパイ教室』が、2023年1月5日より放送をスタートした。オープニングを飾るのは、『Re:ゼロから始める異世界生活』シリーズや『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』など数々のアニメ主題歌を担当しているnonocの「灯火」。サウンドクリエイターfu_mouが作曲を手がけたアップテンポなナンバーだ。

本作では、自身のアニメ主題歌としては初めて作詞も担当。喜びと同時にプレッシャーもあったそうだが、作品と丁寧に寄り添った詞や歌唱からは、アニソンシンガー・nonocならではの矜持を感じさせる内容となった。初のワンマンライブがあった昨年のことを振り返ってもらいながら、6thシングル「灯火」が生まれた経緯を探っていった。

INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ

「歌がやっぱり大好き」と再確認できた1年





――今回は年が明けてすぐのインタビューとなりましたが、2022年はnonocさんにとってどのような1年でしたか?

nonoc 念願のワンマンライブ(2022年10月29日/東京・代官山UNITにて開催)ができたことで、自分の知らない自分に出会うことができたような気がしています。それまでコロナ禍ということもあって、イベントをあまり経験できないまま2年くらい過ぎてしまっていたので、自分にとって大きな経験になりました。

――自分自身の知らない自分、ですか?

nonoc 例えば……意外と自分は煽ることが好きなんだなと(笑)。

――(笑)。それはワンマンライブじゃないと気づかなかった自分ですね。

nonoc 自分では気づいていなかったんですが、意外とオラオラ系でした(笑)。これまでもイベントに出させていただく前は必ずイメージトレーニングをしていくんですが、ステージって生き物なんだなと改めて感じます。元々自分は暗い人間だと思うんですけど、ライブをやらせていただけるとすごく楽しくて。「音楽って楽しいな」と再確認しました。

――今、ご自身のことを暗い人間だとおっしゃいましたけど、だからこそ、nonocさん自身も歌に救われてきたご経験というのがあったのでしょうね。

nonoc そのとおりだと思います。歌に悩まされることもあるけど、歌がやっぱり大好きで、自分にとって欠かせないものだなと、改めて感じました。去年は久しぶりのイベントに出させてもらう機会も多かったんですよね。ステージに立って「これこれ!」っていう感覚を思い出すこともあって。ここ何年かでお話ができる人も増えて、今は前向きです。それこそ音楽をやっていたからこそ、色々な現場で助けられました。

――話が飛んでしまうんですけど、Twitterにアップされていた新年の振袖姿が素敵でした。

nonoc 本当ですか! 嬉しい。(地元である北海道の)歌志内神社の鳥居の色が好きで。成人式で着た振り袖を着ました。実はあの振り袖を着付けてくれたのは97歳のひいおばあちゃんで。私のSNSをおじいちゃんおばあちゃんがいつも見ていて、写真をアップすると喜んでくれるんです(笑)。皆さんにも、そんな幸せのおすそ分けができたらなと思って写真を公開しました。

歌志内神社⛩👘🫧🐇🌸🎀

今年も健康でいられますように🙏 pic.twitter.com/M7oyxQRgPY

- nonoc(ののっく)☿ @スパイ教室 (@nonoc_doll) January 4, 2023



作詞とともにアニメの世界観を担う喜び、不安、そして責任感



――改めて、新曲の「灯火」についてお聞きしていきたいと思います。(インタビュー時点で)TVアニメ『スパイ教室』の第1話が放送されたばかりですが、ご覧になった感想はいかがでしたか。

nonoc 原作から読ませていただいていた作品ですが、こうして声がついて動いていると、キャラクターのことを繊細に感じ取ることができるので、小説で読んだとき以上に「かっこいい!」「かわいい!」と感じる瞬間がありました。色々な伏線を感じることもできる内容で、今後が楽しみになりました。

――本作のOPテーマをご担当することが決まったときはどのような心境でしたか?

nonoc まずは「オープニング、やった!嬉しい!」でした(笑)。しかも今回は作詞も任せてもらえるということで、すごく嬉しくて。「本当に良いんですか?」という感じでした。『スパイ教室』という作品タイトルからはミステリー的なイメージを思い浮かべていたんですが、原作を読んでみると、頭脳戦的なトリックを仕掛けることが主題というより、「スパイであること」が重要なのかなと。物語を読みつつ、曲を作っていただくのと並行して歌詞を書いていきました。



――アニメタイアップの楽曲でご自身が作詞を手がけられるのは初ということで、喜びと同時にプレッシャーのようなものもあったのでしょうか。

nonoc ありました。今は、アニメ放送が決まると同時にOP&EDの情報も解禁されるじゃないですか? 自分は作詞家ではないから「アニメを見てくださる方に、自分が作詞者としてクレジットされていることを受け止めてもらえるのかな」と不安でした。なんとなくあるじゃないですか?「この方の名前が出たら大丈夫」、みたいな……。私はそういう土台がないところからのスタートだったので、責任感もありました。責任というのは、こういったインタビューでも感じています。タイアップ楽曲はアニメがあってこそで。作品に対しての想いはすごくあるんですけど、自分が作ったものではないからこそ、どうやって寄り添えるかとか、物語の進み方を決めつけるような形になってもいけないな、とか、自分なりの塩梅を考えていました。

――nonocさんはこれまでのタイアップ楽曲を歌われる際も、そういったことを意識しながら寄り添われている印象があります。アニソンシンガーならではの矜持を感じるというか。

nonoc そうですね。アニソンシンガーである限り、そこは忘れたくないなと思っていて。正解がない中で正解を紡いでいかなければいけないので、そういったことはいつも考えていますね。でもいっぱい考えても、それが実際にできるタイプではなくて。考えつつも、考えすぎず、というバランスを大切にしています。レコーディングでも、何も考えずにバッと歌った最初のテイクが良いことがあるんですよね。

――「灯火」のレコーディングはfu_mouさんも立ち会っていたのでしょうか。

nonoc そうですね。プリプロからすべて立ち会ってくれています。曲にすごくこだわりのある方なので「ここはもう少し力強く」とか、細かい部分までディレクションをいただいていました。

――この曲の歌詞では、“溢れ出す感情が 見つけ出した確かな居場所”という言葉に、より感情がこもっているように感じました。nonocさんの「居場所」というと、やはり音楽にまつわるものになりますか。

nonoc ステージ……と言いたいんですけど、ライブ後にファンの方と対話する時間は特に「居場所」を感じますね。お渡し会とかもそうなんですが、「◯◯(曲)から聴いています!」「◯◯のときから応援してます!」とか、そういった言葉をもらえることが嬉しくて。何かのきっかけで私の曲を聴いてくれて、会いに来てくれることが、歌手として本当に嬉しいです。コロナ禍もあって、より人と会える大切さを感じました。あとは、意図していなかったところを褒めてくださったり、新曲の感想をくださったりすることもありがたいです。「えへへ」となるというか(笑)。今まさにインタビューで歌詞のことを聞いてくださったのも嬉しくて、自分の音源を聴きたくなりました(笑)。

「灯」のメンバーみんなに火をつけられる曲に



――「灯火」を作るにあたって、これまでとは違った試みもありましたか?

nonoc 今回は特に「アニソンらしい曲をいただいたな」という印象があって。だからアニソンらしい、わかりやすくキャッチーな言葉が合うのかなと思って詞を考え始めたんです。でも作品の性質を考えると、それは少し違うような気もしていて。OPテーマには作品と物語の説明的な要素も含まれているものと考えているんですが、『スパイ教室』は主人公が1人ではないので、誰か1人(の主観)にするのも難しい。だから、今回は自分が「灯(ともしび)」のメンバーだとしたら、と考えて書いていきました。最終的には自分の言葉で書けたなと思っています。自分もこうやって生きられたらな、というか……。

――タイトルが本作に登場するスパイチームの名前にかかっているのも、ものすごくダイレクトですよね。

nonoc 自分で歌詞を作れるって、そういうところが良いなと!(断言)。私がファンの立場だったら、「『スパイ教室』がアニメになります、OPテーマは「灯火」です!」と言われたらグッとくると思うんです(笑)。曲のタイトルだけでもそういう印象を持ってもらえたら……と思っていました。

――チーム名の方には「火」はつかなくて。曲のタイトルにはあえて火をつけている。そこには何か理由があるんですか?

nonoc そうなんです。チームのみんなの心に火をつけられたら、背中を押せたらと思っていたので、あえて「火」を足しました。それはチームのみんなだけでなく、聴いてくれる方にもそんな存在の曲になったら良いな、って。

――余談ですが、先ほど「自分が灯のメンバーだとしたら」という想いで歌詞を紡がれていったとおっしゃっていましたが、nonocさんが灯のメンバーだとしたらどんな騙し合いをされると思いますか。

nonoc えーっ!(笑)。nonocだともうすでに素性もバレてますし、私は丸め込まれるタイプなので(笑)。ただ、人狼ゲームは得意です。表情にはあまり出ない自信があります!

2023年はみんなと会える場所を作りたい



――本作のカップリングには、ポリスピカデリーさん作曲の「ラスター」、Tom-H@ckさん作曲の「endless tears」(スマホゲーム「Re:ゼロから始める異世界生活 INFINITY」主題歌)が収録されています。それぞれ違うカラーがあって、nonocさんならではの幅のあるシングルになっているなと改めて思いました。

nonoc ありがとうございます。「カラーがある」とおっしゃっていただけるのがすごく嬉しいです。

――nonocさんはいつも色にこだわれていますものね。「ラスター」はまさにその象徴かと思いますが、どのような曲になりましたか?

nonoc 色を主題にしたミュージックビデオシリーズの最終章となる曲で。私とクリエイターさんとで生み出してきた2人の終わりを見届けたいな、と思いながら歌詞を書きました。私はこの曲を書いてくださったポリスピカデリーさんの曲が元々好きで。ポリスピカデリーさんらしい良さも入れていただけましたし、振り切りすぎないようなメロディーラインや盛り上がり方がすごく合っているなと。これまでの曲と繋がりのある曲なので、私としては「その人その人の解釈で曲の終わりを決めてもいい」と思っていました。ここからが始まりでもあるし、終わりでもあるし……うまく説明するのが難しいんですが(苦笑)。でも自分の中で区切りとなりました。



――「endless tears」はいかがでしょう?

nonoc 受け取る方によって印象が変わる曲なのかなと思っています。私は切なさを強く感じていたのですが、悲しみの強い曲に感じる方もいるかもしれません。ずっと心のなかで思っていること……「願い」みたいなものを歌声に乗せました。どこかで負のループが終わりますように、というか。強い感情はつらいこと、悲しいこと、悩んでいることなどに重なるかもしれません。ただ旋律はすごく美しくて。

――どちらの曲にも「ひとり」「独り」というワードがあって。「endless tears」は曲調も相まってより切なく感じますね。孤独感といいますか。

nonoc それは自分自身の考えにも当てはまったのかもしれません。自分は1人なんだ、とずっと思っていて。周りに人がいても答えを出せるのは自分だけ。常に孤独はついてまわるものだなと思っていました。

――『Re:ゼロ』のスバル(ナツキ・スバル)はそれこそ孤独ですよね。1人でループを繰り返している。

nonoc スバルももちろん、エミリアも孤独で。『Re:ゼロ』のキャラクターだけに関わらず、皆さんにも抱えている気持ちがあると思います。私もあまり周りに頼れるタイプではないからすごく気持ちがわかります。

――そんな三者三様の楽曲を収めたシングル、ジャケットも素敵でした。

nonoc ジャケットはアートディレクターやプロデューサーが決めてくださったものですが、心のなかの火を灯せる曲が詰まっているので、だからこそのモノクロなのかなと。背景は現実感のあるビル街なんですけど、「私はここにいるぞ」という個としての火を灯せたら、という思いが込められているのかなと私は考察しています。

――ありがとうございます。最後に、2023年の目標についてもお伺いできれば。

nonoc 去年からの活動で、「やっぱり私は歌が好きなんだな」ということを再確認できたので、もっともっと、もっとみんなと会える場所を作れたらなと思っています!よろしくお願いします。

●リリース情報

nonoc

「灯火」

2023年1月25日発売



品番:ZMCZ-16331

価格:1,650円(税込)

<収録曲>

1. 灯火(TVアニメ「スパイ教室」オープニングテーマ)

作詞:nonoc 作編曲:fu_mou

2. ラスター

作詞:nonoc 作編曲:ポリスピカデリー

3. endless tears(スマホゲーム「Re:ゼロから始める異世界生活 INFINITY」主題歌)

作詞:hotaru 作曲:Tom-H@ck 編曲:KanadeYUK

4. 灯火(instrumental)

5. ラスター(instrumental)

6. endless tears(instrumental)

●作品情報

TVアニメ『スパイ教室』

TOKYO MX、BS日テレ、AT-X他にて放送中



<イントロダクション>

陽炎パレス・共同生活のルール。

一つ 七人で協力して生活すること。

一つ 外出時は本気で遊ぶこと。

一つ あらゆる手段でもって僕を倒すこと。

――各国がスパイによる”影の戦争”を繰り広げる世界。

任務成功率100%、しかし性格に難ありの凄腕スパイ・クラウスは、死亡率九割を超える『不可能任務』に挑む機関―灯―を創設する。しかし、選出されたメンバーは実践経験のない7人の少女たち。毒殺、トラップ、色仕掛け――任務達成のため、少女たちに残された唯一の手段は、クラウスに騙しあいで打ち勝つことだった!?

世界最強のスパイによる、世界最高の騙しあい!

©竹町・トマリ/KADOKAWA/「スパイ教室」製作委員会

関連リンク



nonoc オフィシャルサイト

https://nonoc.net

nonoc オフィシャルTwitter

https://twitter.com/nonoc_doll

TVアニメ『スパイ教室』オフィシャルサイト

https://spyroom-anime.com/

TVアニメ『スパイ教室』オフィシャルTwitter

https://twitter.com/spyroom_anime