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賃貸物件の入居申込みをした後に、やむなくキャンセルをしなければならないケースもゼロではない。さらに、キャンセルのタイミングによっては思わぬ費用が発生してしまう可能性もある。
そこで、賃貸物件の申込み後のキャンセルについて、対処法や注意点を見ていこう。

賃貸の申込み後でも契約締結前ならキャンセル可能

結論からいうと、賃貸物件の入居申込みや審査に通過した後でも、契約締結前であればキャンセルは可能だ。契約前で法的な拘束力も発生していないため、原則として違約金が発生することもないだろう。

キャンセル不可となるのは、すでに本契約を交わした場合。一般的な物販であれば、一定期間内なら無条件で契約をキャンセルしたり返品したりできるクーリング・オフ制度があるが、賃貸物件を含む不動産契約ではクーリング・オフは適用外となる。

支払い済みの初期費用の返還

賃貸物件のキャンセルに伴い、それまでに支払ったさまざまな費用が返還されるのか気になる方もいるだろう。ここでは、賃貸物件の入居キャンセルによる初期費用の取り扱いについて確認しておこう。

申込み時の一時預かり金
賃貸物件の入居申込みをする際に、「預かり金」として1万円~家賃1ヵ月分程度を不動産会社へ預けるケースがある。この預かり金は、あくまで申込者の「意思表示の証」で、不動産会社が契約締結まで預かっている状態だ。そのため、契約締結前のキャンセルであれば、原則として全額返金される。

一方、契約締結後にキャンセルすると、この預かり金は返金されないのが一般的だ。さらに、解約扱いとなり、違約金が発生することもある。違約金の金額は不動産会社によってさまざまだが、少なくとも1ヵ月分の家賃を請求される場合が多い。

仲介手数料
管理会社を介して賃貸物件の契約をした場合は、仲介手数料を支払っていることが多い。一般的には、契約締結前のキャンセルであれば全額返金される。
契約締結後のキャンセルは、この仲介手数料も返金されない可能性が高い。

敷金・礼金
火災保険料をすでに支払っている場合、自分で加入先の保険会社に連絡すると、未経過分の保険料が戻ってくる可能性がある。キャンセルした場合は、忘れずに保険会社へ連絡しよう。

賃貸借契約の申込みから契約までの流れ

賃貸物件の申込み後のキャンセルは契約締結前なら可能だが、入居手続きの中のどのタイミングで「契約締結」となるのかを把握しておくことも大切だ。
ここでは、一般的な賃貸物件の入居申込みから契約締結までの手順を見ていこう。

1. 申込み・入居審査
賃貸物件の内見を終えて入居の意思が固まったら、まずは不動産会社へ「入居申込書」を提出する。その後、申込書の内容を大家や管理会社が確認する「入居審査」が行われる。
申込書の提出後や入居審査通過後のタイミングは、まだ本契約が成立しているわけではないため、賃貸物件のキャンセルも可能だ。

2. 重要事項説明
審査を経て入居に問題がないと判断されると、契約前の「重要事項説明」を受けることとなる。
重要事項説明とは、宅地建物取引士資格を持つ担当者が、その賃貸物件の規約や仕様について申込者に対して説明するというもの。入居や契約について気になる点があれば、この時点で確認しておくことが大切だ。

3. 契約締結
重要事項説明を受けて特に問題がなく、申込者も契約内容に納得していれば本契約に進む。
申込者と不動産会社の双方が賃貸借契約書へ署名と捺印をした時点で契約成立となり、この後のキャンセルは原則として認められないこととなる。

画像:REISM STYLE

「契約成立」の定義は不動産会社によって異なる点に注意

一般的には、賃貸借契約書へ署名・捺印をした時点で本契約が成立する。
しかし、法的には、借主と貸主双方の合意がとれていれば、署名と捺印の有無を問わず契約が成立する。このような、当事者双方の合意の意思表示のみで成立する契約のことを、民法で「諾成契約(だくせいけいやく)」という。不動産会社によっては、賃貸契約書への署名・捺印なしに、意思表示だけで「契約が成立した」とする場合がある点に注意しなければならない。

例えば、「大家が入居に同意した時点で契約成立」「申込み完了時点で契約成立」としている不動産会社も存在する。こうした不動産会社の場合、本契約締結前でも、キャンセルすると違約金が発生してしまう可能性もあるだろう。
キャンセルをめぐったトラブルを避けるためにも、申込み前の段階でキャンセルの取り扱いについて不動産会社に確認することが大切だ。

賃貸物件への入居をキャンセルしたくなった場合の対処法

賃貸物件への入居申込みをキャンセルしたくなったら、できるだけ早く不動産会社へ連絡しよう。
申込書を提出すると、入居審査や重要事項説明、本契約の締結などに向けて不動産会社側ではさまざまな準備が進められる。キャンセルをするとこれらに関わる多くの人々に迷惑がかかることとなるため、連絡が早いに越したことはない。
キャンセルの連絡は、遅くとも「重要事項説明」を受ける前までが望ましいだろう。

賃貸物件の申込みはじっくりと検討した上で慎重に行おう

本契約締結前の段階なら、賃貸物件の入居申込みをキャンセルしても基本的にペナルティは発生しない。しかし、不動産会社によっては申込み時点で契約成立とみなされてしまうケースもある。
キャンセルをめぐるトラブルを避けるためにも、申込み前の段階でキャンセル時の扱いについてきちんと確認しておこう。

※この記事はREISM株式会社が運営するREISM Styleの記事を一部編集、転載しています。