●閑静だった駅にドラマファンが続々来訪

女優の川口春奈、アイドルグループ・Snow Manの目黒蓮らが出演するフジテレビ系ドラマ『silent』(毎週木曜22:00〜)。切なくも温かいラブストーリーに、放送されるたびSNSのトレンドを席巻し、TVerの見逃し配信は全民放ドラマで歴代最高の再生数を叩き出すなど大きな反響を呼んでいる。

村瀬健プロデューサーは「連続ドラマは、みんなが自分の物語として見るのが一番いい。だからこの世界の、東京で起こっているドラマなんだっていうのを感じてほしい」とロケーションにリアリティを追求し、実在するスポットでも撮影を敢行。そうした場所に多くのドラマファンが訪れ、“聖地化”する状況が起きている。撮影に協力している小田急電鉄とタワーレコードの担当者に、“silent現象”の熱気を聞いた――。

世田谷代田駅(左)とタワーレコード渋谷店での川口春奈の登場シーン (C)フジテレビ

○■マナー良く聖地巡礼、大きなトラブルなし

今作では、主人公の紬(川口)が頻繁に使い、想(目黒)と切ない再会を果たした駅として、小田急線の「世田谷代田駅」が実名で登場。駅前に加え、電車の走るホームでも撮影を行い、村瀬プロデューサーは「ロケーションもめちゃくちゃ良くて気に入ったので選びました」と決め手を明かす。

ロケ協力の窓口となっている小田急電鉄生活事業推進部の担当者(以下同)は「おかげさまで聖地巡礼のロケ地巡りの方が、多数いらしております。実感としては、初回の放送直後よりも、回を経てのほうがお客さまが増えている印象を受けており、ドラマの注目度の高さがうかがえます」と語る。

具体的には、駅のホームや、想が座った駅前のベンチ、そして第1話のラストで再会に喜んで話しかける紬に対して、想が「俺たちもう話せないんだよ」と涙ながらに手話で告げた代田富士見橋など、劇中の印象的なシーンの舞台となったスポットで写真撮影などをしている人が多いという。

ドラマファンが集まる世田谷代田駅前=小田急電鉄提供

代田富士見橋=同

さらに、世田谷代田駅から下北沢駅を経て東北沢駅までにかけて、地下化した小田急線の線路跡地を開発した「下北線路街」にある「BONUS TRACK」「reload」といった施設も劇中に登場しており、「世田谷代田駅を起点にして線路街一帯の回遊にもつながっています」とのこと。

隣が下北沢という繁華街の駅であるのに対し、各駅停車のみの閑静な駅だった世田谷代田が“目的地”となって変貌。駅への来訪をきっかけに、近隣のおしゃれな店舗にも客が流れるという波及効果も出ているそうだ。

駅の職員は、こうした巡礼スポットに迷った人たちへの案内も対応。また、来訪者が増えることで従来の駅利用者に支障がないよう注意を払っているそうだが、「皆さんがマナー良く回っていただいているので、大きなトラブル等は発生しておりません」という。





(C)フジテレビ

○■撮影利用に積極誘致「今後も素晴らしい作品に協力できれば」

小田急電鉄では新規事業の一環として、駅施設や電車車両、直営の事業施設をドラマやCMなどの撮影利用へ積極的に誘致する「小田急ロケーションサービス」を今年4月に立ち上げ、『silent』がドラマとして初の放送事例になった。「日中の時間帯の撮影もあるのですが、いろいろな制約がある中で、役者の皆さま、制作スタッフの皆さま、また地域の方々の協力もあって、無事に撮影が行うことができ、とても感謝しています」といい、「最初の事例でいい形につながって、本当にうれしく思います」と話す。

今クールのドラマでは『エルピス−希望、あるいは災い−』(カンテレ・フジテレビ系)でも第2話で撮影協力し、その他ドラマや映画で数作品実施しているという。『silent』の反響を受け、ロケ地協力について、「おかげさまでお問い合わせを多数頂いてます」と明かし、「条件が合えば、これからも最大限お受けするというスタンスでやらせていただき、今後も素晴らしい作品に協力できればと思っております」と、意欲を示した。

●目黒蓮ポーズで撮影するファンが「毎日ひっきりなしに」

(C)フジテレビ

紬がアルバイトする「タワーレコード渋谷店」も実名で登場し、実際の店舗で営業時間外に撮影している。村瀬プロデューサーは「主人公がCD ショップで働いている設定になった段階で、一番有名だし、僕自身も学生時代から通っている“渋谷のタワレコ”に決めました。ありがたいことに、快く貸していただけました」と語る。

タワーレコード広報部の担当者によると、これまでドラマのロケ場所として提供することはあったが、「タワーレコード」として実名で登場した事例は、記憶がないという。

渋谷店では、劇中に登場するスピッツのコーナーを再現すると、記念撮影する客が多く来店。また、ドラマの公式Twitterで、目黒が店舖入口にある『silent』の看板を指さして笑うオフショット写真が掲載されると、それを真似して撮影するファンが「毎日ひっきりなしにいらしてます」(広報部、以下同)といい、20〜30代女性を中心に来店数が増えている。

また、第1話で紬と想(目黒)がプレゼント交換したイヤホンを、前述のスピッツコーナー横に陳列。「今は無線のイヤホンがメインになりつつあるのですが、高校時代のノスタルジックな演出で、生産完了品の有線のイヤホンなので、手に入りづらく、かなり品薄になっています」と、ドラマの世界とつながるアイテムに人気が集まっている。

ちなみに、紬と同じアルバイトへの応募状況を聞くと、「増えていると思いますが、時期によって状況が違うので…」と、ドラマの影響かを判別するのは難しいとのことだ。





タワーレコード提供

○■店舗独占ムービーにオリジナルプレイリストも

「撮影に協力する中で、最終話に向けてさらに目が離せなくなるだろうと感じています」と予測しており、今月15日からは、川口による番組告知ムービーがタワーレコード店舗独占で上映される予定。「お店で『silent』を疑似体験しつつ、映像をチェックしてもらいたいです」と話す。

さらに、タワーレコードのサブスクサービスでは、脚本の生方美久氏が選曲した“紬と想がきいていたスピッツ”というプレイリストを発信。「ドラマの世界とタワーレコードの世界が交じり合う演出をいろいろと仕掛けているので、気になる方は一度検索してみてください」と、ドラマと連動した取り組みを積極的に展開している。

タワーレコード渋谷店=同社提供