ジェネリック医薬品って本当に大丈夫? 先発薬と効果は一緒?
中身がほとんど同じなのに安く手に入る「ジェネリック医薬品」。国は、医療費削減を目指し、その周知に努めているようだ。しかし、「安い分、効き目も低いのでは」と考えてしまうのが心情でもある。その真偽を、虎溪医院の虎溪先生に伺った。また、処方されたときの見分け方についても、知りたいところだ。
監修医師:
虎溪 則孝(虎溪医院 院長)
獨協医科大学医学部卒業。獨協医科大学越谷病院にて循環器内科助教や循環器内科講師を努める。2014年、埼玉県草加市に「医療法人虎溪医院」設立、院長に就任。医学博士、獨協医科大学越谷病院循環器内科非常勤講師、日本内科学会認定内科医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本不整脈心電学会認定不整脈専門医、日本医師会認定産業医、身体障害者福祉法指定医師(心臓機能障害)。日本心電学会、日本心臓病学会所属。
ジェネリック医薬品が安い仕組み
編集部
よく聞くことはありますが、具体的にどういうものですか?
虎溪先生
開発品の特許期間が満了した後に発売する、有効成分の同じようなお薬のことです。最初に出たお薬のことを「先発品」、ジェネリック医薬品のことを「後発品」と呼ぶことがあります。ちなみに、医薬品の特許期間は20年で、場合により5年の延長が認められています。
編集部
ジェネリック医薬品のほうが安いんですよね?
虎溪先生
そのとおりです。「先発品」には、ばく大な開発費などを回収するため、高い利益が載せられ、さらに独占販売権も認められています。対するジェネリック医薬品は、独占販売権を持たないので、公平な市場原理が働いています。人気の薬になると一つの先発品に対して後発品は30種類くらいある場合もあります。
編集部
中身は全く一緒なのですか?
虎溪先生
有効成分は同じですが、それ以外の部分なら違っていてもいいことになっています。「有効成分」というのはまさに薬そのもののこと、体の中に届けたい本体部分です。「それ以外の部分」とは、錠剤であれば有効成分を丸く固める「つなぎ」や、表面のコーティング、味を調整する物質や印字などです。その結果、先発品と形、色、味が違ってきます。
編集部
ジェネリックとして認められる基準のようなものは?
虎溪先生
有効成分が、血中に決められた量だけ現れるかどうかです。この「生物学的同等性試験」をクリアし、厚生労働省に認められれば、発売することができます。有効成分がきちんと届いていて、なおかつ安いのであれば、使わない理由はないでしょう。
「異なること」がメリットでもある
編集部
つまり、先発品とジェネリック医薬品は「似て非なるもの」?
虎溪先生
違うのは有効成分を体に届けるために工夫された部分で、薬にもよりますが、錠剤の場合、その違いの多くは1%以下です。この部分に人によってはアレルギーのある人がいるかもしれませんが、それはどちらにおいても同じ確率でおきると思われます。
編集部
むしろ、良くなっていることもあるのですか?
虎溪先生
後発品ということもあり、先発品が発売された当時にはなかった製剤技術が使われていることもあります。錠剤表面のレーザー印字などはその一例です。最近では先発品で評判が悪かった部分を踏まえ、味や形などをあえて変えてあるものもあります。ただし先発品もそのままでは売れなくなってくるので、製剤技術の進歩とともに「剤形変更」おこなうことがしばしばあります。
編集部
具体的にはどのような変更がなされるのでしょうか?
虎溪先生
例えば、有効成分はそのままで表面のレーザー印字を加えたり、口で溶けやすいように工夫したり、飲みやすいように錠剤を小さくしたりして、その後生物学的同等性試験をクリアして…と。つまり先発品もオリジナルではなく、まるで後発品のように剤形を進化させているものもよくあります。もちろん価格は「先発品価格」のままです。
編集部
外用剤のジェネリックについても、詳しく教えてください。
虎溪先生
湿布や軟膏などの外用剤では、有効成分より「それ以外の部分」が重要だったりします。例えば湿布は布の部分に有効成分がしみ込んでいて、接着剤で体にくっつくようになっています。有効成分は同じなので痛みを抑える効果は同じと思いますが、張った時のひんやり感とか、かぶれやすさ、剥がれやすさなど湿布として重要な部分が違います。そのためジェネリック同士もそれぞれ「非なるもの」です。
編集部
外用剤でも“改良”がなされていたりするんですよね?
虎溪先生
はい。有効成分以外の部分の違いが大きく現れているのは塗り薬でしょう。皮脂欠乏症などでよく処方される保湿剤などがその一例です。先発品では白色で乳液状のローションのものが、ジェネリックでは透明のサラサラしているものや泡状のスプレー式ででてくるものだったりします。これらの有効成分は同一ですが、見た目や使い心地は「別物」です。ただし、どれが良いというわけではなくて、患者さんの好みで使い分けています。
編集部
なるほど、やはり有効成分以外は変えてもいいんですね。
虎溪先生
そうなんです。「同一性」を問いがちですが、変えたほうが便利な場合もあるんです。とくに使い方と関係してくる外用薬は、その差が顕著に現れます。
編集部
逆に、「先発品」のほうが優れているケースは?
虎溪先生
錠剤で有効成分以外の部分で違いが出る可能性のある薬剤としては、「徐放剤(じょほうざい)」の一部でしょうか。「徐放剤」とは飲み薬の一種で、ゆっくり長時間をかけて溶けるようにつくられています。腸で薬が徐々に溶ける錠剤の仕組みに特許があり、後発品には真似ができないものもあります。この場合は錠剤の形が重要な意味を持つので、慎重に選びたいところです。
ジェネリック医薬品の見分け方
編集部
処方されるのはどのような場面ですか?
虎溪先生
院内処方ではそのクリニックで採用している薬を出します。ちなみに当院では9割以上がジェネリックです。他方、院外処方の処方箋には「ジェネリックでもいいですよ」とか「先発品に限定してください」などと指示する欄があります。いずれの場合でも患者さんが望むのであれば、「先発品」を選べます。先発品に限定することは、ほぼありません。
編集部
患者の意識はどうなんでしょう?
虎溪先生
一部に、「安かろう、悪かろう」という誤解をしていらっしゃる方がいます。しかし、一般的な商品と違って、「安いことへの正当な理由」があります。中身を安くつくっているのではなく、特許料というゲタが外れただけなのです。さらに競争原理が働きますから、「悪かろう」とされるお薬は減っていくはずです。
編集部
自分で調べることはできるのですか?
虎溪先生
インターネットで調べられるほか、外見からでもわかります。また商品名の後に、必ず「」付きで製薬会社名などが入ります。この「○○」の有無が、見わけるポイントといえます。出されたお薬が気に入ったら、この「○○」を覚えておくといいでしょう。似たようなお薬はいっぱいありますからね。
編集部
その場合、信頼性や安全性は、どうなのでしょう?
虎溪先生
厚生省主導で最低限の品質管理を行っておりますので、現時点でそれほど心配する必要はないと思われます。
編集部
今回のお話について総括をお願いします。
虎溪先生
内服薬に関しては、体内に必要な量の有効成分さえ入ってしまえば、先発品と「ほぼ」同じと考えて良いと思います。万一「ほぼ」の部分のリスクが仮にごく僅かにあったとしても、価格差を考えれば総合的にジェネリックを選ばない理由はないと思います。他方、湿布や塗り薬、目薬などはものによっては大きな違いがあります。そのためどちらが良いというわけでなく、ジェネリック間の違いも含め自分に合った薬を覚えておきましょう。
編集部まとめ
ジェネリック医薬品の「外用薬」についての知見は、驚きとともに大きな発見でした。安いだけではなく、より優れている場合もあるのですね。もしジェネリック医薬品が選べるようなら、「先発品と何が違うのですか」と聞いてみてもいいでしょう。その差に納得できれば、有効な選択肢になりえます。