「逆流性食道炎」を発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!

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朝起きた時に胃のムカつきを感じたり、食後の胃もたれなどで気持ち悪くなったりなどしませんか?

胃から食道あたりに起こる不快感は、逆流性食道炎という病気の代表的な症状かもしれません。

たいしたことがないからといって市販の胃腸薬で対応していると、次第に悪化し別の病気を併発する可能性が高くなります。

今回は、逆流性食道炎の症状や原因・治療法・予防法について詳しく解説します。

胃のムカつきや胃もたれに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

逆流性食道炎の特徴

逆流性食道炎とはどのような病気ですか?

胃の内容物が食道に逆流することで、食道が炎症を起こす病気です。正式には「胃食道逆流症(GERD)」という症状で、内視鏡検査で食道粘膜障害がある「逆流性食道炎(RE)」と内視鏡で所見がない「非びらん性食道炎(NERD)」に分類されます。逆流性食道炎はその胃食道逆流性の症状の1つです。
胃の中に食物などがあると、胃酸が胃の内容物を溶かして消化活動を行います。胃酸は胃の内部にあり、食後など胃の内部が食物や水分などで満たされていると内容物に対して正常に働くものです。しかし胃の内容物が多い場合などには胃酸の許容範囲を上回ってしまい、溶かしきれない状態となります。こうして胃酸と食物のバランスが悪くなるのです。
健康な状態であれば食道と胃のつなぎ目にある下部食道括約筋という筋肉が締まっているため、胃酸が食道へと流れることはありません。しかし、胃にある内容物の量が多すぎると括約筋にかかる負担が大きくなり、括約筋がきちんと締まらなくなります。そのため胃酸が胃から食道へと逆流してしまい、逆流した胃酸が食道の粘膜を溶かし始め、炎症を起こす症状が逆流性食道炎です。

具体的な症状が知りたいです。

以下のような症状が多くみられます。

胸やけ

胃もたれ

横になったあと起きると酸っぱいものが胃から口内に上がってくる

また、胸からみぞおち部分がジクジクと痛くなる症状もよくみられ、主に食後に多くみられます。しかし食後でなくとも、横になってから身体を起こした時に胃のあたりがムカムカすることも逆流性食道炎の症状です。
軽い症状であれば市販の胃腸薬でおさまります。しかし症状が進むと食道以外の部分、例えば喉にも炎症が起こり、喉の違和感・声のかすれ・咳などが慢性的に起こるようになります。喉の違和感や咳が出ることから風邪を引いたのかと思い、風邪薬を飲む方も少なくありませんが、実は胃が原因となっていることも多いでしょう。

発症する原因は何でしょうか?

食道と胃の間に下部食道括約筋があり、健康な状態では胃の内容物が食道に逆流しないように、括約筋が胃と食道の間を締めています。食べ過ぎ・肥満・脂肪の多い食事を摂っていると、胃内部の食物が消化しきれなくなり胃内圧や腹圧も上昇し、下部食道括約筋が緩んでしまいます。括約筋が緩むと、胃酸が食道へと逆流しやすくなってしまうのです。また、ピロリ菌の除菌(胃酸の分泌亢進)や食道裂孔ヘルニアも原因の1つだと考えられています。

ストレスとの関係も深いのですね。

ストレスと腹部の不調には深い関係があります。ストレスが原因で胃炎や胃潰瘍になりやすいことは、以前から解明されています。同じように逆流性食道炎もストレスが原因で悪化しやすい病気です。胃の具合が悪くなるたびに市販薬で対応していても、ストレスを慢性的に感じていると症状の改善は難しいでしょう。少しでも胃の具合がおかしいと感じたら、休暇を取り定期的にストレス解消することをおすすめします。

逆流性食道炎にかかりやすいタイプの人を教えてください。

逆流性食道炎にかかりやすいタイプとして、以下のような方が当てはまります。

大食い、早食いの方

味の濃い食事・アルコール・刺激が強い食べ物・飲み物が好きな方

食後すぐ横になる習慣のある方

日頃から喫煙する方

ウエスト周りを締め付けるような服を好む方

日常的に前かがみの姿勢で長時間仕事をすることが多い方

どうしても仕事をしていると時間に追われた生活となってしまい、つい早食いや大食いになってしまいます。また、会社などの付き合いで外食が多くなるとアルコールを飲む量が増え、偏りがちな食生活となってしまいます。ぜひ休みの日ぐらいは規則正しい生活習慣を心がけましょう。

逆流性食道炎の検査方法・治療法

逆流性食道炎ではどのような検査を行うのですか?

一般的には、胃カメラによる内視鏡検査を行います。口から挿入する経口検査と鼻から挿入する経鼻検査があり、食道を観察します。検査時間は10分ほどですが、空腹の状態で行うので検査日前日夜から食事はできません。
どうしても胃カメラに抵抗がある方は、プロトンポンプ阻害薬という治療薬を服用しその経過をみるPPIテストという方法を行っている病院もあります。この治療法は薬を飲んで2週間ほど後の経過を観察します。この時点で症状が緩和されていれば薬が効いているということになるので、継続して薬による治療を行っていくのです。薬による治療は患者さんの身体的な負担が少なく、2週間ほどの服用となるので検査費も薬代だけで済みます。
以前は内視鏡検査が主流でしたが、薬によるPPIテストが主流となってきています。まずは医師と相談をしてから決めるとよいでしょう。ただPPIなどに治療抵抗性な場合は、食道運動異常や機能性胸焼けなどを考え、高解像度食道内圧測定や24時間phインピーダンスモニターリング測定などの検査ができる専門施設での精査が必要となります。
ちなみに内視鏡検査は保険適用となり、費用は4,000~5,000円ほどです。ただし、検査の結果で他の病気がみつかった場合はより詳しい検査をすることとなり、その場合の検査費用は別途かかります。

合併症はありますか

初期症状としては、胃もたれ・ムカつき・ゲップが多くなる程度です。そのまま放っておくと、食道以外にも炎症が起こり、喉のあたりにも炎症が起こってきます。さらに悪化してしまうと、食道狭窄による食欲不振や貧血などを引き起こし、最悪の場合には食道腺癌を発症します。単なる胃もたれだと軽く考えず、症状が続くようならば一医療機関で検査をすることを視野に入れましょう。

治療法を教えてください。

一般的には内服薬と生活習慣の改善を併用して治療を行います。内服による治療では、主に胃酸を抑える薬の投与(主にポロトンポンプ阻害薬)を行うほか、症状によっては胃の運動を活発にする薬や酸を中和する薬(制酸薬)を併用するのです。併用する薬は、患者さんそれぞれの症状に合わせて処方していきます。また、重症な逆流性食道炎にはボノプラザンというさらに強力な酸分泌抑制薬が用いられる場合があります。

逆流性食道炎と診断されたとき気をつけること

積極的に生活に取り入れるとよい生活習慣を教えてください。

できるだけ規則正しい生活を心がけることが大切となり、なかでも食生活に気をつけましょう。食べるスピードが早い方は、よく噛まないことでつい大食いとなってしまいます。食べすぎや早食いを避けるために、ゆっくり食べるようにしましょう。ゆっくり時間をかけて食べる習慣をつけると自然と食べる量も減り、腹八分目でも十分満足できるようになります。また、食べるものにも注意が必要です。
味の濃いもの・油分の多いものなどは胃に負担がかかるので、できるだけ避けてほしいメニューです。また、食事と一緒にお酒を飲むこともよいですが適量をわきまえ、できればお酒を飲まない休肝日を設けるなど健康な身体を保つ食生活を心がけましょう。

避けた方がよい生活習慣(やってはいけないこと)はありますか?

胃もたれが起こる原因をつくらないことが大切です。具体的には次のような内容があげられます。

食後すぐに横にならない。どうしても横になりたい場合は、頭を高くした状態にする。

肥満気味の方は、体重を減らし身体に負担がかからないようにする。

腹部やウエストを締め付けないような服装にする。

前かがみのまま長時間同じ姿勢にならないように気をつける。

胃の中の消化を正常にするためには、食後すぐは横にならず、椅子に座った状態でいた方がよいです。また肥満気味の方は服装にも気をつけましょう。ウエストやお腹を矯正するような服装は腹部に負担がかかるので、身体によい影響を与えません。
体型を気にしていると、外出する際に体型を隠す服装を選びがちとなります。体型をカバーしたい場合でも、お腹に負担がかからない程度に自由に緩められるような服を選ぶようにしましょう。日頃の生活習慣が胃もたれを改善する鍵です。

食べ物や飲み物の注意点があれば知りたいです。

胃や食道を刺激するような食べ物や飲み物を控えることが肝心です。働いていると忙しさのあまり早食いになりがちですが、腹八分目を意識しゆっくりと食事を摂ることも大切です。またお酒が好きな方は、どうしてもアルコールだけの摂取になってしまう方も少なくないでしょう。アルコールだけではなく、必ずおつまみや軽食などと一緒に飲むようにし、できるだけお腹に負担がかからないように心がけましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

仕事や家事など忙しい毎日を過ごしていると、つい食生活が適当になってしまいます。また時間に追われ、ゆっくりと身体を休める時間も取りづらくなるでしょう。逆流性食道炎は食生活だけではなくストレスも大きな原因となっています。ストレスが軽減できるような趣味やスポーツなどを行う時間を積極的に設け、できるだけ負担のかからない食生活や生活習慣を心がけていきましょう。

編集部まとめ


今回は、逆流性食道炎について詳しく解説しました。

「食べ過ぎや飲みすぎに気をつけていれば大丈夫」などと軽く考えずに、症状が続くようなら必ず医療機関で検査を受けることをおすすめします。

また普段から日常生活の中で感じるストレスを解消し、趣味・スポーツ・休肝日を設けるなど、身体に気をつけて規則正しい生活を送るよう心がけましょう。

参考文献

逆流性食道炎ってどんな病気?(国立長寿医療研究センター)