専門学校の学費はどれくらい? 入学金・授業料などを大学と比較
高等学校を卒業した後の進学先は、大学や短期大学などさまざまですが、そのなかの一つに専門学校があります。高校の卒業生における、専門学校進学者の割合は16%強となっており、短期大学よりも高い水準です。
今回は、専門学校に進学する際に必要な学費はどのくらいなのかについて解説します。
専門学校とは
専門学校という言葉はよく聞くものの、実際にどのような学校なのかはあまり知られていないのではないでしょうか。専門学校とはどのような学校なのでしょう。
専門学校とは
専門学校とは、日本の制度上では専修学校のうち専門課程を設置している学校を指します。専修学校は、学校教育法において「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図る」ことを目的として位置づけられた教育機関です。実践的な職業教育および専門的な技術教育を行い、多くの分野にて専門家を育成しています。
専修学校は、授業時間や教員の数、施設や設備など一定の基準を満たしている場合において、都道府県知事の認可を受けて設置されます。
このことから、専門学校は、一般教養に重きを置いている大学よりも、より専門的な技術や能力の獲得を目的とした学校といえるでしょう。
専修学校には、高校を卒業した人が学ぶ「専門学校(専門課程)」以外にも、中学を卒業した人が入学できる「高等専修学校(高等課程)」、そして誰でも学ぶことができる一般課程の3つの課程が用意されています。
専門士・高度専門士の称号が得られる
専門学校は、職業や実生活に必要な知識や技術、技能の習得、教養の向上を目的とした教育機関です。課程を修了した際には、学習時間や内容に応じて「専門士」もしくは「高度専門士」の称号が得られるほか、大学への編入学や大学院への入学も可能となります。
専門士は、修業年限が2年以上、総授業時数が1,700時間(62単位)以上あり、試験などによって成績評価を行い、その評価に基づいて課程修了の認定を行っていることが要件です。専門士の称号を取得すると、大学への編入学の資格が与えられます。
さらに、修業年限4年以上、総授業時数が3,400時間(124単位)以上などの要件を満たした専門学校の修了者には高度専門士の称号が与えられ、大学院への入学資格が与えられます。
また2014年度には、最新の実務の知識や技術・技能を身につけられる「職業実践専門課程」がスタートしました。
専門学校の学費に含まれるもの
専門学校の学費には、「入学金」、「授業料」、「実習費」、「設備費」などが含まれます。
このほかにも「受験料」があり、受験した専門学校の数だけ必要です。また、受験する専門学校が遠方の場合、交通費や宿泊費もかかる可能性があります。
専門学校の平均学費
東京都専修学校各種学校協会が公表した「令和3年度学生・生徒納付金調査」によると、初年度の入学金や授業料、実習費や設備費などの平均は、127万6,000円です。
学費は分野によって違いがあり、総じて第3分野といわれる医療関係は高くなる傾向にあります。実際に「理学療法、作業療法」学科は179万2,000円と、昼間課程の平均額のなかでも一番高くなっています。そのほかの分野および学科はほぼ110万円~120万円で推移しています。
また、夜間課程が設置されている学科は、たいてい夜間のほうが学費は安く設定されています。
分野別の専門学校の平均学費
下の表は、専門学校の初年度の学費の分野別平均額(昼間課程)を一覧にしたものです。ここでいう学費とは、入学金、授業料、実習費、設備費の合計です。
表をみると、第3分野に次いで第4分野の衛生関係や、第8分野の文化・教養関係では、特定の学科の学費が高くなっています。
また、最高額と最低額に大きく差がある点も見逃せません。同じ分野、学科であっても、専門学校によって学費が大きく異なるので、進学を考える際には複数の学校の学費を比較することも大切です。
受験料
専門学校の受験料の相場は、1万~3万円程度です。複数の学校を受験すれば、その分受験料もかさみ、交通費や宿泊費が必要になるケースもあります。
ただ、一般的に専門学校は大学と異なり、志望校以外の学校(いわゆる「すべり止め」)を複数受験することはあまりありません。分野および学科が決まっている場合は、受験料は原則1校分でよいでしょう。
複数の分野および学科を受験し、そのなかで最終的に進学する専門学校を選びたいという考えなら、複数校を受験することもあり得ます。
大学の学費との比較
専門学校の学費を4年制大学の学費と比較すると、どのくらいの違いがあるのでしょうか。
調査元が別になることから数字が微妙に異なりますが、日本政策金融公庫が公表している「令和3年度教育費負担の実態調査結果」をもとに見ていきましょう。
入学時の費用(学校納付金)
入学先別にみた、学校納付金(入学金、寄付金、学校債など、入学時に学校に支払った費用)は、専門学校(高専・専修・各種学校)が27万9,000円であるのに対し、大学では40万3,000円です。
さらに、大学の学校納付金を国公立および私立に分けると、以下のとおりになっています。
・国公立大学:28万6,000円
・私立大学文系:40万6,000円
・私立大学理系:46万6,000円
学校納付金については、専門学校と国公立大学はほぼ同じで、私立大学と比べると、文系との差は12万7,000円、理系との差は18万7,000円で、私立大学に進学することと比べると、専門学校の方が低く抑えることができます。
出典:日本政策金融公庫 令和3年度「教育費負担の実態調査結果」
在学費用(学校教育費)
1年あたりの在学費用(授業料、通学費、教科書・教材費、学用品の購入費、施設設備費など)を比較すると、専門学校(高専・専修・各種学校)の110万4,000円に対し、大学は142万3,000円です。
さらに、大学の種類別にみると以下のとおりです。
・国公立大学 96万6,000円
・私立大学文系 145万2,000円
・私立大学理系 172万4,000円
入学時の費用(学校納付金)、そして在学費用(学校教育費)ともに、専門学校よりも私立大学のほうが高いことがわかります。ただ、在学費用(学校教育費)については、専門学校よりも国公立大学のほうが安くなっています。
4年制の大学と異なり、専門学校は基本的に2年制のため、総費用では国公立大学よりも安く抑えられます。ですが、それでも1年間に100万円以上のまとまった費用がかかることは、認識しておく必要があるでしょう。
出典:日本政策金融公庫 令和3年度「教育費負担の実態調査結果」
まとめ
専門学校の学費は、平均すると私立大学よりは安く抑えることができます。しかし、進学する分野や学科によっては学費が高額になる可能性があるので、注意が必要です。
特に、第3分野の医療関係や第4分野の衛生関係はほかの進学先より学費が高くなります。希望している人は専門学校に進学するにあたり、入学金、年間の授業料がいくらになるのかを事前に確認するようにしましょう。
学費と生活費をトータルでサポートする「高等教育の修学支援新制度」は、専門学校も対象です。費用の捻出が経済的に苦しいと感じた場合は、制度の利用も視野にいれておくことをおすすめします。