「肩が痛い」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
肩が痛いときには、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる原因や対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
マイマイテイリ イマム(新宿アイランド内科クリニック 院長)
「肩が痛い」症状で考えられる病気と対処法
「肩が痛い」という症状は誰しも経験したことがあると思います。症状の原因はさまざまですが、肩の筋肉、骨、腱、神経が原因であるケースが多く見られます。どのような場合に病院受診をする必要があるのか解説していきます。
肩がズキズキと痛む原因と治し方
肩関節周囲にズキズキとした痛みが発生し,肩関節の動きが悪くなる場合,肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ)の可能性が考えられます。
肩腱板断裂は、肩がズキズキ痛むことを主症状として、肩の運動障害・運動痛・夜間痛を自覚する病気です。特に、夜間痛は症状として多くみられ、痛みのために睡眠が取れていないことをきっかけに受診される患者さんも少なくありません。後述する肩関節周囲炎とは違い、多くの場合、腕を上げる動作はできます。
原因の半分程度は、転倒して肩を怪我したなどの外傷で起こるものです。残り半分は原因がはっきりしておらず、肩の使いすぎなどの影響も関与しているといわれています。
すぐにできる処置は、外傷が原因であれば1~2週間は三角巾で固定し安静を図ることです。
外傷がきっかけである場合は骨折がないか確認するために肩関節のレントゲン写真撮影が施行されることが多いです。腱板はレントゲンではわかりづらいため、必要があればMRIを勧められることもあります。緊急性はないため、日中に整形外科を受診しましょう。
腕を上げると肩が痛む原因と治し方
肩関節を挙げる(腕を上げる)と肩が痛む場合、肩関節周囲炎が疑われます。
肩関節周囲炎は、肩関節痛を主症状として、腕を上げると痛みが走るため肩関節を動かさなくなる病気です。
主に関節を構成する骨や靭帯や腱などが、老化により炎症を起こしていることが原因と考えられています。
動かさない状態を続けていると肩の可動域が悪くなってしまい、髪を整えることや服を着替えることが難しくなります。
自然に治ることもありますが、痛みが強い急性期の場合は三角巾(大きめのハンカチでも可)などで肩関節を固定することで、痛みを感じないよう安静にすることが有効です。
急性期を過ぎたら、肩関節の可動域制限をきたさないよう運動療法で拘縮予防や筋肉強化を行なったり、温熱療法(ホットパックや入浴)でリハビリを行います。痛みは、1~4年の経過で治癒していきます。
骨折や骨腫瘍などがないことを確認する意味でも肩関節のレントゲン写真撮影を施行する場合が多いです。緊急性はないため日中に整形外科への受診を行いましょう。
突然肩に痛みが走るときに考えられる原因と治し方
夜間に突然生じる強烈な肩関節の疼痛を自覚する場合、石灰沈着性腱板炎を疑います。
石灰沈着性腱板炎は、肩の突然の激痛を主症状として、肩の自動運動が全くできずに救急外来受診をする患者さんも多い病気です。
すぐに症状を改善させることは難しいのですが、痛み止めの内服で症状が改善することが多いです。
肩関節のレントゲン写真にて石灰化の有無をチェックし診断をします。緊急性はないため日中に整形外科を受診しましょう。
肩の痛みが取れない・ずっと続くときに考えられる原因と治し方
慢性的に肩関節痛が続いたり、痛みがとれない症状を指します。このような場合、変形性肩関節症を疑います。
変形性肩関節症は、肩甲骨と上腕骨がなす関節に見られる変形性関節症であり、動作時痛から始まり、進行すると安静時痛や夜間痛も見られるようになります。
すぐに症状改善につながるような対応策はありませんが、消炎鎮痛剤の内服・外用薬の使用や関節内注射で経過を診ていくことが多いです。肩関節の動作時痛のため肩を動かさなくなってしまうと可動域制限が出現し、日常生活に支障をきたすようになってしまいますので、適度な筋力訓練が推奨されています。
鎮痛剤やリハビリでの改善が見られない場合は手術を検討されることもあります。緊急性はないため、日中に整形外科を受診しましょう。
肩の近くの筋肉や腱が痛むときに考えられる原因と治し方
肩の筋肉に上腕二頭筋腱長頭という筋肉があり、それが重たい物を持った時などに断裂音と共に肩関節前面の疼痛が生じることがあります。そのような場合、上腕二頭筋腱断裂を疑います。応急処置としては.痛みが強い場合は三角巾で腕を吊ることで固定します。痛みが強くなければ特に何もしなくて大丈夫です。氷などで冷やすことも効果的であることがあります。
診療科としては、整形外科になります。肩腱板断裂に随伴して断裂することもありますので、肩関節のレントゲン写真だけでなく、MRIも勧められることがあります。緊急性はありませんので、日中に受診を行いましょう。
怪我などをしていないのに肩が痛む症状で考えられる原因と治し方
怪我などをしていないのに首すじから肩または背中にかけて痛む症状を指します。このような場合、肩こりが疑われます。
肩こりは、首や背中が緊張するような姿勢での作業、デスクワークの人に多い疾患です。病態としては、首の後ろから肩・背中にかけて存在する僧帽筋という幅広い筋肉が固まってしまうことが原因です。頚椎疾患や高血圧、眼疾患、耳鼻咽喉疾患、頭蓋内疾患の随伴症状として肩こりが発生している可能性もあります。
すぐにできる処置としては、同じ姿勢を続けないこと、蒸しタオルなどで患部を温めて血行を促進すること、リラックスできる環境を整えることです。
緊急性はありませんので、日中に整形外科への受診を行いましょう。
右肩だけ・左肩だけなど片側の肩が痛む症状で考えられる原因と治し方
投球動作を右でする人で右肩だけ痛い、左で投球する人で左肩だけ痛いという症状がある場合、投球障害を疑います。
投球障害は、投球動作で疼痛が誘発されることが主症状であり、症状が強くなると日常生活でも疼痛が誘発されます。
すぐにできる処置としては、第一に安静・抗炎症治療(鎮痛剤内服・外用や注射治療)です。中長期的には投球フォームの矯正や上肢のみならず体幹,下肢を含む関節可動域訓練、ストレッチや筋力強化などの理学療法で症状改善することが多いです。
緊急性はないため、日中に整形外科を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「肩が痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
発熱を伴う場合は、整形外科へ
発熱を伴う肩痛の場合、化膿性肩関節炎が疑われます。化膿性肩関節炎の場合、肩関節の熱感・発赤・腫脹・疼痛などの症状が出現します。
病状としては、細菌やウイルスが肩関節内に侵入している状態であり、緊急的に手術が必要になる場合もあります。
化膿性肩関節炎は放置していると最悪命を落とす危険のある疾患ですので、近くの総合病院の整形外科をすぐに受診しましょう。もし時間外である場合も日中を待たずに救急外来を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「肩が痛い」のセルフチェック法
・肩の痛み以外に熱感・発赤・腫脹などの症状がある場合
・肩の痛み以外に熱が出るような症状がない場合
「肩が痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「肩が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
肩腱板断裂
肩腱板断裂は、腱板という肩甲骨から上腕骨につながる大きな4つの筋肉で構成されている部分が文字通り断裂する疾患です。原因としては、加齢による変性や、上腕骨と肩峰に挟まれて機械的に衝突すること、外傷などのさまざまな要因が重なって発症します。
中高年の加齢による腱板断裂はまずは保存療法です。保存療法には、消炎鎮痛剤の内服・外用、ステロイドやヒアルロン酸の関節内注射などの薬物療法と、温熱、ストレッチ、可動域訓練、筋力強化などの理学療法などが含まれます。保存療法抵抗例として手術療法が選択されます。
また、若年者やスポーツなどの外傷による腱板断裂は積極的に手術療法を選択します。
病院へ行く目安としては、中高年の場合は変性によるものの可能性が高いですので、日常生活に支障を感じたら整形外科を受診すべきです。若年者やスポーツ中の受傷である場合は、外傷性の腱板断裂である可能性がありますので、外傷による骨折も否定できません。なるべく早く整形外科を受診することをお勧めします。
胸郭出口症候群
胸郭出口症候群は,上肢や肩周辺の運動や感覚を支配する腕神経叢と鎖骨下動脈が
1斜角筋と言われる首の筋肉の間
2鎖骨と第一肋骨の間の肋鎖間隙
3小胸筋という筋肉の肩甲骨烏口突起停止部の後方
以上3点のスペースで締め付けられる病気です。
吊り革につかまる時のように腕を上げる動作で上肢のしびれや肩関節周囲の疼痛を自覚する疾患です。鎖骨下動脈の圧迫の場合、上肢の血行が悪くなり疼痛が生じます。
なで肩の女性や重いものを持つ労働者に多く、上記の症状があれば胸郭出口症候群を疑います。
対応としては、症状を悪化させる上肢を挙げた位置での仕事や、重いものを持つような運動や労働、リュックサックで重いものを担ぐようなことは避けます。
症状が強い場合は筋力強化運動訓練を行ったり、痛みを感じていない安静時にも肩を少しすくめたような肢位をとらせます。
仕事や日常生活に支障をきたすレベルになったら整形外科受診を検討するのがいいと思います。
五十肩(肩関節周囲炎)
五十肩は、医学的には肩関節周囲炎と言いますが、中年以降、特に50歳代に多く見られる肩痛の疾患です。
原因としては、関節を構成する骨、軟骨,靭帯などが老化して肩関節周辺に炎症が起きることが主な原因と考えられています。
自然に良くなることもありますが、放置すると日常生活に支障をきたすこともあります。痛みが強い急性期には三角巾やアームスリングで安静を計り、消炎鎮痛剤の内服・外用、注射が効果的です。
痛みが落ち着いたら温熱療法や運動療法などの理学療法を行っていきます。
症状としては、夜間のズキズキとした痛みがあるため、眠れないほど痛みを感じたら整形外科受診をお勧めします。
「肩が痛い」ときの正しい対処法は?
薬を服用せずに症状を緩和する方法は、安静です。急性期の場合は三角巾での固定が効果的です。
市販薬の内服は可能ですが、ものによっては胃を荒らす副作用があるので薬局にいる薬剤師に聞いてみるといいと思います。
湿布の使用については、光線過敏症などの副作用や妊娠中の方には使えないものもあります。不安がある場合は、病院で処方してもらってからの使用をお勧めいたします。また、テーピングについては、固定目的であれば三角巾で十分です。
患部は急性期には冷やした方がいい場合が多いです。疼痛が強い場合は温めると疼痛を惹起してしまうことがあります。疼痛が比較的落ち着いてきたら温熱療法を用いることが多いです。
マッサージやストレッチは日頃から行うといいでしょう。特に可動域訓練を行うことが肩関節周囲の疾患の予防につながります。
早く痛みを落ち着かせたい場合は、疾患にもよりますが整形外科受診をして緊急疾患ではないことを確認する必要があります。また、病院受診により理学療法への誘導や消炎鎮痛剤の処方をすることができます。
日常生活の注意点としては、重たすぎるものを持たない、日頃から肩関節の可動域訓練を行うなどが挙げられます。
運動は適度がいいでしょう。特に、投球や水泳での過度な訓練で肩関節痛を引き起こします。姿勢は、同じ姿勢を続けるのではなくデスクワークでも30分間~1時間に1度は起立するなどして姿勢変換をしてください。
病院を受診する目安は、日常生活に支障をきたした場合がほとんどだと思いますが、早めの受診により早く疼痛が改善することもありますので、お気軽に近くの整形外科の受診をお勧めいたします。
NSAIDs(主な商品名:ロキソニン錠®︎)という内服薬は、胃粘膜保護因子を阻害する副作用があるため、胃薬と一緒に内服することが推奨されています。
「肩が痛い」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「肩が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肩がズキズキ痛いときは何科の病院で相談できますか?
マイマイテイリ イマム 医師
整形外科のある病院かクリニックが良いでしょう。
朝起きたら右肩が痛いのですがどうしたらいいですか?
マイマイテイリ イマム 医師
発熱がないかを確認し、発熱があり、それ以外に発熱の原因となる症状がない場合はすぐに整形外科を受診しましょう。
それ以外の場合は、外傷歴がなければ緊急性は低いですが、日常生活(髪を洗ったり、洗顔したり)に支障をきたすようであれば整形外科を受診しましょう。
肩が痛い症状で20代・30代でも五十肩になることはありますか?
マイマイテイリ イマム 医師
20代・30代でも起こり得ます。もともとは中高年に好発する肩の痛み前半を五十肩と言っていました。最近では腱板断裂や石灰沈着性腱板炎などの病態が明らかな疾患以外の肩痛を五十肩と呼ぶようになりました。中高年だから五十肩なのか、明らかな病態がわからないから五十肩と呼んでいるのか混乱が生じやすいので、中高年に発症する五十肩を「凍結肩」と呼称するようになりました。そのため、明らかな原因がわからない肩痛を20代・30代が起こしたらそれは五十肩になります。
五十肩の対策や症状緩和になるストレッチがあれば教えてください。
マイマイテイリ イマム 医師
Codman体操や屈曲運動、内旋運動が良いでしょう。
・codman体操:前屈位をとり、腕の力を抜いて体幹を揺り動かすことで腕が振り子のように前後・左右・円を描くように動く体操です。
・屈曲運動:仰臥位で、健側の手で患側の手首を持ち、頭上に伸ばす運動です。
・内旋運動:背部で、健側の手で患側の手首を持ち、脊柱に沿って引き上げる運動です。
まとめ
肩が痛いという症状は普段の生活の中でも比較的遭遇することの多い症状だと思います。肩が痛いと日常生活に支障をきたす可能性が高いです。自然に治る場合もありますが、症状が辛い場合は無理せず病院を受診してくださいね。
「肩が痛い」で考えられる病気と特徴
「肩が痛い」から医師が考えられる病気は14個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
整形外科の病気
五十肩
肩こり
骨折脱臼
石灰沈着性腱板炎
腱板断裂
化膿性肩関節炎
変形性肩関節症
上腕二頭筋腱断裂
胸郭出口症候群頚椎疾患
腫瘍性疾患
循環器科の病気
心筋梗塞消化器科の病気
急性胆嚢炎
肩の痛みは自然に治ることも多いのですが、十分な治療を行わないと後遺症が残る疾患もあるため、注意が必要です。
「肩が痛い」と関連のある症状
「肩が痛い」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
右肩が痛い左肩が痛い左首から肩にかけての痛み鎖骨の痛み肩甲骨の痛み背中がつる
首がつる
首こり「肩が痛い」症状の他に、これらの症状がある場合も「五十肩」「石灰沈着性腱板炎」「変形性肩関節症」「腱板断裂」「心筋梗塞」「急性胆嚢炎」などの疾患の可能性が考えられます。発熱などの症状を伴う場合には、早めに医療機関への受診を検討しましょう。
【参考文献】・日本整形外科学会